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ヒット習慣予報 vol.248『誰でもAIクリエイター』

2022.12.13
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの吉田です。
私が住む北海道では雪も積り、冬の到来を感じている今日この頃ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
年末ということで、今年個人的に印象に残った出来事などを思い返してみると、SNSやインターネット上で「AI」という単語を見かける頻度が非常に増えたと感じます。

実際、Googleトレンドで「AI」と検索してみると、今年の秋以降急激に検索数が増加しています。「AI」という単語自体は、以前からあるにもかかわらず、ここ最近急激に増加していることからも、今まさに新たなトレンドになりつつあるのがわかります。

出典:Googleトレンド(「AI」で検索)

では、実際にAIがどんな使い方をされているのか。気になり調べてみると、専門家だけではなく、日常生活の中でAIツールを活用して、さまざまな創作活動を楽しむ生活者が増えてきていることがわかりました。スマホアプリやSNSの発達によって、誰でもクリエイターになって自己表現できる「1億総クリエイター時代」の今、AIの民主化によってさらなる盛り上がりを見せ始めているのです。そこで、今回は「誰でもAIクリエイター」と題しまして、いくつかの事例を紹介したいと思います。

最初に紹介する事例は、「誰でもイラストレーター」です。
今年の夏、アメリカのとあるアートコンテストのデジタルアート部門で、AIを用いたアート作品が優勝したことが話題になりました。優勝した作品はテキスト情報からイラストを生成するAIツールを活用したもので、絵にしたいイメージを単語として入力するだけで絵が自動生成されるので、絵を描く専門的なスキルがなくても、AIツールを駆使すれば誰でもある程度のクオリティの絵を描くことができます。
さらに、今はテキスト情報だけでなく、写真や画像情報からイラストを生成するツールも登場しています。自分が撮った写真や手元にある画像から簡単にイラストを生成することが出来るという手軽さもあり、現在SNSではこのようなAIツールを使ったイラストや画像の投稿を手軽な趣味として楽しむ人が増えています。

次は、「誰でも作家」です。
数行の文章を入力すると、続きを考えて、自動で小説や文章を生成してくれるAIツールが登場しています。小説を書くだけでなく、身長や年齢といった項目を入力すると、プロフィールを自動生成することも可能で、AIツールで作成した小説の登場人物たちのプロフィールまでAIを使って作りこむことが出来てしまいます。
実は、AIで書いた小説だけを応募できる文学賞も既に開催されていて、大賞作品の作家の方は本業がSF作家の方ですが、基本的な文章力を土台にAIによる文章生成システムを見事に掛け合わせて作品を作っています。
今後は、AI作品も文学賞の一つのジャンルとして確立していくかもしれませんね。

最後に紹介するのが、「誰でも作曲家」です。
AIを活用して楽曲を自動生成するサービスも増えてきています。とある実験では、既存の楽曲約50曲とAIを使い、音大生がある状況を思い浮かべ、それに合う楽曲を2、3選定し、それらをAIが混合し、人間による手直しを行った結果、人間にとって心地よい楽曲が完成したという事例もあります。
作曲をしたことがない人はAIを活用して、簡単に作曲活動を始めることが出来ますし、作曲スキルがある人は、AIで生成した曲をベースに自分でアレンジをするなど、作曲の幅を増やすのに使われているようで、初心者からプロまで創作活動にAIが活用されていることがわかります。現に音楽の素人がAIで作曲した曲がSNSでバズっていたりしています。

ここまで事例をいくつか紹介してきましたが、AIツールを活用することで、特別なスキルがなくても、様々な分野の創作活動を行っている人が増えてきていることがわかりました。
では、AIツールを使った創作活動のように、「1億総クリエイター化」の機運が高まっている背景はどのようなことが考えられるでしょうか。

まずひとつは、今まで人間の専売特許と考えられていたクリエイティブ領域にAIが足を踏み入れたことによって、ニュースなどで話題になったことが背景として考えられます。以前までは、AIといえば事務作業の効率化に便利なものというような認識でしたが、絵や文章、作曲などの分野にもAIが進出し、さらにそういったAIツールがオープンソース化したことによって爆発的にAIへの注目度が高まったと考えられます。
もう一つは、コロナ禍を通して新たな挑戦を始める人が増えたことが挙げられます。リモートワークによって通勤時間が自由に使える時間になったり、コロナ前から続けていた趣味がコロナによって続けるのが難しくなったりなど、今までとは異なる生活様式が定着してきたことによって、これを機に新たな挑戦をしようと考える人が増加し、結果的に創作活動を始める人が増えたのではないでしょうか。

最後に、「誰でもAIクリエイター」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「誰でもAIクリエイター」のビジネスチャンスの例
■AIツールの活用方法や活用した創作を勉強できる専門学校や通信教育サービス
■AIによって生成された創作物かどうかを判断するクリエイティブチェックサービス
■自分が創作したものを学習させたパーソナルAIパッケージの販売

私は昔から自分で何かを創作できる人に強い憧れを持っていて、今回の事例で紹介したようなAIツールを活用しつつ、創作のことを少しずつ勉強していこうと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

吉田裕(よしだ・ゆう)
北海道博報堂
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2020年北海道博報堂に入社し、マーケティング・ストラテジックプラナーとして業務に邁進している。インターネットに生息し、日夜インターネットカルチャーを浴び続けている。

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