CES ASIA 2018が、中国・上海で6月13~15日、開催されました。米国ラスベガスが本家であるCESのアジア版です。CESは、B2C向けの世界最大級のテクノロジー、IoTのカンファレンスです。中国では今年で4回目の開催となり、昨年と比べて参加者数も約130%増と急成長しています。
今年もラスベガスと上海を視察してきたので、印象に残った展示をいくつかご紹介します。

CES ASIA 2018の3つのトレンド
1:EV・コネクテッドカーの世界No.1市場として、量産化、実用化へのリアリティ
2:スマートスピーカー、音声認識技術を中心とするIoTプラットフォーム競争の激化
3:EC、スマートペイメント、顔認証技術(Face ID)を活用した次世代リテールテクノロジーの実用化

今年1月のCESは、スマートスピーカー市場のアピール合戦と、自動運転や次世代モビリティやスマートシティが存在感を増してきたという印象を持ちました。
一方、今年のCES ASIAはどうだったかと言うと、全体として自動車のコネクテッドや自動運転、スマートスピーカーやスマートホーム領域、中国ならではのECやリテール領域、またこれらの領域において、音声認識だけでなく、顔認証や画像認識技術を活用したソリューションが多数出ていました。昨年と比べて、展示やブースのデザインクオリティが上がっているだけでなく、日本人や外国人の参加者がかなり増えていると感じました。
おそらく、中国のテクノロジーやイノベーションが進化しているという認識がグローバルに広がってきているためだと思われます。

*昨年のCES ASIA 2017については、こちらの記事を参照ください。 http://www.hakuhodo.co.jp/archives/report/39575

*ちなみにCES ASIAのイノベーションアワードも今年から開始。
http://www.cesasia.cn/events-conference/innovation-awards-listing-en/

1:EV・コネクテッド化―の世界No.1市場として、量産化、実用化へのリアリティ

全体の中でも自動運転、コネクテッド領域の展示やデモが目立っていました。その中でも特に注目を集めていたのが、1月のラスベガスでも発表されたByton (https://www.byton.com/)ですが、今回の上海でもキーノートや新コンセプトカーについての発表がありました。Bytonは、二人のドイツ人が起業した中国のスタートアップ企業で、これからの車は、ドライブやパフォーマンス視点ではなく、スマートデバイスとして移動時間を楽しむ方向へ進化すると予測し、そのためにUIを徹底的に革新。車のEV化はTESLAが既に実現していますが、その次に来るコネクティビティ化をリードするスマートモビリティブランドになると宣言しています。車の未来はコネクテッドやコンシューマーエレクトロニクスとの融合、そこにBytonのビジネスチャンスがあると見ているそうです。インタラクションを重視し、メインコンソール部分に世界初横49インチのディスプレイを配置。ステアリングに巨大タブレットがあるようなイメージでしょうか。各国の製造・安全基準もクリアし、音声アシスタント、フェイスID認証、AR/VRシュミレーター、ビデオ会議機能を搭載。予定価格も30万元(約500万円程度、TESLAより安価)。体制も中国とシリコンバレーとドイツをつなぐ混成チームで、プロダクトの開発、年内には工場の完成、2019年に量産開始予定と推進し、テクノロジーだけでなく、プロダクト、リソース(資金)、ファクトリー、ブランドストア、アライアンス、グローバルネットワークを有する今までにない新基準のスタートアップとして注目を集めていました。

他にも自動車関連では、Baidu Apolloが、中国の自動運転AIプラットフォームとして中国市場を目論む世界各国企業とパートナーシップを組んでおり、CES ASIAでも中心的な存在でした。今まで中国企業は展示内容が少なかったのですが、今年は広汽研究院やLeap Motorといった企業も自動運転関連技術や自動運転のデモ走行を行い、コンセプトレベルから実用化、量産化ができるレベルに上がってきている印象です。日本企業ではHondaや三菱電機が出展。メルセデスベンツは、ラスベガスと同じMBUX(Mercedes-Benz User Experience) を展示。Cadillacの自動運転技術であるSuper Cruiseは、CES ASIAイノベーションアワードを受賞しました。

2:スマートスピーカー、音声認識技術を中心とするIoTプラットフォーム競争の激化

今回Alibabaは、CESアジアのキーノートで、スマートスピーカー「天猫精霊(TMALL GENIEジーニー)」を中心とするIoTプラットフォーム「天猫精霊AI連合」を発表し、各家電メーカー、技術者の加入を呼びかけました。(https://open.bot.tmall.com/)
「天猫精霊」は、2017年7月から発売され、価格はおよそ199元(約2,500円)、現在既に300万台以上が販売されました。中国のスマートスピーカー市場の第1四半期販売実績は、Alibaba(天猫精霊)が59%とダントツ、Xiaomi(小米)が35%、JD(京東)2%の状況です。
(出典元:Canalys estimates, smart speaker analysis, May 2018)

企業が「天猫精霊AI連合」に参加することによって、Alibabaから商品開発、部品&コンテンツ提供、販売チャネルなど様々な支援を得られます。その中で、「天猫ブルートゥースmesh」を使うことで、簡単にIoT機器間でリンクが可能になる独自モジュールを安価で提供すると宣言。今のところ、既に200社以上が「天猫精霊AI連合」に加入しています。

Alibaba以外にも、Baidu、JD.com(京東、テンセント)、Xiaomi、Huaweiなどの中国ITメジャー企業も、各自のIoTプラットフォーム連合を提唱し、加入を呼びかけています。現在、中国はアメリカに続き、世界第二のスマートホーム市場です。スマートスピーカーを中心とするIoTプラットフォームの主導権をめぐる競争が、これから更に白熱化していくと考えられます。

写真左から)スマートスピーカー「天猫精霊」/Alibabaブース
写真左から)Baiduブース:スマートスピーカー/JD Alphaスマートプラットフォーム             

HUAWEI HiLink
https://consumer.huawei.com/minisite/smarthome/hilink/index.html#first-screen
Baidu
https://dueros.baidu.com/
Xiaomi
https://xiaoai.mi.com/

3:EC、スマートペイメント、顔認証技術を活用した次世代リテールテクノロジーの実用化

今回、さらなるCES ASIA、中国市場の特徴として挙げられるのは、ECを含むペイメントやリテール領域のテクノロジーがかなり進化したことです。
その1つとして、顔認証技術がSUNNING、JD.comなど多くの企業に注目されています。家電量販店のSUNNINGや幾つかの企業は、顔認証技術を利用したスマート自販機を展示。現金やスマホを持たなくても買い物ができるようになります。スタートアップゾーンでも、次世代リテールテック企業がいくつも出展していました。
例えばアプリでFace IDを登録すれば、顧客のオフラインの行動データを取得可能になったり、顔認証技術によって、「人」「商品」「店頭/EC」の3つのデータを取得することが可能になり、これからのリテールマーケティングテクノロジーとして注目を集めています。
今、上海で実験的に顔認証の無人店舗を設置し、入店から支払いまで、全て顔認証で完結させられます。また「旷視」(https://www.megvii.com/)、「地平線」(http://www.horizon.ai/)などの顔認証技術の企業も出展しており、コンビニやデパート、ファッションストア、自動車ディーラーや書店など、店頭での生活者行動の分析ソリューションも展示。今まで、オフラインでのデータ収集がなかなか実現できなかったかもしれませんが、顔認証技術の進化によって、Face IDが新しいテクノロジーとデータを活用可能とし、リテール業界に大きな影響を与えると思われます。

JD.comブース 顔認証システム
<JD.comブース 顔認証技術を活用したデジタルサイネージ> 顔認証技術により、属性やペルソナを推測し、その人に合わせて適切なJD.comで販売されている商品を推奨するデジタルサイネージ。QRコードにより直接EC商品ページに飛ぶことができます。
<SUNNINGブース 顔認証システム> 顔写真を撮影すると、直接SUNNINGのアカウントにつながり、自販機の扉を開けて買い物ができます。どの商品を何個選んだかを自動認識し、扉を閉めたら直接会計されます。
<深蘭科技 Deepblue Tech スマート自販機 他> https://www.deepblueai.com/
地平線ブース

もう1つユニークな「智黒inheater」(http://fx.inheater.com/)という企業をご紹介します。テクノロジーを活用したプロダクトやデザイン性の高い雑貨を幅広く販売するスマート雑貨のセレクトショップです。例えば、店内の来客状況を可視化するスマートミラー、ファッションをチェックできるスマートミラー、指紋認証手帳、スマートスーツケース、スマート歯ブラシ、スマートアクセサリー、スマートキッチングッズ等、ラインナップは多岐に渡ります。WEBサイトを見る限り、リテール以外にも卸売や、SNS/KOLを利用する広告イベント業務等も実施している企業のようです。

今年のCES ASIA 2018では、EVやコネクテッド、スマートスピーカーやスマートホーム、次世代リテール領域が注目されていましたが、それ以外では、ブロックチェーンが注目されており、来年の「CES 2019」で来るトレンドと言われています。
まだビジネスのパイプラインができていないステージのため、今後、中国での普及が世界に先駆けて始まる可能性が高いという予測からです。

人口規模から、すでに世界No.1市場となるEVやコネクテッド、ECやスマートペイメントにおいて、AI技術を活用したテクノロジーによるトランスフォーメーションが中国では劇的なスピードで進化しています。
スマートスピーカーも来年ぐらいには、米国を抜いて世界No.1市場になっている可能性が高そうです。アリババやテンセントといった企業が、EC、ペイメントを既に一般生活者レベルまで普及させている背景が、世界的に見ても、自動運転やスマートホーム、無人店舗やリテール領域の進化スピードを高めていくと考えられます。
来年のCESでも、中国テクノロジーや中国企業のプラットフォームやサービスの進化が見られそうで楽しみです。
世界のイノベーションをリードする中国の戦略が世界のイノベーションを進化させていく、そんな兆しが今年のCES ASIAから感じられました。

淮田 哲哉
博報堂データドリブンマーケティング局 局長代理 兼 グローバルデータマーケティンググループ グループマネージャー

博報堂のフィロソフィーである生活者発想を軸に、デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プラニング、マネジメント、事業開発、イノベーション、グローバル展開を主に担当。自動車、IT、精密機器、エレクトロニクス、EC、化粧品業界を中心に、デジタルシフト、データ分析、DMP活用、データ基盤構築、組織開発といった企業のマーケティング高度化のサポートを行う。アジア・中国・インドの海外業務やテクノロジー動向にも精通。APACエフィー2018他、マーケティングエフェクティブネスやデジタルマーケティング領域の海外アワード審査員も行う。

包 旭
博報堂生活綜研(上海)主任研究員

2013年日本の大学院を卒業後、中国へ帰国し、その後博報堂生活綜研(上海)に入社。社会環境の変化が激しい中国における生活者の行動、欲求を中心に、日々の研究活動を行っている。コンセプト開発、市場調査、書籍制作などの業務を担当。

楊 蘇瑞
博報堂データドリブンマーケティング局グローバルデータマーケティンググループ プラナー 兼 研究開発局研究員

2013年大学卒業後、博報堂に入社。中国における豊富なデータマーケティングの知見を活かし、得意先グローバル事業およびEC事業に関する提案、ならびにブランド課題に関する戦略的コンサルティングをメインに担当。同時に、研究開発局にも複属し、中国生活者に関するデータプラットフォーム及びソリューション開発を担当。