「働く女性が“生きやすい”社会をつくる」ことをビジョンとして活動する博報堂キャリジョ研が、人々の多様な生き方や働き方を支えている方々とお話をさせていただく対談企画です。今回は、キャリアスクールやコワーキングスペースなど、女性に向けたキャリア支援サービスで注目を浴びるSHE株式会社の中山紗彩さん(CEO)と福田恵里さん(CCO)と対談しました。
後半では、女性の新しい働き方についてお話しします。

ロールモデルは、“いいところだけをつまみ食い型”に変化している

松井:講座の中でとくにこれが人気、というのはありますか?

福田:圧倒的にWebデザイナーですね。あとはライター、マーケター。はじめて入る方の8割ぐらいがWebデザイナーコースを受けられます。みなさん将来独立して、場所を選ばずに働きたいという方が多いので、ひとところに縛られるスキルだと難しいからということもあるかと思います。あと、Webデザインといっても幅が広いので、まずは基礎をやったうえで、ビジュアルデザインを更に極めるのか、UXや情報デザインのような分野を強めるのか、コーディングやプログラミングの部分を伸ばすのか、自分の向いている方向を確かめながらスキルを進化させていく感じです。

宇平:なんだか今どきっぽいな、と納得する部分もありつつ、どうしてWebデザイナーやライターに集中するのかちょっとだけ疑問が残ります。少し前ですと、例えば会社内に「ロールモデル」がいないということに悩む女子が多かったように思うんです。子どもを産んだらみんな退職してしまうとか、あるいはスーパーウーマンで育児も家事も仕事も全部器用にできる人しか会社に残ってない、というような。この講座に来られる方は、どういう人に憧れているとか、誰みたいになりたいという意志をもっていらっしゃっているのでしょうか?

博報堂キャリジョ研  宇平 知紗

福田:ロールモデルを掲げている人はほぼいないと思っています。恐らく、様々な形で自己実現をしている人たちの「素敵な働き方」を自分たちなりに分析しているのではないでしょうか。SNS上で個人名で働いている人を見ると、イラストを描いていたり、デザイン系の仕事をしている人が多いので、その影響は大きいかもしれないですね。ライターについても、「プロのライターではないけれど、noteだけで100,200万稼いでます」というような方がたくさん出てきていますし。

長谷川:わたしも、女の子同士でお茶をしている時などにSNSを見ながら「この人の暮らし方っていいよね、働き方も素敵だよね。」というような話をよくしています。SNSを通して様々な人の生き方、働き方が見える時代なので、一人の人をロールモデルとして目指していくというよりも、いいな!と感じた部分をつまみ食いするように、自分だけのロールモデルを形作っていくんでしょうね。

福田:昔は芸能人のような、手の届かない憧れの存在を目指していましたけど、今は手を伸ばせばギリギリ届きそうな距離感のマイクロインフルエンサーに、ロールモデルがとってかわっている感じはしますね。

仕事も育児も趣味も…、全部ミックスされて“ひとつの私”

宇平:一歩踏み出すか踏み出さないかで、すごく差が出てくる世の中になっているのではないかと感じています。ちなみにわたしは今1歳半の子どもがいまして、絶対量的に男性と同じようには働けないという制限が出てきているんですね。実際、講座に来る方は結婚したいとか子どもを産みたいとか、そういうライフプランを見据えて来る方も多いのでしょうか?

中山:ほとんどの方がそうですし、中にはママもいらっしゃいます。子育てに追われて孤独を感じられていた方が、ここへ来ていろんな方と交流をすることで刺激を受けるとか、育児を頑張るために仕事も頑張る、という前向きな気持ちになってくださっているようです。

宇平:仕事は仕事、育児は育児と切り分けて考えるのが、これまでのライフスタイルだったとしたら、それが全部ミックスされて、仕事も育児も自分のためだし、全部ひとつの私、という感覚がとても今っぽくて、自由でいいですよね。

松井:たしかにそうですよね。キャリジョ研では、男性的なワークライフバランスのとり方を「ケーキカット型」と呼んでいて、全体の中の仕事の配分をカットしたら、残りを家庭や趣味に分配していく。だから仕事が忙しいと他の部分が圧迫されて…という考え方に対して、女性は「バッグチャーム型」。仕事や趣味を独立した存在として全部バランスよくつけていきたい感じ、と考えていました。でももはや、これからはチャームのように一個一個切り離されているというよりも、一体型になっているイメージかもしれませんね。

長谷川:「スムージー型」ですかね?(笑)

左から 博報堂キャリジョ研 長谷川 佑季、 宇平 知紗、SHE株式会社CEO 中山 紗彩さん

求めているのは、自分にしかできないことや、誰かの役に立っている実感

中山:さきほどのロールモデルの話にも少し出ましたが、SHEが行った働く女性の価値観を探る調査で、4人に3人は“個人名”で働きたいという志向があることがわかりました。個人名で働きたいけれど、半数以上はそれを実現できていなかったり、個人名で働けている人ほど仕事への満足度が高かったり、というようなことがわかってきました。

松井:会社の中でも個人名が立っているとか、そういうのも含まれているということですよね。誰もができるわけではない、自分にしかできない仕事を欲しているのかもしれないですね。

中山:会員さんと話していると、「あなただからこの仕事を頼むんだよ」とか、「あなたにこの仕事を頼んでよかった」とか言われるような仕事をしたいとおっしゃいます。

福田:SHEには週末起業家コースというのがあるのですが、そこにいらっしゃる方に「起業して何がしたいですか」とたずねても、例えば10億つくるような会社をつくりたいとか、お金を稼ぎたいといったモチベーションでいらっしゃる方はほぼゼロで、誰かの役に立っている実感がほしいとか、自分のライフスタイルを大切にするために、という方がほとんどなんですね。今までの起業家と呼ばれている人たちと全く異なる自己実現の仕方だなと思っています。もしかしたら、女性ならではなのかもしれないのですけれど。

松井:私たちも、「パラレルキャリア」とか「週末起業家」は女性のほうが向いていて、今後伸びるんじゃないかなと考えています。男性が中心となっている企業ですと、どうしても女性が評価されにくかったり、思うように働けなかったり、折り合いがつきにくいときがある。そういう意味では、自己実現や自己承認みたいなところが別の軸であったほうが、女性は生きやすいのではないかと思います。

エブリディ・ハッピーを求める女性のための、新しい働き方を発信したい

高田:ナンバーワンになるというようなゴールより、どちらかというと何かを目指している過程を重視しているのかもしれないですね。「ゴーイング」から「ビーイング」というか。仕事をして、友達がいて、家族がいて、今日一日を大切に過ごせたと感じられることを目指して、勉強をしたり、次のステップに踏み出す人が多いのかなと思いました。

博報堂キャリジョ研 松井 博代、高田 知花

宇平:そうですよね。男性的なキャリア形成って、次は課長になる、部長になる、局長になる、最後は社長になるぞとゴールを据えて、達成するまでは今日つらくても仕方がない、と考えるイメージ。それに対して女性は、一日一日、エブリディ・ハッピーを求める傾向にありますよね。SHEに来て、講座を受けて、好きな場所で好きな人と好きな仕事をするということで、それを叶えようとされているのかもしれませんね。

中山:そうですね。女性の働き方がもっと自由になっていく、そのような世の中の変化を仕掛けていきたいと思っているので、同じようなビジョンを持って活動されているキャリジョ研のみなさんとも、何か一緒に取り組んでいけたらいいですよね。

松井:ぜひご一緒させていただきたいです。力を合わせて、女性の多様な価値観について発信することで、働く女性が生きやすい、働きやすい社会を実現する第一歩になれたらうれしいですよね。最後に、SHEの今後の展望をおきかせいただけますか?

中山:SHElikesの事業に関しては、もっともっと学びの部分を充実させ、仕事機会の提供の充実も図っていきたいです。そして、全国展開や海外進出もしていきたいですね。今は、「私らしい働き方を考える」という課題解決にフォーカスしていますが、今後は、私たちがターゲットとしているミレニアル世代の方々もライフステージがかわって、子どもが生まれたり、歳を重ねていきますし、社会的には食や環境などの問題も見えてくると思います。そのタイミング、タイミングで、SHEのブランドを使って自分たちにしかできない価値提供をどんどんしていきたいと思っています。