
いよいよ開催となった、「Neighbors Food Market」初の商談会。東京・南青山にある路地裏のスタジオに、全国各地から選りすぐりの「食」の担い手たち計34組が集結。飲食店から小売店などの食に関連するバイヤーのみならず、アパレルやセレクトショップなど多岐にわたるジャンルのバイヤーが集い、個性豊かでサステナブルな食の魅力が溢れる2日間となりました。

「多くのバイヤーの方々にご来場いただき、素晴らしい雰囲気が生まれて良かったです」と笑顔で話すのは、博報堂で本事業を推進する飯沼と山下。グローサリーストア、FOOD&COMPANYと共に2022年にBtoCのECサイトを立ち上げ、今年さらに「Neighbors Food Market」として、BtoBの視点から「サステナブルな食と暮らし」につながるコミュニティベースのコマースのあり方を追求しています。3月にはキックオフイベント「Neighbors Food Market 作り手交流会」を開催。志を共有する全国各地の作り手の方々と交流を深めました。
「どの出展者も、品質、健康、環境に配慮しているのはもちろん、パーソナリティとブランドが強くリンクしている。その個性こそがブランドの魅力となっています。小さなブランドの魅力は作り手の考えや世界観がストレートに商品にあらわれるところ、そのような商品やブランドに対して今多くの人の関心が高まっていると思う」と飯沼は話します。山下も、「作り手の背景もパーソナリティも全部詰まっているから、商品もブランドもすごく濃厚なんです。だからこそブースごとのバイヤーさんたちの滞在時間も長くて、1時間くらいじっくり話し込んでいる人もいました」と商談会の特徴や背景について語ります。

また、スモールビジネスだからこそ、「仕事を広げてくれる仲間探し」のニーズも大きいと飯沼。「大企業から来るバイヤーも、ここでは一個人、1人の生活者として作り手に関心を寄せてくれていると感じます。商品の魅力を、仲間として一緒に広げようというフラットな雰囲気は、この商談会の特徴かもしれません」と続けます。
会場設計については、類似するカテゴリーのブランドがあえて分散するようにして来場者の回遊を促進。また、理想的なコミュニティコマースのあり方を追求する「Neighbors Food Market」にとって大きな狙いの1つが、生産者とバイヤーだけでなく、生産者同士の対話と交流です。そのためブースとブースの間にあえて仕切りを設置せず、隣接するブース同士の交流を促す工夫も施したそう。
結果的に2日間の商談会期間中、作り手同士の間でいくつもの異なるコラボのアイデアや企画が生まれたそうです。
個性が光る何組かの出展者の方々に話を伺いました。
マリールゥの鈴木英美子さん、鈴木誉也さん夫妻は、新潟で長らく玄米菜食のカフェを運営した後、2023年に神奈川県三浦市に拠点を移し、現在は素材の味を活かしたシンプルでおいしいクラフトパンケーキミックスの製造をメインに事業を展開しています。

「これまでは、小規模でかつ食に特化した商談会というものがなく、バイヤーさんとのマッチングが課題だったので、今回の商談会を大いに楽しみにしてきました。別の作り手の方ともコラボの話をすることができ、それだけでも今回来た甲斐があったなと嬉しく感じています。今回の成果を受けて、同規模の食品系の商談会が増えていくのではないでしょうか。ここから大きく、食のスモールビジネス全体が盛り上がっていくといいですね。今後の『Neighbors Food Market』にも期待しています」。
サンチャイの仲 琴舞貴さんは、ネパールの山岳地帯にあるコタン郡に雇用を生み出そうと、現地にピーナッツバター工場を設立。地元産の無農薬のピーナッツを手作業で丁寧に加工したピーナッツバターの製造・販売を通じて、現地に生きる女性達に働く喜びや経済的な基盤を提供しています。

「皆さんに一番知ってほしいのは、商品の背景にあるストーリー。そこを含めての、商品の価値だと思っています。FOOD&COMPANYさんのように、それをしっかりと伝えてくれる小売店との出会いに期待しています。また今回のような商談会を積み重ねることで、志あるスモールビジネスを支持してくれる方を少しずつ増やせたら嬉しいですね。ここには顔見知りの作り手の方もたくさんいて、心強い。皆さん共に戦う仲間だと思っています」。
リンゴリらっぱ醸造所の佐藤 春樹さんは、山形県新庄市のリンゴ畑を祖父から受け継ぎ、ジュースとシードルを製造。加工専用に栽培された無農薬のリンゴはJAS有機認証を取得しており、環境にやさしい持続可能な農業を実践しています。

「日本のシードルのレベルを上げるべく、糖度や酸味、ミネラルなどのバランスを考慮した栽培で、美味しさを追求しています。ここには同じようにこだわりを持った作り手が集まっており、商品そのものはもちろん、デザインなども素晴らしく、勉強になることも多い。すでに2社ほどの出展者の方とコラボのアイデアも生まれています。『Neighbors Food Market』は僕たち生産者とバイヤーさんをつないでくれる“仲人”のような場所。ぜひまた参加したいですね」。
「Neighbors Food Marketの出展者の方々は、それぞれのブランドが好きなファンやコミュニティに対して継続的に販売を行っていく形を基本にしていると思います。生活者ひとりひとりが自分の好みのブランドと繋がることができる時代において、小さなコミュニティ同士が重なり合って、新しいマーケットや価値が生まれる可能性を感じている。」と飯沼は話します。
山下は、「生活者にいかに長く使ってもらい、繰り返し買ってもらえるかというLTVの向上に、大手のブランドも企業も非常に注目しています。その点、今回の出展者の皆さんは、作り手にも商品にも魅力があり、生活者の中に『買いたい』『応援したい』という想いを自然に醸成し、その後の成長を楽しみに見守りたくなるような存在とも言える」と話します。
そして、事業規模に関わらず、企業の中に「Neighbors Food Market」の考え方と親和性の高いこだわり、熱意、想いを持った方がいれば、ここにいる作り手の方々と一緒になって、新しい製品やブランド、サービスを作ったり、育てたりすることはできはずだと、力強く語りました。
路地裏の一角で、エッジの利いた作り手が集い活気に満ち溢れる様は、飯沼曰くまさに「インディペンデントな食の新しい市場の兆し」。

「今回のような展示会というリアルな場で、会って、話して、味わうという体験と、物理的な距離を超えられるオンラインの利点を、今後うまくバランスさせていきたい」と飯沼。このプロジェクトにおける博報堂の立ち位置について、“イネーブラー(目的達成を実現するための人や組織や手段)”という言葉を例に出し、「リアルイベントでは出会いの創出や体験づくりなど、オンラインでは皆さんの負担になっている法人向けの受発注や情報発信などを中心にサポートしていき、作り手がなるべくスムーズに仕事ができるような環境を実現するイネーブラーでありたいですね。」と想いを新たにしました。
「出展者の話を聞いていても、現場の熱気を見ていても、この場は、個人や小規模の生産者などの『内なる想い』を解き放ち、発信する場にできたのではないかと思う」と山下も語りました。
まさに1人1人の意志や情熱、理想といった想いが詰まった一品を通して、作り手と売り手、生活者がつながり、サステナブルなコミュニティコマースを形作っていく。「Neighbors Food Market」がその最初の一歩を踏み出す商談会となりました。

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