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チャーミングなクリエイティブで、身近な社会課題解決に貢献。
新潟市×ツインバード×博報堂の共同プロジェクト「ごちそうさまキャラバン」

2024.02.29
“子供たちの孤食”と“地域のフードロス”。二つの社会課題を解決するために始動した
「ごちそうさまキャラバン」は、博報堂が、新潟市、ツインバードと業務連携した、新しいカタチのフードシェアプロジェクトです。三者連携の構想はどんな経緯で生まれ、どんな活動を目指したのか。さる12月にイベントを実施したばかりの関係者の皆さんに、このプロジェクトの意義と可能性について聞きました。

新潟市 政策調整課 金成 洋 氏
ツインバード 執行役員 井上 淳也 氏
博報堂 ビジネスデザインディレクター 木村 俊介
博報堂 アートディレクター 小山 秀一郎
博報堂 コピーライター 中西 亮介
博報堂 デザイナー 大塩 伝恵

●PRの企画からスタートした、新しいカタチの社会貢献活動

―子供たちの孤食問題と地域のフードロス問題を解決したい新潟市。パンをおいしくリベイクするトースターや冷凍技術を持つツインバード。そして、生活者発想とクリエイティビティでさまざまな社会課題に取り組む博報堂。「ごちそうさまキャラバン」は、そんな三者がそれぞれの強みを発揮することで、ソーシャルグッドな活動を目指すプロジェクトですが、そもそも、どんな経緯でスタートしたのでしょうか。

木村 今回のプロジェクトは、そもそも、ツインバードの新しいトースターのPR企画としてスタートしました。クリエイティブのメンバーといろいろディスカッションする中で彼らから出てきた素敵なアイデアが、フードロスと子供の孤食という二つの社会課題解決に、新しいトースターを活用できるのではないかというものでした。ただ、そのためには、どうしても地域の方々と連携する必要があるということになり、全国でそうした活動に関わる自治体を探していたところ、新潟市の“フレッシュフードシェア事業”(農家や家庭菜園で余っている野菜などの寄付を受け付け、子ども食堂へ提供する取り組み)を知り、一緒に何かできないかというお話をさせていただきました。

井上 いろいろ話していくうちに、このプロジェクトは商品を売るためのPR企画とは違うよねということで三者の意見が一致し、どうせやるなら、本気で社会課題の解決に貢献していく活動を目指そうということになりました。

●博報堂のクリエイティブチームが目指したこと

―こうして動き出した今回のプロジェクトですが、なかでも重要な役割を担ったのが、博報堂のクリエイティブチーム。新潟市の金成氏とツインバードの井上氏も、そのアウトプットを評価して、こう語ってくれました。

金成 今まで、私たちが取り組んでいた“フレッシュフードシェア事業”は食材を提供するということにとどまっていたのですが、今回、ツインバードの最高の技術と博報堂チームの魅力的なクリエイティブが加わってくれたおかげで、文字通り“おいしく楽しく”というプロジェクトにパワーアップしたと思っています。私たち(新潟市)だけでやっていたら、きっと説教臭くなっていた気がします (笑)

井上 デザインにはこんなにチカラがあるんだということを目の当たりにした感じです。イベントでも現場でいろいろ動いていただいて、感謝しています

―ネーミングやロゴデザインはどんなふうに生まれたのでしょうか。

中西 デザイナーの大塩が、学生時代にこども食堂でボランティアをしていた時に、子どもたちの口から“ごちそうさま”という言葉を聞くことが少なかったという話を聞いて、今回のプロジェクトの“食べ物を残さず、食べきろう”という目的と、子どもたちがひとつのテーブルに集まっている風景が重なって、 “ごちそうさま”という言葉を真ん中に置こうと考えました。そして“キャラバン”は、食べ物を運んでくるという意味に加えて、楽しいチーム感があるし、自治体、農家の方、様々な事業者も含めて、みんなでこれから長い旅=活動を続けていくイメージもすごくいいなと思い、二つの言葉を合体させました。

大塩 手を合わせているようなロゴを作ったんですが、あらゆる食材への感謝の気持ちを忘れないという意味を込めました。とにかく、みんなで一緒に楽しく食べるというのが、この活動の目的なので、その旗印のような存在になって、みんなの気持ちが一つになるようなロゴを目指しました。

―クリエイティブチームのリーダーとして、若手二人の頑張りをサポートしてきた小山は、今回のプロジェクトで、今までにない達成感を味わったと話してくれました。

小山 誰に向けたコピーなのか、誰に向けたロゴなのか、中西も大塩も、もちろん僕自身も、自分たちの活動として、目指す目的のためにどう表現していくかということをしっかり考えて取り組めたと思うし、いい意味で、パーソナルに自分たちのクリエイティブを作れたと思っています。今回のプロジェクトは、新潟市やツインバードの皆さんと直接、一緒にやれたことも大きいと思うのですが、なにより目の前の子どもたちに届けるという物理的な近さもあって、すごくライブ感がありました。

●子どもたちの笑顔があふれた、イベント当日

―そんなプロジェクトメンバーの気持ちがひとつになって迎えた初めてのイベントが、2023年の年末に開催されました。
皆さんに、実際の手ごたえを聞きました。

金成 新潟市として様々な事業に取り組んでいますが、今回はその中でもピカイチだったと思います。市として単独で“フレッシュフードシェア”という事業活動をしてきましたが、昨年、博報堂からお誘いの話があり、同じ目線で事業をやっていく仲間を得たと感じました。ツインバードと博報堂が参加し、それぞれの強みを発揮していただいたことで、活動のスピードが上がったという印象です。なにより子どもたちの笑顔が、今回のプロジェクトの成果を証明していると思います。早速、別のこども食堂の方から、ぜひ参加したいというお声もいただいています。

井上 メーカーとしてなにより嬉しかったのは、自分の会社のトースターで焼いたパンを、子供たちがおいしいおいしいと言って食べてくれたことです。博報堂チームのクリエイティブも会場を盛り上げてくれて、イベントというより、ひとつのアトラクションになっているのが、本当にいいなと思いました。

小山 最初はちょっと不安な部分があったんですが、プロジェクトがどんどん動いていくうちに、気持ちが加速していきました。二人の若手クリエイターの頑張りも大きかったと思うし、イベントに立ち会い、子供たちが楽しそうにおいしそうに焼きたてのパンを頬張るのを見て、ああやって良かったと心の底から思いました。食材やプロダクトなど、また違う切り口で活動を続けていければと思います。

中西 子どもたちがめちゃくちゃ楽しそうにしていたのが、なにより嬉しかったですね。それに加えて、いろんな方からいい反響のお声をいただけたのも財産になりました。

大塩 イベント会場に大きなタペストリーを飾ったり、ロゴの色を使ったガーランドを装飾したり、缶バッジを作ったり、自分自身、楽しんで参加しました。先ほどもお話したように、今回のロゴでは感謝の気持ちの表現として、手を合わせているようなデザインになっているんですが、スタッフのコミュニケーションも知らず知らずのうちに、手を合わせていたりして、あらためて、デザインは人の行動も変えることができるんだなということを実感しました。

木村 今回プロジェクトを運営してみて、まず、身近な社会課題を解決するという手ごたえを、参加した皆さんが持てたということが成果だったと思います。とかく社会課題と言うと、気候変動や脱炭素など壮大なテーマを連想しがちですが、それだけではなくて、目の前のことや日常の生活の中で、まずは近くの人を幸せにできるんだという可能性を感じることができたのではないかと思います。
そして、新潟市、ツインバード、博報堂の三者が、同じ目線を持てたことでワンチームになれたことも成果です。博報堂のクリエイティブチームのアウトプットはもちろんですが、新潟市の金成さまには市役所内の調整にご尽力いただき、ツインバードの井上さまには商品を無償提供いただくということで社内調整に骨を折っていただきました。ですから今回のイベントは、表のクリエイティブと裏の運営チームがちゃんとリンクしたからこそ、うまく着地できたと思うんです。
今後も、いろいろな社会課題を解決する上で、若手クリエイターにとっての活躍の場があると思うので、さらに、その可能性を見つけていきたいと思います。

―地方自治体ならではのネットワーク、メーカーの技術力、そして広告会社のチャーミングなクリエイティブ。三者の異なる強みを掛け合わせることで、目の前の社会課題の解決に挑戦する「ごちそうさまキャラバン」。

今後も博報堂では、独自の視点とクリエイティビティで、社会課題の解決に取組んでいきます。

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