20165月30日~6月2日、アジア初となるアドバタイジングウィークが東京・六本木で開催され、大盛況のうちに幕を閉じました。アドバイザリーカウンシルメンバーとしてイベントをサポートした博報堂エグゼクティブクリエイティブディレクターの長谷部守彦が、アドバタイジングウィークアジア事務局長を務めた株式会社ignite代表の笠松良彦氏に、「熱狂の4日間」についてお伺いしました。

アドバタイジングウィークアジア事務局長 笠松良彦(株式会社ignite代表取締役社長兼エグゼクティブ・プロデューサー)
アドバタイジングウィーク アドバイザリーカウンシル 長谷部守彦(株式会社博報堂 グローバルMD推進局エグゼクティブクリエイティブディレクター)

■熱狂をつくり出す ~Creativity excites the industry

長谷部
まずはアドバタイジングウィークアジアのユニークネスについて話しましょうか。

笠松
アドテックやカンヌといった、ある種カテゴリがきっちり定まっているイベントは世の中にいくつもありますが、広告業界のすそ野はもっとずっと広いわけです。実際の広告業の収益の成り立ちや携わっている人員構成比をみると、クリエイティブサイドよりもメディアや営業が占める割合が非常に大きいにも関わらず、それらにフォーカスしたイベントはほぼないんですよね。また、広告業界に限らず日本はサイロメンタリティの問題があって、隣の部署がやっていることをよく知らなかったりする。実際に「知っていればほかの事例に転用できたかもしれないのに」ということが少なくない。これは単純に機会ロスだと考えていました。

今回のイベントでは、クライアントやメディアの方のネットワーキングに有効なセッションも多々あり、さらにそこに最先端のアドテクやクリエイティブの要素も加わっていて、広告に携わる誰が来ても有益で楽しめるイベントになったんじゃないかと思います。

長谷部
テーマに関して言うと、何年もやっているイベントであれば、クリエイティブならクリエイティブで年ごとの変化の傾向などから決めていけばいいけど、今回はまったくの白紙から決める必要がありましたよね。

広告業界の内外からアドバイザリーカウンシルに参加した28人で決めたのが、「熱狂をつくり出す」。我々がこの業界に入った30年前くらいは業界が確かに輝いていたし、新しいものが生まれていく大きなうねりみたいなのがあった。それをもう一度取り戻そうよと。全体を分野とかナレッジで切っていくのではなくて、そうした情熱を一つのよりどころにした。スピーカーの方々も、まさに世の中に熱狂を生み出した人や、いままさに生み出している人を中心に集まっていただけましたね。

笠松
テーマを決めるまでに多くの時間を費やしましたが、その意味はありましたよね。そのキーワードがなければもしかしたら単なる事例自慢大会になってしまっていたかもしれない。それだと絶対につまらないし、誰にもいいことがない。だから参加企業の方々には「御社がどうやって世の中に熱狂をつくり出そうとしているのか、その熱量が伝わるようにしてください」という風にお願いしました。

らに、アドバイザリーボードメンバーの博報堂ケトル木村健太郎さんがそのコンセプトを「Creativity excites the industry」とブレークダウンしてくれて、ぐっとわかりやすくなりました。クリエイティビティが業界を革新していく。

我々は何をやればいいですか?という質問を参加企業の方によく受けましたが、「それぞれの状況の中でクリエイティビティが業界を活性化させたことってありましたよね、それを伝えてください」という風に説明していったら、みんな腹落ちしてくれて前に進んだ感じがします。

4日間の熱狂の軌跡

長谷部
蓋を開けてみると驚くほど大盛況でしたね。僕が見たどのセッションも本当にインスパイアリングで盛り上がっていたし、お客さんの熱気もすごかった。ほとんどのセッションで立ち見が出ていましたし。なかなか日本では広告会社やメディア、得意先が持っているナレッジを一度に集中して学べる場というのはないですからね。結局何人入りましたか?

笠松
延べ1万2千人です。そのうちID登録してくれたのが3800人。ほぼ皆さんが2~3日来てくださったことになります。

長谷部
その中には、広告会社の方、クライアントの方、媒体社の方がいらっしゃる。大企業の方もいればスタートアップ系の方まで。そういう方たちがもっともっと混ざり合っていったら、いろんなビジネスや文化が活性化する気がしますよね。

笠松
実はそれが裏テーマとしてありました。アドテクノロジー系はいかにも広告業界の先端を走っているように見えるけど、一方でレガシーメディアの仕事も依然たくさんある。デジタルがすべてという人もいればそうじゃないという人もいて、微妙な意識のズレがあると感じます。でも今回のイベントでは、そうした異なるジャンルの人たちが隣同士のセッションで話していたり、互いのセッションを覗いたりしていた。人材もどんどん流動化している時代だし、結局オールでコミュニケーション業界なんだということを実感できる場になったのではないでしょうか。

長谷部
参加された来場者の反響はどうでしたか?

笠松
シンプルに「とても面白かった」「参加できてすごくよかった」という意見をたくさんいただけました。たとえば長谷部さんにモデレータをやっていただいた佐々木宏さんと佐藤可士和さんのトークなんて、ありそうでないでしょう。名前だけは知っていたけど初めて目にする人もきっとたくさんいて、そういう人の話を、聞きかじりでもコピペでもなく、ライブで体感でき、きちんと情報として吸収できたという。そこは皆さんによい評価をいただけたと思います。

■博報堂の役割、業界が目指すべき変化

長谷部
笠松さんはもともと博報堂にいて、その後電通を経ていまは自分のユニットで縦横無尽に活躍されている。今回アドバイザリーボードに選出されたメンバーもさまざまで、そのダイバーシティがすごくうまく機能した気がします。約30人という大所帯だったけど、一緒にわいわい食卓を囲んでいるような感じだった。とても面白い料理になったと思います。博報堂という会社を見たときに、こうしたイベントにおける役割という点で、何か感じることはありますか。

笠松
広告会社にも、もちろんほかの企業にもそれぞれに得意分野がありますよね。今回は特に、博報堂ケトルの木村さんが「Creativity excites the industry」という言葉をつくってくれたのは本当にありがたかった。いろんな立場の人がいろんな話をする場で、それぞれの宣伝イベントに終わらせないための大事な指針になった。あの言葉があったおかげで、どのインダストリーの人も、「なるほど、うちの場合はあれですね」と思いついてくれたんですよね。

長谷部
熱狂を生み出すというモチベーションはあったけど、じゃあどうするか、となっていた時に、あの言葉が行動指針になりましたよね。手前みそだけど、さすが!と思いました(笑)。

笠松
今回のことに限らず、やっぱり業界を引っ張っていく企業が本気になって動かないことには何も始まらないと思いますよ。そのうえで、今回のように大企業もスタートアップ企業もフリーランスの方々も、アドバイザリーカウンシルという同じチームとして、それぞれの得意分野を活かしながら取り組むことができたことも大事だったと思う。いろんな意味で、これから業界全体がめざす姿の縮図になったと思います。

長谷部
裏方も現場も含め、いろんなステークホルダーが一堂に集まって、互いに触発しあえる場でしたね。そうやって有機的につながっていくことで、広告業界とか放送業界含めた全体が活性化されクリエイティブになっていく気がします。自分自身をアップデートするのは難しい作業ですが、互いに刺激しあうことで業界自体がアップデートするような、本当に変わっていけるような、そんな空気を確かに感じました。本当にお疲れ様でした。

笠松
ありがとうございました。

 

【プロフィール】

笠松良彦
株式会社ignite代表取締役社長

1992年博報堂入社。営業&プランナーとして広告計画の立案・広告制作・メディアプランニング・イベント・販促活動などを手掛ける。2001年電通に転職。メディア・マーケティング局に着任。2005年「R25」を核とした新しいクロスメディア・ビジネスモデルを推進すべく電通とリクルートでジョイントベンチャーMedia Shakers を設立。2010年クライアント企業のマーケティング・パートナーとして、特にトップマネジメント層が抱えるコミュニケーション領域における企業内外のあらゆる課題に対応するためigniteを設立。

長谷部守彦
博報堂 エグゼクティブクリエイティブディレクター

1986年博報堂入社。コピーライター、CMプランナーを経て現職へ。これまでに数多くの国内およびグローバルでのブランディング/広告キャンペーンを担当する。Cannes Lions, One Show, D&AD, SPIKES ASIA, AdFest, AD STARSなどの国際広告祭において審査員を経験。ショートフィルム、本編製作にも関わり、2014年映画監督としてデビュー作を公開。