THE CENTRAL DOT

家族単位の無意識な行動データから新たな価値創造を目指す
家をまるごとインターフェース化

2024.03.21
#生活者インターフェース市場
生活者の行動を見続け、あらゆるモノや場がインターネットでつながる「生活者インターフェース市場」を標榜する博報堂は、住まい手の暮らしを見続けてきた積水ハウスの「プラットフォームハウス構想」において、広告マーケティング領域だけでなく、バリューチェーン全体を通じての価値創造まで手掛けている。その取り組みについて積水ハウス 執行役員 プラットフォームハウス推進部長 吉田 裕明氏と博報堂 執行役員 青木 雅人に話を伺った。

プラットフォームハウス構想で無意識の行動データを可視化

吉田
積水ハウスの歴史を振り返ると、1960年に創業し、最初の30年は高度経済成長を背景に工業化住宅の量産に取り組みました。日本は地震が多い国なので、耐震性に優れた家に対するニーズが高かったのです。90年代からは「快適と環境」にフォーカスして、ユニバーサルデザインや住み心地、環境への配慮を追求しました。次の30年をどうするかと改めて考えたとき、家をプラットフォームとして捉え、これまで提供してきたハード・ソフトにサービスを加えることで「幸せになれる家」をご提供したいと考え、「人生100年時代」と言われる中、お客様が30年、50年、住むだけで幸せになれる家を目指して「プラットフォームハウス構想」をスタートさせました。
「幸せ」の概念を因数分解した結果、健康、つながり、学びの3つが充実すると幸せになれると仮定しました。家の中にもIoTを導入し、お客様のデータをお預かりしながら、その情報を用いて、住まい手に還元することで、幸せになっていただくことを目指しています。

積水ハウス株式会社 執行役員 プラットフォームハウス推進部長 吉田 裕明氏

青木
車やお店など、社会全体が生活者とつながる時代になってきていて、生活者と様々なモノやサービスがつながり始めると、生活者のニーズ把握がリアルタイムでできるようになり、そのデータを分析することで、生活者にとってよりよいサービスが提供できるようになります。そういった生活者インターフェースを作っていくような仕事を手掛けていきたいと考えていた時に、一緒に取り組む機会をいただきました。
スマートフォンやPCのログデータや購買データなど、いろいろな形でデータはありますが、暮らしに関するデータを把握できることは稀なんです。また、世帯単位で買い物をする機会はあふれているのに、データマーケティングの世界では取り扱っているデータは個人別に管理されることが主流です。家をインターフェースとし、家族の暮らしのデータをサービス開発につなげられるのは、面白い仕事だと感じています。
また、暮らしのデータからは無意識下の行動データが見えてきます。そこにはいろいろなヒントがありますし、隠された思い、インサイトを見つけ出すことができる。生活者インターフェース市場の中でもこんな貴重なデータは実はあまりなく、暮らしをよくする新しいサービスの開発につながる期待感もあります。

プラットフォームハウス構想の土台となるサービス「PLATFORM HOUSE touch」ではアプリを使ってどこからでも家の状態確認や機器の操作ができる

吉田
「プラットフォームハウス構想」を実現するにあたって、家の機能を操作したり、サービスを配信したりする土台として、「PLATFORM HOUSE touch」のサービスを開始しました。我々住宅メーカーは、住まい手がどういう動線、どんな気持ちで暮らしているかは推測できるのですが、どうしてもハードの方に目が行きがちです。博報堂さんは生活者発想という視点を持っているので、我々だけでは解決できない問題を乗り越えられるのではないかと考え、一緒に取り組むことになりました。

青木
積水ハウスさんは住まい手を、博報堂は生活者とその暮らしを見続けてきていて、役割やケイパビリティの違う会社ですが同じ思いで向き合ってきたという共感できるものがあり、この仕事が始まりました。

生活行動ビッグデータをAIで解析し新しい生活パターンを発見

青木
一人暮らしや高齢者の比率が増えて暮らし方のダイバーシティが進む中、コロナ禍もありこの10年で日本人の生活スタイルは大幅に変化しました。暮らしのデータを見ると、書斎、リビング、お風呂場やキッチンなど各部屋の照明やエアコンのオンオフで、いつどの部屋が使われているかが分かります。例えば子どもたちがこんなに夜遅くまで塾に通って22時、23時に帰ってきている。それはあるエリアでは標準になっているが、違うエリアでは昔ながらの生活の子どもたちもいる。
また、家の中でお父さんが家事→仕事→家事→仕事など目まぐるしく役割を変えながら生活をし、職住一体のスタイルに変化していることもわかりました。このように働く大人や子どもたち、高齢者の生活を可視化し、さらに家の外の買い物などのリアルなデータと組み合わせて、暮らし全体の解像度を上げていけば、新たなサービスの可能性や色々なチャンスを見つけることができるのではないかと思っています。

吉田
最近は大空間のリビングにみんなが緩く集まれるような間取りの家が流行しているのですが、同じような間取りでも、照明のオンオフのデータを見ると暮らし方の違いが見えてきます。たとえばリビングの照明がずっとついていて、子ども部屋や書斎など個人の部屋は全て消えていると、この家庭はみんなで集まって過ごしている。一方、A、B、Cの個室がそれぞれついたり消えたりしていれば、一人だけの時間を大切にして暮らしている。両者は明らかにニーズや価値観が違うだろうことがわかります。そういった無意識の行動からその人の価値観や、興味関心を分析して、究極のパーソナライズができるのではないかと考えています。個々で見るのとは違い、家族単位でわかることがすごく重要です。

株式会社博報堂DYホールディングス 執行役員/株式会社博報堂 執行役員/株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員 青木 雅人

生活行動データをサービスに生かして住まい手に還元

青木
「プラットフォームハウス」の大きなメリットは、ある時点のデータを取ってサービスを考えるのではなく、絶えずそのサービスを使い続ける人のデータを取得・解析できるインターフェースであることにあります。ライフステージ・ライフスタイルも絶えず変わり、子どもが就職した、結婚したとか、ペットを飼い始めたなど、数年単位で小さな変化が目まぐるしく起きているはずです。

吉田
住まい手に365日寄り添い、価値観を理解することにより、その人の価値に合わせられるのではないか。今使っているサービスももっと便利にできるのではないか。我々はお客様からデータをお預かりするので、必ずその人、家族にベネフィットを返そうと思っています。
さらに俯瞰して、日本全体の生活様式がどう変わって、どのような価値基準に寄っていっているのかを数値化して見えるようになると、マーケティングに有用なデータになると思います。とはいえ、一人ひとりのお客様の満足を積み重ねなければそこまでたどり着かないので、まずはサービスの内容を磨いていきたいと思っています。
たとえば、玄関ドアの鍵の施錠状況を見るとその家の防犯意識がよくわかるので、防犯意識を反映したセキュリティサービスが考えられるし、他にも健康に気を遣っている家庭向けには高い付加価値の健康サービスも考えられる。幸せの3要素「健康、つながり、学び」をよいものにし、より幸せな人生100年時代を創造したいという思いに共感できるサービス提供者さんと一緒に協業していきたいと考えています。

青木
生活者インターフェース市場にどんどんプレイヤーが参加することで、生活者の幸せを増やしていけると思うんです。いろんなサービスがそこで実装されて、それがまたインターフェースになる。そうすると新たな生活者の反応データが取得でき、暮らしをよくするための大きな輪が生まれていきます。
また、業界単位でくくれない業態を超えたサービスも生まれてくるのがこの取り組みの面白いところだと思います。そういう新しいサービスがどんどん作り出されていくために、博報堂も尽力していきたいです。

吉田
この取り組みは、やればやるほどお客様のことがわかってきます。その情報をセキュリティを担保しながらいかに展開できるかが非常に重要だと考えています。データが勝手に使われると気持ち悪がられるのではなく、「自分たちにとってどれだけのベネフィットがあるんだ」と「積極的にデータを使ってほしい」と思ってもらえるような生活者との関係を作っていかねばならないし、広げていきたいと思います。

青木
AI技術・プライバシーテックを活用した生活者の行動の源泉、生活者のインサイトを導き出す技術、そして、クリエイティビティを掛け合わせて生活者インターフェースを作れる企業は多くありません。博報堂のVIでは、HAKUHODOのロゴの両サイドに「センタードット」が使われており、いろいろなものをつないで価値共創していくという意味が込められています。データとサービス、様々な企業が持つアセットをつないで価値創造し、社会に貢献していきたいです。

※「日経ビジネス電子版Special」2024年3月15日に公開
掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP

吉田 裕明氏
積水ハウス株式会社 執行役員 プラットフォームハウス推進部長

株式会社ツムラ、ヤフー株式会社、株式会社ローソンHMVエンタテイメント(現・株式会社ローソンエンタテインメント )など幅広い業界にて、広告宣伝、サービス企画・運営、ジョイントベンチャー設立、新規事業構築などを経験。2018年に積水ハウス株式会社に入社後は、「住」を基軸にした新たな無形資産の価値を創造し、住まい手や社会に幸せを提供するための新規事業開発を担当。2021年よりプラットフォームハウス推進部長としてプロジェクトを推進。

青木 雅人
株式会社博報堂DYホールディングス 執行役員
株式会社博報堂 執行役員
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員

1989年株式会社博報堂入社。博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター室長、博報堂研究開発局長を経て、2021年4月より現職。 マーケティングDXとメディアDXを統合した価値創造型のDXを推進する戦略組織HAKUHODO DX_UNITEDを担当。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事