
(写真中央)
青木 雅人
博報堂 執行役員
(写真左)
横山 陽史
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 局長
博報堂マーケティングシステムズ 代表取締役
(写真右)
齋藤 充
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム 上席執行役員
ソリューションビジネス本部長
──〈マーケティングシステム・イニシアティブ(以下、MSI)〉とは、どのような組織体なのでしょうか。
横山
MSIは、博報堂DYグループの6社*1の連携によってつくられた横断型組織です。これまでは、マーケティングシステムに関するサービスやソリューションをそれぞれの会社が独自に提供してきました。それらを集約し、グループ全体のマーケティングシステムのケイパビリティを向上させていくことが、この連携の大きな目的です。MSIには、マーケティングシステムの各分野の専門家、500名が集結しています。
*1:博報堂、アイレップ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム、博報堂テクノロジーズ、博報堂マーケティングシステムズ、グロースデータ

博報堂DYグループ6社、「マーケティングシステム・イニシアティブ」を発足
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/106083/
──このような横断型の組織体をつくることになった背景をお聞かせください。
青木
個人情報保護の観点から、サードパーティデータの活用が規制されるようになっているのはご存知のとおりです。それにともなって、各企業はファーストパーティデータ、つまり自社が保有するデータをこれまで以上に活用しなければならなくなっています。しかし、これは必ずしもネガティブなことではありません。ファーストパーティデータの活用環境を整備することによって、広告以外にも、営業活動、CRM、コンタクトセンター、商品開発など、広範な領域でデータドリブンな動きが加速すると考えられるからです。
そういったデータの多様な活用を下支えするのがマーケティングシステムです。マーケティングシステムの利用シーンが広がれば、その構築や運用を支援する側にもこれまで以上に高度なサービスレベルが求められるようになります。そのようなニーズに応えるために、新たな体制が必要になったこと。それが、私たちがMSIを立ち上げた理由の1つです。
もう1つ、生成AIの普及という背景もあります。現在、多くの企業やプラットフォーマーが、生成AIを活用することで新しいサービスや仕組みをつくろうとしています。それをシステムによって支援するのもMSIのミッションの1つです。
しかし、必要なのはシステムだけではありません。マーケティングとは、人を動かし、社会を動かすための取り組みです。システムやテクノロジーを上手に活用しながら、生活者や世の中にインパクトを与える取り組みを支援していくこと。それができるのが、博報堂DYグループの大きな強みであると考えています。

──「マーケティングシステムとは何か」という点についても、ご説明をお願いします。
齋藤
まず、データを集約し管理する基盤があります。ファーストパーティデータで言えば、顧客の属性や行動データを統合管理するCDP(カスタマーデータプラットフォーム)がそれに当たります。一方、そのデータを活用してマーケティング施策を実行支援するためのさまざまなアプリケーションがあります。CRMツールやCMS、マーケティングオートメーションツールなどです。我々は、それらのすべてを総称して「マーケティングシステム」と呼んでいます。
横山
データ基盤のレイヤーと、データを生活者接点で価値に変えていくアプリケーションレイヤー。マーケィングシステムとは、その2つの層によって構成されているということです。
青木
マーケティングシステムの領域は、年々拡張しています。以前は、基幹システム、業務システム、マーケティングシステムは、それぞれ独立した系統のシステムであると考えられてきました。しかし、テクノロジーやチャネルが進化し、企業と生活者が「常時接続」するようになっている現在、システム間の「際」は融解しつつあります。システムを連携させることでデータの一気通貫の活用が可能になり、それによって、企業と生活者、あるいは企業と企業の常時接続がさらに進んでいくことになるでしょう。そうなったときに、システムをトータルに構築し、運営していくノウハウが求められるようになります。私たちはそのノウハウを提供していきたいと考えています。
齋藤
別々のシステムで管理していた大量のデータが繋がることによって、これまでできなかったことができるようになる。実際にそんな可能性を感じているクライアントからのご相談も増えています。情報システム部門主導のDX文脈での変革に加え、マーケティング部門があらゆるデータを活用することによって、売り上げの向上を実現する施策の幅が広がり効果を高めることができる。そのような変革を支援する我々にも、従来のマーケティングシステムの枠にとらわれない発想やスキルが必要になっているのだと思います。
