THE CENTRAL DOT

ヒット習慣予報 vol.238『一生ものの大人買い』

2022.10.04
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの鈴木です。
自分はファッションが好きで趣味が合う人をSNSで他人問わず広くフォローしているのですが、ここ最近「一生ものの時計を買った」「一生もののレザージャケットを買った」「一生もののアクセサリーを買った」等投稿している人が複数人いることに気がつきました。自分もちょうど同じように一生大事にできるものが欲しいなと思っていたところで、それは自分の年齢からくるものなのかなと思っていたのですが、「一生もの」購入報告は年齢問わず行われていることにも気がつきました。
世の中は円安で生活費が圧迫されはじめているというニュースが報じられていますし、最近海外の高級ブランドは為替の影響や原材料費高騰等から立て続けに値上げを行っているのにも関わらずこのような報告が増えています。そこで今回は最近目にすることが増えた「一生ものの大人買い」についてみていきたいと思います。

まず本当に「一生もの」への興味は高まっているのでしょうか?わかりやすく差分を見るために「一生もの」と「流行りもの」で検索をかけ比較してみると2020年頃までは両者が肉薄していたところ2020年末頃から「一生もの」が検索数が増加しリード。さらに2021年以降はさらに増加し明らかに「一生もの」が「流行りもの」を上回りました。

<「流行りもの」「一生もの」検索推移比較>
赤:「一生もの」 青:「流行りもの」

出典:Googleトレンド

このように「一生もの」への興味が高まっていることが伺えますが、一言で「一生ものの大人買い」といっても様々な形があります。

最もわかりやすいのは「一生もののアイテム」。時計、宝飾品、バッグ等一生使えるものが人気を集めています。百貨店の売り上げがコロナ禍や円安でも好調というニュースを見られた方も多いのではないでしょうか。また、「ハイブランド」の検索数は先述の「一生もの」が盛り上がりはじめた2020年頃から大きな伸びを見せており「一生ものの大人買い」と関連がありそうです。いわゆるハイブランドの宝飾品以外にも自分の趣味に関連するアイテムに投資する人もいて、キャンプが好きな私の同僚は寝袋やテントを大人買いしていました。話を聞くと、それらのアイテムは値は張りますが、一生分のアフターサービスが付いているようでまさに「一生もの」となっているようです。

<「ハイブランド」検索推移比較>

続いては「一生ものの知識やスキル」。
人生100年時代と言われて久しい中、人生を充実させてくれる一生ものの知識や技術の習得にも注目が集まります。英会話やお金の知識。資格の勉強をしたり一生ものの趣味に対して投資をする人が増えています。改めて新しいスキルを身につけようという「リスクキリング」や「学び直し」が最近話題になっているのも、一生ものの知識やスキルを身につけたいという気持ちの現れだと考えられます。

最後は「一生ものの健康と美容」。
コロナで健康でいることの大切さを改めて実感する中、一生ものの健康や美容に本気で投資をする人も増えています。筋肉は裏切らないからとパーソナルジムが増えていたり、在宅ワークで出社をしなくて良い時期に美容整形や歯のホワイトニング、永久脱毛に通う等一生ものの美容に投資する人も増えています。

ではなぜ今「一生ものの大人買い」が増えているのでしょうか。ひとつはコロナ禍で旅行等にお金を使えなかった分、自分のためにお金を使いたいという欲。いわゆる「リベンジ消費」欲が芽生えていると考えられます。さらに、コロナをはじめとする予測不可能な出来事で生活や将来の見通しが不安定になる中、寄り添える確かなものが欲しいという気持ちの高まりもあるのではないでしょうか。先日百貨店のとある時計ブランド店で話を聞いたところ、コロナ以降増えたお客様の特徴として世の中が色々と不安定な中失敗したくない気持ちがあるのか、今特に人気を集めているのは新作というよりも、昔から愛される間違いのない定番商品だそうです。

以上「一生ものの大人買い」を見てきました。円安で日常の生活が逼迫する一方で先行きが不透明な時代に信じられる何かを手に入れたいという気持ちは今後も続きそうです。

「一生ものの大人買い」のビジネスチャンスの例
■コロナ禍後の旅行復活のタイミングで一生ものの思い出が作れる「一生もの旅行ツアー」の販売。
■一生ものにふさわしい逸品のみが集められた「一生ものセレクトショップ」。
■テレビやレンジ等買い替えが必要になる家電を、消耗したら取り替えてずっと使い続けられるようにすることで一生付き合える「一生もの家電契約」。

私事ながら最近私も一生ものの時計を買いました(本コラムに出てくる百貨店の店員さんの言葉はこの時計を買うときに聞いたものです)。それを見て奥さんも良い時計が欲しいと言い出し我が家は一生ものを手に入れる代わりにしばらくもやし生活が続きそうです。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

鈴木 康司(すずき・こうじ)
生活者エクスペリエンスクリエイティブ局

ヒット習慣メーカーズ メンバー
2007年 博報堂に入社。
ヒット商品やヒット習慣には飛びつかずにはいられない、ドミーハー。好きが高じて、ヒット商品やヒット習慣を生みだせると良いなと思い日々奮闘中。休日は家でアイドルのDVDを見るのが好き(主にジャニーズ)。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事