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「愛されるソーシャルコマース」とは何か?

2023.04.19
この記事は日経クロストレンドSpecial
「愛されるソーシャルコマース」とは何か?に掲載されました。
HAKUHODO EC+は、博報堂DYグループ内のEC領域のナレッジやスキルを集約し、クライアント企業のEC事業を戦略構築から実装・運用までフルファネル、ワンストップでサポートする一大プロジェクトとして、2021年に発足した。
グループの垣根を超えて優れた人材を結集させた「最強チーム」とも称される同プロジェクトから、ソーシャルコマースの最前線に立つメンバー3名に、そのトレンドから成功に導くポイントを探ってもらった。

武田 義史
HAKUHODO EC+
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 コマースクリエイティブ部 部長

鷹野 翔平
HAKUHODO EC+
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 D2C Design Studioリーダー /イノベーションプラニングディレクター / サービスデザインコンサルタント

澤田 航太
HAKUHODO EC+ コンサルタント
博報堂 ショッパーマーケティング事業局 コマースDX推進グループ マーケティングプラニングディレクター

価値観の多様化が進む中で
ソーシャルコマースは必要不可欠に

まずは、ソーシャルコマースを活用したビジネスの生活者トレンドについての現況から教えてください。

武田
最近は「誰から買うか?」ということが、重要になっています。従来は「何を買う」、「どこで買う」止まりだったのが、「誰から」買うのかが購買動機の中で大きなウェイトを占めています。フォローするインフルエンサーが薦めていれば、安心して購入できるわけですね。選択肢が多過ぎて商品をセレクトするのが難しい人にとっては、買物のストレスも軽減できます。スタッフ・コマースという、店員さんがライブコマースやSNSを駆使して自らのファンを獲得することで売る方法も目立ちます。タレントやモデルだけでなく、ショップスタッフなどの、「自分に近い」キャラクターやセンスの人を見つけて、購買の指針としているのです。特にソーシャルメディアを見ていると、その傾向が強く表れています。

鷹野
生活者の価値観多様化に伴い、100億円・10億円単位の小さな市場で構成されるようになり、企業側はその対応に追われています。また、生活者側もモノを買うという行為そのものに、社会的信念をはじめとする自分の価値観を反映するようになっています。この背景には、SNSの発展・普及に伴う“常時接続”が実現できるようになったことがあります。例えば、あるインフルエンサーの投稿がきっかけで、特定の商品に興味を持つ。そこから今度はその商品のブランドアカウントをフォローし、さらにブランドを扱うショップのアカウントに移動して…と。人からブランド、ショップという異なるレイヤーに接触し、アカウントを行き来しながら自分に合ったモノを探索している。こうしたSNS上での情報接触を通じて、生活者は日々自分の価値観をアップデートしています。その情報の渦の中に、SNSというツールを使ってどう入っていくのか、これが極めて重要な命題になると考えています。

澤田
生活者の購買傾向において、「衝動化」と「慎重化」という一見相反する二つのトレンドが発生しています。前者はパルス型消費に代表される「いいと思ったらすぐ購入する」購買傾向で、利便性を求める。後者は、インフルエンサーからの情報や購入者のレビューを熟読して購買する行動に代表される「じっくり考えて選ぶ」購買傾向です。その双方に対応できないブランドは生活者の満足を得られないリスクがあり、それを乗り越える手段としてソーシャルコマースをはじめとする新しいコマースが活用されます。多様化した生活者の変化に対応するため、ソーシャルコマースをうまく活用することが事業者には求められるわけです。

では、企業側が抱えている課題について、皆様の体験を交えて教えてください。

澤田
まず、マーケティング施策の飽和は確実にあります。メルマガ1つをとっても大量のメルマガを毎日受信して、もう見ていないという人も多いはず。コモディティ化が進む中、ユーザーが「グッとくる」施策により、ユーザーの心の中で埋没しない戦略が必要になっています。魂を込めて練り上げたマーケティング施策をユーザーの心に残すうえで、ソーシャルコマースは有効な手法といえます。

鷹野
新規事業を立ち上げる場合、ユーザーの価値観のアップデートがあまりにも早いため、いままでのモノづくりのスピードでは追いつけないという課題があります。変化の激しい予測困難な「VUCA」の時代ですので、生活者ニーズを迅速に捉えて素早く商品を出さなければいけないのに、企画から発売まで2~3年を要するのが一般的です。そのスピード感では、世に出た時には価値観が変わっていて、マーケットフィットができない。こうした開発プロセスをどう短縮化するのか。まずはここが大きな課題です。

次に、商品が発売されても、現代では機能面でのスペック勝負が非常に難しい。いかにユーザーの価値観に合致しているかをアピールしないといけません。その商品にどんなブランドストーリーがあって、どういう生活スタイルを提供しようとしているか、こうしたモノづくりの裏側にある背景も含めて訴求しなくてはなりません。しかもユーザー側はスマートフォンなどディスプレイ上で情報をキャッチしているので、テキストや画像だけではない映像やライブ配信といった、よりインパクトあるコンテンツ生成がカギになる。メーカーはモノづくりに尽力しているから商品に対する意識は非常に高いのですが、現代はモノと同じくらいコンテンツが重要です。私は、商品開発の時点でコンテンツづくりまで意識するようにお伝えしています。生活者が共感できるコンテンツを生成できるかが重要ですね。

武田
クライアント課題であり我々のチームがテーマとして掲げているのは、「選ばれ続けるブランドになる」ことです。日本のEC売上の現状は、トップ5社のモールなどが全体の約8割のシェアを占め、残りは自社のオリジナル商品を販売するSPA業態が上位の多くを占めている。多くの人が買おうと思い立ったときにどこで買うかをあらかじめ決めています。コロナ禍を境にメーカーの多くがECに参入しました。しかし後発で参入した場合、同じ商品は他でも買えるケースがほとんどです。では、「自分たちの店で買ってもらうためには何をすればいいのか」。鷹野が言ったことにも関連しますが「ファンになってもらう」ことや「コミュニティに入ってもらう」ことなど、そこで買う理由が必要です。これは私見ですが、そこで買物をした時に感情を突き動かし心に響く体験が残れば、「また、ここの店で買いたい」、「また、この商品を買いたい」と次の買物につながることになるでしょう。買物自体が実は究極のブランディングに成りえるのではないかと思います。

人への興味をブランドへの興味に転化
「重なりを作れる」相手の見極めがカギ

ソーシャルコマースを成功させるカギとは、何だとお考えですか。皆様の成功事例等を踏まえて教えてください。

武田
例えば化粧品を売るなら、「化粧品を買おうとしている人」にまずアプローチしようとしますよね。化粧品に強いインフルエンサーを使って広めるとか…。「トライブマーケティング」なんていわれますけど、化粧品トライブもレッドオーシャンなので「化粧品トライブ」だけしか捉えていない発想では狭くなってしまいがちです。日常生活の中でその人が四六時中関心を持っている別のことに関連付けて化粧品にアプローチさせる、ソーシャルでそんな出会いを作るという発想も必要ではないかと思います。

例えば、あるアニメ作品を語る場があって、その流れで化粧品の話題を入れ込んで印象付ければ、「アニメ×化粧品」という新たなトライブへのアプローチになる。この掛け算の発想で目新しさや価値を提示することが、新たな顧客を開拓するという意味でソーシャルコマース成功へのひとつのヒントだと思います。

澤田
「生活者目線の徹底」と「事業貢献へのこだわり」が重要です。まずは、「生活者目線の徹底」について。「ヒト消費・コト消費」という言葉が注目されて久しいですが、「発信するヒト」「提供するコト」を生活者目線で考え抜くことが肝要です。例えばインフルエンサーマーケティングを行うなら、「どういうトーン&マナーがその人の魅力を引き出せるのか」「その人のどんな部分がファンに支持されているのか」を踏まえたうえで、自然な流れで「ブランドだからこそ提供できる体験」へ導くことが肝になります。真摯な生活者へのまなざしが、ソーシャルコマース成功の鍵を握ります。

もう一つは、我々HAKUHODO EC+がこだわっている「事業にどう貢献させるのか」という視点。ある化粧品会社様の案件では、「なんとなくライブコマースをやる」のではなく「ライブ配信を経てユーザーにどんな行動をしてほしいか」を定義し、企画やインセンティブの設計を綿密に行いました。その結果、人への興味をブランドへの興味に転換することができ、ライブ視聴者の来店頻度・ライフタイムバリューの伸長を達成できました。施策がどの事業ドライバーに効果をもたらすかを考え抜くことではじめて、ソーシャルコマースが事業成長の武器として機能するのです。

鷹野
私は「コミュニティドリブン・マーケティング」という考え方を提唱しています。ブランドのコミュニティと、外部コミュニティを重ね合わせ、顧客の獲得を目指す考え方です。価値観に基づく生活者の共感を作り出し、どうコミュニティ間の“重なり”を作っていけるかがカギになります。ブランドが標榜する価値観と同じ思想を持つ、インフルエンサー、メディア、アーティストなど外部パートナーと連携できるかが重要です。

その際のポイントは、ブランドを作る開発プロセス自体に外部パートナーを巻き込むことです。これは、影響力ある個人が直接生活者に対してモノを販売する「Person To Consumer」に近い発想だと思います。開発プロセスにパートナーも参画してもらうことで、自分の商品であるという思いを持ってもらいます。そうすると、販促活動にも積極的に関わっていただける関係を築くことができます。ただ、こうした共創関係を作れる相手であるかを見極めることはすごく難しいので、施策を繰り返しながら検証することも必要でしょう。いきなり大掛かりなライブコマースなどを展開するのではなく、SNSへのタイアップ投稿から始めたり、「食」「美容」「運動」など複数のテーマごとにパートナーを選出し効果検証することも有効です。様々な組み合わせを模索しながら、コミュニティ間の“重なり”が大きいところを見つけていくことが重要ですね。ライブコマースの経験からわかったのは、フォロワー数が膨大なインフルエンサーでもブランドとのコミュニティ親和性がないと、そこまで人は動かないんです。逆にフォロワー数が少なくても、親和性があれば、そのファンはかなり動きます。インフルエンサーのパワー(フォロワー数)自体が重要ではなく、どれだけコミュニティ親和性がある相手なのかという点の見極めが重要なんです。

最後に、ソーシャルコマースにおける博報堂の強みについて、今後の展望と共にお聞かせください。

武田
博報堂は長年ブランドエージェンシーとして、広告やマーケティングで得意先の事業成長に貢献してきた歴史があり、これまで培ってきたDNAは強みだと思います。たとえ販促目的のソーシャルコマースであっても、事業者はこの顧客体験をブランド資産にしたいという思いがあるのではないでしょうか。ソーシャルコマースを最終的に生活者に選ばれるためのブランディング活動のひとつとして捉えたときに、そのクリエイティブはどうあるべきかを考えてやっています。ブランドクリエイティブにかかわってきた博報堂の強みがソーシャルコマースで発揮されるのも必然なのかと。私自身、今後もそんな思いを胸に仕事に携わっていきたいと考えています。

鷹野
博報堂が大切にしてきた「生活者発想」に尽きると思います。ソーシャルコマースにおいて、どのように生活者発想を生かすのか。私は、“新たな生活習慣の創造”こそがソーシャルコマースのポイントで、そのためにも既存の生活習慣にどう入り込むのかが重要だと考えています。狙うべきターゲット像を考える際に、その人がどんな気持ちでライブコマースを見ているのか、その姿を高い解像度で考えられることが我々の強みです。当然、その人に響くコンテンツプログラムを構成しなくてはならず、著名人をアサインしてもうまくいくとは限らない。ターゲットの価値観を意識しつつ、魅力的なコンテンツを生成する必要があります。そこに、生活者発想ができる博報堂の強みが大いに発揮されるはずです。同時に、ブランドに立脚したプラニングができることも博報堂の強みであり、ブランドならではの体験をソーシャルコマースに落とし込むことも我々は得意です。ブランド視点、生活者視点の双方を重視しながら、効果ある売り方を創造できることが強みですね。変化が激しい時代なので、最新の生活者実態を見極めながら、水先案内人としてクライアントを牽引していきたいです。

澤田
「生活者視点と事業者視点の双方を織り交ぜたプラニング」が強みだと感じます。生活者の変化を映す鏡ともいえるソーシャルコマースでは、生活者の変化に敏感なことが求められます。HAKUHODO EC+には、生活者発想というフィロソフィーに基づいて考え、実行するクリエイターやストラテジックプラナー・事業コンサルタントが所属しており、事業戦略から実装までのすべての領域に「生活者視点」を行き渡らせることができます。今後も、クライアント企業の皆様とともに「生活者に愛される買い物体験」を追究し、事業成長の強力な武器を作っていきたいと思います。

武田 義史
HAKUHODO EC+
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
コマースクリエイティブ部 部長

2013年中途入社。情報体験・購買体験・商品体験、全てのブランド体験をネット文脈から発想するクリエイティブでアップデートし、選ばれ続けるためのブランド価値の創造に尽力。受賞歴、Cannes Lions、ADFEST、ACC、PRアワードグランプリ 他。

鷹野 翔平
HAKUHODO EC+
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局
D2C Design Studioリーダー
イノベーションプラニングディレクター
サービスデザインコンサルタント

博報堂入社後、ストラテジックプラニング職として、多様な業種の戦略立案業務に従事。その後、博報堂DYグループ内の社内公募型ビジネス提案制度:AD+VENTUREの下、経営者として新規事業/新サービス開発に携わる。現在は自身の経験を活かし、事業・商品・サービス開発及びUX戦略・ブランド戦略のコンサルティングを行っている。

澤田 航太
HAKUHODO EC+ コンサルタント
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
コマースDX推進グループ
マーケティングプラニングディレクター

2017年に博報堂に入社。営業・メディアプラナーを経て現職。EC事業の中長期戦略策定・D2Cブランド立上げ・ECチャネル戦略策定など、ECを起点として事業プランニングを担当。

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