STORIES, LLC./STORIES INTERNATIONAL, INC. CEO鈴木智也

博報堂DYグループの STORIES®STORIES® INTERNATIONALは、ハリウッドや東京を拠点とする、映画と広告でのキャリアを持つ40人以上のクリエイターをマネジメントし、世界のブランド・オーディエンス向けにブランデッド・エンターテイメントを制作しています。2018年10月、STORIESは博報堂DYメディアパートナーズから3億円(約270万USドル)の増資を受け、日本本社の拡張に伴い、新たなオフィスに移転しました。
ライター、プロデューサー、ディレクターとして、これまで世界有数の有名ブランドの仕事を手掛けてきた代表の鈴木智也は、東京と米国を往復しながら、現在はハリウッド作品やテレビの世界へと活躍の場を広げています。今回は鈴木智也にSTORIESのこれまでと、今後の展望について語ってもらいました。

生活者は“面白いコミュニケーションを求めるオーディエンス(観客)”

子どもの頃からずっと、映画や小説などの物語の力や文学の力に強く惹かれていました。それが『STORIES』という社名にした理由です。

デバイスやスクリーンの数が増えるにつれ、SNSやニュース、ドラマ、ゲームといったあらゆる情報が広告コミュニケーションの競争相手になります。生活者が起きている時間が、1日約15~18時間として、その時間をどのように有効に活用していくのか。今までのブランドコミュニケーションは「生活者」を重視してきました。ところが今は、生活者の時間を欲しいと思ったら、生活者を“面白いコミュニケーションを求めているオーディエンス”として捉え、楽しんでいただくことを考えなければなりません。ネットフリックス、アマゾン、Huluそして今後始まる、ディズニーやアップルのサブスクリプションモデルで週何時間~何十時間も視聴する一定のオーディエンスは、その間一切、広告に接触しないのです。オーディエンスはコンテンツ視聴中に広告を見せられる、止められるというユーザー体験に不満があるから、こうしたサブスクリプションモデルで時間を使うのです。

だからこそエンターテイメントの文脈やプラットフォームに掛け算してブランドのメッセージを伝えていく、ブランデッド・エンターテイメントが広告の未来の一つの形として重要になると信じています。

強みは、日米2拠点とメンバーがクリエイティブプロデューサーであること

私は1998年に博報堂に入社した当時から、コンテンツプロデューサーになるという明確な目標を持ち続けていました。博報堂は社員の目標をしっかりとサポートする会社ですが、私もジョージ・ルーカスやロン・ハワードといった著名な卒業生を輩出した南カリフォルニア大学の映画大学院で映画テレビのプロデュースを学ぶ機会をサポートしていただきました。

こうした経験は映画やエンターテイメントビジネスで「次のレベルに進むためのパスポート」でした。2016年のアカデミー賞作品賞を受賞したアノニマス・コンテントの代表、プロデューサー、スティーヴ・ゴリンにメンターになっていただく縁もいただきました。

アノニマス・コンテントのビジネスモデルを学び、映画と広告、クリエイティブマネジメントという事業にヒントを得て、ハリウッドとアジアのクリエイター集団とともにブランデッド・エンターテイメントとオリジナル・コンテンツの両方をつくりあげるチームを結成しました。
2011年、博報堂DYホールディングスやセガ社等をパートナーに東京でSTORIESを設立、2013年にSTORIES INTERNATIONAL, INC.を設立してLAオフィスが誕生しました。

私たちは「日本のストーリー・クリエイティブを世界へ」というミッションのもと、3つのビジネスに取り組んでいます。一つは監督・脚本家を中心とする40名のクリエイターのマネジメント、そしてそのクリエイターの皆さんと取り組む広告やMVなどのプロジェクト制作。さらにオリジナルコンテンツ事業として、セガ社のゲームのハリウッド映像化やその他の日本原作のハリウッド映像化に取り組んでいます。現在日米で25名のプロデューサー・プランナー等が、40名超のクリエイター集団と様々なプロジェクトのお手伝いを行っています。

STORIESでは、幅広いジャンルで才能豊かなクリエイターが揃っています。プロジェクトごとに時には日米混成の最適なチームを編成して、ブランドや商品の課題解決につながる企画案と実施をお手伝いしています。

STORIESの強みは、メンバーの多くが映画テレビ産業・そして広告ビジネスの経験があるクリエイティブプロデューサーであることです。クリエイターたちとのダイレクトなコミュニケーションそして、クライアントの課題解決という視点を同時に実現することで、クオリティの高いプロジェクトをリーズナブルに提供しています。
また日米スタッフの多くがバイリンガルであることで、インバウンド・アウトバウンドプロジェクトのお手伝いをさせていただいています。企画から所属クリエイターとの協業、そして制作まで日米オフィス一貫で、ワンストップで提供できることも強みとなっています。

登場人物としての車

長くお手伝いをさせていただいているプロジェクトのひとつが、スパイクス・アジア2018で受賞したSUBARUの「Your story with」シリーズです。それは、広告の未来としての「ブランデッド・エンターテイメント」の一つの形になっていると思います。90秒CM、ショートフィルムからスタートして、テレビドラマ化(3作品)、そして角川からCM原作の小説が出版されるなど、一般エンターテイメントの流通の中で企業のブランデッドエンターテイメントが放送・配信・出版されるという形で広がってきました。

私たちはクライアントさんと共に「ブランドの最大の強みは何か」についてお話をさせていただきました。SUBARUが車をつくる理由の背後にある哲学、つまり“人々の暮らしや大切な家族に貢献するためのクルマづくり”という思いに至りました。
クルマが人生にどんな形で携わっているのか、人はクルマをどんな存在として捉えているのか。乗る人の人生を考えてクルマづくりに取り組むSUBARUだからこそ、伝えられるストーリーを構築し、ショートフィルム、90秒CMとして制作してきました。できるだけ多くの観客に共感いただくことを意図して、ベタであっても響く人にしっかりと響くようなストーリー展開を心掛けてきました。90秒のCMでも、30分のテレビドラマでも大切に考えたのは、SUBARUのクルマが家族の一員としてストーリーを前に進める重要な役割を果たす登場人物としての役割を果たす構成の物語にすることです。エンターテイメントの文脈でありながら単なるプレイスメントにならず自然な形でSUBARUのクルマが役割を果たすことでクルマに乗る人を考えて取り組むSUBARUという哲学を伝えることにこだわっています。

今後の活動~世界のオーディエンスの心を動かす。

2017年にカンヌ・ライオンズ、2018年にスパイクス・アジアで審査員を務めさせていただいた経験は、特にブランデッド・エンターテイメント分野における、世界の状況や未来を体感する重要な機会になりました。数多くのプロジェクトを優れたクリエイターたちと缶詰になってディスカッションをしたことで多くの学びがありました。2018年にはカンヌの15名の審査員と共著で世界のブランデッドエンターテイメントの現状を掘り下げた「The Art of Branded Entertainment」を出版することができました。ぜひお読みいただければ嬉しいです。

今、私たちは広告に留まらず、『La La Land』を手掛けたMarc Plattや、『The Walking Dead』のプロデューサー陣とともに、ハリウッド映画のプロジェクトにも取り組んでいます。
また昨年の増資を活用し、東京L.A.の両拠点の機能も拡大していきます。
世界のオーディエンスの心を動かすことができるコミュニケーションプロジェクトを、ジャンルを問わず制作するチームになるべく、メンバー一人一人が成長していく環境も整備していきたいと考えています。

www.STORIES-llc.com

■プロフィール

鈴木 智也(すずき ともや)
STORIES, LLC. / STORIES INTERNATIONAL, INC.
CEO

博報堂・博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所を経て、2011 年博報堂DY・セガなどの出資で STORIES®を設立、CEO 就任。STORIESは東京、LAにオフィスを持ちSpikes Asia など受賞をしたSUBARU Your story withキャンペーンなどブランデッド・エンタテインメント、CM、イベント等50本以上をプロデュース。現在は Marc Plat(La La Land)をパートナーに“SHINOBI”等を共同開発するプロデューサーとしてハリウッド映画を企画開発進行中。USC映画大学院プロデューサー学科卒業。2017年カンヌライオンズ・エンタメ部門審査員 The Art of Branded Entertainment (2018:米英で出版、共著)