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サステナブルな食のスモールビジネスが社会を変える!
Neighbors Food Market作り手交流会レポート
~「作り手」「使い手」「伝え手」の共鳴から生まれる価値とは~

2024.05.10
#サステナビリティ
2022年にサステナブルな食と暮らしのコミュニティ型コマース事業「Neighbors」を立ち上げた、博報堂とグローサリーストアのFOOD&COMPANY。いま、BtoCからBtoBへと拡張し、より大きな視点から「サステナブルな食と暮らし」といった社会テーマや次世代の価値観に基づいたコミュニティベースのコマースを追求しようとしています。
新たなBtoBのマーケットプレイス「Neighbors Food Market」の立ち上げに合わせて、キックオフイベント「Neighbors Food Market 作り手交流会」を3月26日に主催しました。ゲストスピーカーである「ててて協働組合」の永田宙郷(おきさと)さんの講演内容や、参加者と行われた質疑応答など当日の様子をご紹介します。

ゲスト:
永田 宙郷 氏
ててて協働組合
共同代表

スピーカー:
白 冰 氏
FOOD&COMPANY
代表

谷田部 摩耶 氏
FOOD&COMPANY
ファウンダー/共同代表

飯沼 健太郎
博報堂 ソーシャルイノベーション局 ビジネスデザインディレクター
iichi(株) Founder 取締役

■博報堂とFOOD&COMPANYによる新プロジェクト「Neighbors Food Market」が始動

オーガニックでサステナブルな食品を販売するグローサリーストア、FOOD&COMPANYは、「やさしい経済を通して、リラックスした社会へ」というビジョンのもと、共感する作り手による食材を扱う小売り事業やコンサルテーション事業を展開してきました。そのFOOD&COMPANYと博報堂がかねてより展開してきたのが、ECサイト「FOOD&COMPANY Neighbors」。Eコマースを通して、売り手と買い手が共通の価値でつながるコミュニティのあり方を追求してきました。そして今回、新機軸プロジェクトとして「Neighbors Food Market」が始動。BtoC事業で培った知見を活かし、生産者と小売店や飲食店をつなぐBtoBのプラットフォームづくりに挑戦します。

左: FOOD & COMPANYの店舗。 右:Neighbors Food Market

そのキックオフミーティングとして行われた本イベントは、関東エリアを中心にこだわりの食品を生み出している15組の作り手の方々が集結しました。

■魅力ある食のスモールビジネスの価値を最大化したい

「Neighbors Food Market」の着想について、FOOD&COMPANY代表の白さんは「FOOD&COMPANYの事業を10年やってきた中で、いいものを作っていてもなかなか評価されなかったり、粗利が低くてビジネスを継続していけないという、食品業界が抱えるさまざまな課題に気づいた。作り手と買い手が連携する場を設けることで、販路開拓や取引管理、販促支援の課題を解決しつつ、魅力あるスモールビジネスの価値を最大化して食品業界全体を盛り上げていけたら」と語りました。同代表の谷田部さんも、「社会的に影響力のある博報堂という企業と一緒に事業を共にしていること自体が大きなアセットになっている。このアセットを、志を同じくする食のスモールビジネスの担い手の皆さんと共有していきたい。そのためのプラットフォームを目指している」と続けました。

FOOD&COMPANYの白氏(左)と谷田部氏(右)

想定しているサービスとして、大きく2点を考えていると白さん。1つは、受発注や梱包、発送業務などの定型業務をシステムで代替し、より商品やブランドの価値を深める時間を確保するという、「余力」を作る機能。もう1つは、ブランドストーリーを伝える記事や特集、DM、営業、リアル展示会など、小売店や飲食店とつながるための「出会い」をつくる機能であると説明。谷田部さんは、「先発の便利で機能的なプラットフォームはいくつもあるが、なかなか本当の意味で情緒や世界観、価値観を共有できるサービスを見つけられなかった。魅力ある作り手のハブであるFOOD&COMPANYが関わるからこそ、その強みを活かせるプラットフォームにしていきたい」と、その想いを語りました。

■コロナ禍で気づいた、“食”の本質的な重要性

両代表の話を受け、本事業をともに推進している博報堂の飯沼も続けます。
2011年に社内ベンチャー制度で立ち上げた「iichi」という事業において、ハンドメイドやクラフト、手工芸品の作り手と使い手をつなぐマーケットプレイスの運営を行っており、個人や小規模な作り手と生活者のつながりを作ってきました。コロナ禍の折には、“食”に対する意識が高まり、その本質的な重要性に気づいたという飯沼。「コロナ禍になり、食に対しての意識が高まり、個人的に好きで利用させていただいていたFOOD&COMPANYさんと仕事がしたいと思い、問い合わせフォームから連絡した」と、協業の最初のきっかけについて振り返りました。

両社の協業によってECサイト「FOOD&COMPANY Neighbors」が生まれ、さらにBtoBの事業形態である「Neighbors Food Market」の着想を得てからは、小規模の作り手と買い手をつなぐ場づくりの先駆者である「ててて商談会」の永田宙郷さんをアドバイザーに迎え、その構想を磨いてきたと語りました。

■「自分の頑張りで世界が少し変わるかも」と思い実践している人と集まりたい

続いては、ゲストスピーカーであり「Neighbors Food Market」アドバイザーでもある永田宙郷さんによるレクチャーと、参加者を交えたインタラクティブなセッションです。

冒頭で、「皆で力を合わせて、時代を超えてつなげていけるものづくりの仕組み、サイクルを実現させたい」と、その根底にある想いを語った永田さん。2011年から始めた「ててて商談会」の取り組みは、中量生産/手工業によるものづくりの作り手、使い手、伝え手が共鳴しあえる機会づくりを目指すものだと語ります。

年2回の展示会には、全国のファクトリーブランドや作り手、メディアやバイヤー含めて毎回2500~3000人が集まる

“顔を合わせて一緒に乾杯できる規模”にこだわり、出展者数はあえて80組程度に限定しているそうです。たとえば地域の伝統文化を個人の生活に取り入れてみたり、断絶の危機にある技術や文化をシェアすることで普及・継承を試みていたりと、「自分が少し頑張れば世界がちょっとだけ変わるかもしれない」と思い、実践している方々と集まり、共鳴し合って、これからの未来に向けてものづくりに挑戦し続けられるサステナビリティを実現したいと続けます。

そのうえで、時代の潮流としても、かつての大量生産大量消費の時代から、自然にも経済にも社会にも公正公明なバランスでものがつくられる未来へと向かっているのが現代だと指摘。スモールビジネスに携わる方々は、まさにその中間地点にいると話します。効率性や希少性の優先ではない、地域経済と地域文化、作る人と使う人が結びつき、循環する産業のあり方を、今ならつくれるはずと語る永田さん。そして、まさに食の世界でそれを実現しようとしているのが「Neighbors Food Market」であり、食を軸に、人と生活の関係性向上と、共感できる人たちの出会いを創出するというコンセプトに強く共感していると話します。

永田氏 講演資料より

PCのOSに入っている、ハードウェア、ソフトウェアを統合するミドルウェアに例え、「普段は意識していなくとも、それがなければ物事を回せなくなる存在がミドルウェアだとすると、「Neighbors Food Market」の役割もそこにある。社会と、作る人と使う人を、必要に応じた形でマッチングできるかどうかが鍵になる」と語り、「「Neighbors Food Market」は、食のビジネスにおいて心と想いを伴うビジネスプロデューサーになり得るという直感があったし、ぜひそのお手伝いができれば」と力強く語りました。

■やるリスクよりも、やらないリスクを考えるべき

続く質疑応答では、参加者同士の交流を促す意味もあり、2人一組でペアになって質問を考えてもらいました。

まずは「新しいことにチャレンジするにあたり、振り切れる覚悟はどのように持てばいいか?」との質問が。「家族を支えなければならないなど様々な制約がある。成功するかどうか分からないリスクがありながら、どのように事業を起こす覚悟を持ったのか知りたい」とのことでした。
しばし考えを巡らせたのち、「やらないリスクも考えるべき」と永田さんは回答。「もし今これをやらなかったら、自分たちは何を失うだろうか?と未来を考えてみては。売り上げ優先で大量生産すれば確かに売れるかもしれないが、意外と、丁寧にものをつくり流通させなかった際のデメリットも大きい。目の前にチャンスなりモノがあるのなら、やらないリスクを想像してみるべきじゃないかと思う。自分自身も途方に暮れた時期もあったが、今ビジネスモデルとして世界から注目を集めるようになってきた。あの時やってよかったなと思っている」と語りました。

続いて「「Neighbors Food Market」ではどのようなコミュニティやビジネス機会創出が期待できるか」との質問が。
白さんは、「作り手同士がリアルに交流でき、つながれる展示会を大切にしつつも、いずれは受発注以外のコミュニケーションが互いに取れるような仕組みを設計したい」と回答。製造過程や、作り手の属性、想いが伝わるような情報発信なども含め、「一度生まれた関係性をきちんと育てていけるサービスにしたい」と話しました。
一方飯沼は、「何か1つの方法だけで解決するわけじゃないと思う」と話します。「情報を発信して、会って、話して、魅力を伝えて、共感してもらうための様々な出会いの場をつくることを重視している」と続けます。そのうえで、買い手と作り手のコミュニケーション回路を少しずつ構築しつつ、作り手同士の連携も促していきたいと抱負を語りました。

最後に挙がったのは「地域で消費できない付加価値のある商品は、どうしたらビジネスとして成り立つか」という質問です。

永田さんは、「家族が集まって「血縁」ができ、「地縁」になっていくわけだが、今そこが消費地として弱くなっている。これからは同じ関心がある人たちによる「知縁」を活かすべき。オンラインも流通も発達した今は自分たちの考えやモノを広い範囲に届けることができるし、いろんな地域に気軽に足を延ばすこともできる。自分たちと関心や意識を同じくする人は意外といろんなところにいるはずなので、まずはそこに向けて自分たちのものづくりを届けること。そこで自信を得てから、今いる地域という範囲に、その価値を伝えていってみては」と回答。質問者も大きく頷いていました。

■個性豊かな「食」を味わいながら深めた交流

交流会の最後を締めくくったのは懇親会です。参加者の皆さんによって提供された、個性豊かな食品や飲み物がテーブルを飾ったほか、FOOD&COMPANYのスタッフも腕を振るい、こだわりの食材を華やかなオードブルに仕立てました。白さんの乾杯の音頭と共に、くつろいだ様子で語り合いながら、交流を深めた参加者たち。「Neighbors Food Market」キックオフイベントは和やかな雰囲気の中幕を閉じました。

■6月13~14日、南青山にて「Neighbors Food Market」食の商談会vol1.を開催!

6月13日(木)~14日(金)、「Neighbors Food Market」は、東京・南青山にてBtoB商談会を開催します。サステナブルなオリジナリティのある商品を多数ご用意し、試食をしながらオンラインでは伝えきれない、温度感のあるつくり手とのコミュニケーションや生産の現状についての考え、それぞれが目指す未来の姿にも触れられる機会です。どうぞご期待ください。

詳細はこちら

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