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ヒット習慣予報 vol.309『ローカルレコメン』

2024.03.26
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの佐藤諒平です。
唐突な私事で恐縮ですが、書かずにはいられません。先日、好きなアーティストのライブに遂に当選しました!ライブに行く日を楽しみに仕事に勤しむ今日この頃です。
そんなお気に入りのアーティストがいる一方で、最近、新しいアーティストやコンテンツとの出会いが減ってきたと感じており、それは昨今のレコメンド機能によるところがあるのではないかと思っています。
レコメンド機能によって自分の嗜好に近い情報ばかり入ってきてしまうことが「エコーチェンバー現象」と呼ばれたりしていますが、こういった言葉が注目される機会が増えていることからも、私と同じような状況の人が一定数いることが感じられます。

出典:Googleトレンド(「エコーチェンバー」の検索)

そんな興味や嗜好が広げづらい現代、生活者はどうやって新しいコンテンツとの出会いをしているのだろう、と気になって調べてみると、案外身近な人の情報を見ていることが分かりました。また、さらには見るだけでなく、見せる行動も当たり前になりつつあるようです。
ここまでの説明ではまだちょっとわかりづらいかもしれませんので、具体的な例で見ていきましょう。

一つ目は「プレイリストを見る‐見せる」
昨今の音楽配信サービスでは、自分なりのお気に入りの楽曲でプレイリストを組んで、共有することができます。さらには他者と共同編集でプレイリストをつくることまでできるようになり、より共有の仕方に広がっています。こうした機能を使って、あえて自分とは違うジャンルが好きな人や、特定のジャンルに詳しい人と共有し合うことで、新しいお気に入りの楽曲を見つけるという生活者が多くいるようです。

二つ目は「本棚を見る‐見せる」
カフェや書店、図書館などで、月額で本棚の一部スペースを間借りし、自分の本棚をつくるサービスが一部の本好きな生活者の中で人気になっています。実は私自身もこうしたお店を時折利用するのですが、各人の好みや世界観が如実に表れた本棚が並んでおり、書店の陳列とは全く違う新鮮な出会いをもたらしてくれるためとても気に入っています。

三つ目は「SNSのいいね欄を見る‐見せる」
コスメのことで迷った時にコスメに詳しい友人のいいね欄をみる、動画サブスクで見るものに迷った時に映画やアニメに詳しい友人のいいね欄をみる、といった行動をする生活者が、特に若い世代で現れています。
興味深いのが、見られる側の意識もできている点。人に見られることを前提として、自分の好みをうまくまとめた いいね欄やお気に入りリストをつくっている生活者も現れているようです。

ここまで事例をご紹介しましたが、なぜ昨今このような、各人の好みを「見る‐見せる」行動をする生活者が増えてきているのでしょうか。
ひとつは、見る側の視点。生活者が「情報迷子」になっていることによるのではないでしょうか。冒頭に触れたように、レコメンド機能によって飽きを感じつつも、自ら情報を探しに行くと、様々なランキングや口コミが溢れ、判断の拠り所もなく大変すぎる。そんな時に、人となりをある程度知っている友人やフォローしている人の情報が、手軽にアクセスでき、信じられるものとして参照されるようになったのではないかと考えます。
もうひとつは、見せる側の視点。生活者が「セルフプロデュース」することの浸透が関係していると思っています。SNSの投稿で自分をプロデュースすることは注目されて久しいですが、その習慣は拡張し、もはや自分のお気に入りやお勧めするものまで、自分を表現するひとつとして考えられるようになっているのではないでしょうか。それが結果的に、情報を探す際に参照する人を増加させる要因にもなっていると考えます。

最後に、「ローカルレコメン」をめぐるビジネスチャンスについて考えてみました。

「ローカルレコメン」のビジネスチャンス例
■動画配信サービスでフレンド登録機能をつくり、「フレンドがいいねした作品」がリスト化できる機能をつける
■ニュースアプリで、フレンド登録した人がブックマークした記事が閲覧できる機能をつける
■飲食店で、常連客向けに「私のおすすめメニュー」がつくれるサービスを展開する
など…

情報化社会で信憑性はいつも大事なポイントですが、生活者が状況に応じてどこにその信憑性を感じるのか、変遷しているのはとても興味深いですね。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

佐藤諒平(さとう・りょうへい)
新潟博報堂│博報堂 第一ブランドトランスフォーメーションマーケティング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2020年 新潟博報堂に入社。2023年より博報堂第一ブランドトランスフォーメーションマーケティング局にて、一人前のマーケターを目指して修行中。万年ダイエッターとしても修行中。

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