博報堂DYグループのCSRは、生活者と社会の中に「新しい幸せ」を生み、つなげ、ともに広げていくことを基本理念として掲げています。このインタビューシリーズでは、生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現を目指し、日々の仕事の先に存在する社会課題に対して自らの「クリエイティブの力」「伝える力」「一人ひとりの個性」を主体的に発揮しながら取り組んでいる社員たちの声をお届けします。

「ひとこと多い張り紙」で、SDGsの普及を目指す。

【「ひとこと多い張り紙」の制作に携わったアートディレクターの伊藤裕平(左)と、コピーライター大石将平(右) *制作当時は博報堂に所属し、現在はTBWA\HAKUHODOに出向】

「ひとこと多い張り紙」とは、生活の中でよく見かける張り紙に使われている言葉を用いることで、SDGsの17目標とその課題を身近に感じていただくことを目的に、JANIC(特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター)と博報堂が共同開発したSDGs理解促進ツールです。張り紙の種類は17目標それぞれに対応しています。2017年10月よりJANICのホームページにて無償公開しています。
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SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットで採択され、2016~2030年の15年間で達成するために掲げた国際社会共通の目標です。世界が抱える問題を解決し、持続可能な社会をつくるために2030年までに達成すべき17目標と具体的な169のターゲットで構成されています。当社グループは、国連広報センターと協力しSDGsの公式日本語版アイコンと公共広告映像をクリエイティブ・ボランティアとして制作しました。SDGs公式日本語版アイコンはこちらから。

身近なシーンでSDGsを知ってもらうための、 メッセージ付き張り紙というアイデア

大石
博報堂では、「ニュースリリースの書き方セミナー」や「生活者にNGOを理解していただくための認知向上プロジェクト」など、2013年度よりJANICの広報戦略のサポートを行ってきました。JANICの中期事業戦略の策定を受けて、2016年から3ヵ年のコミュニケーション戦略およびコンセプト等の立案を博報堂がお手伝いしたことがきっかけとなり、僕らはそのコミュニケーションコンセプトを体現するロゴマークやスローガン、ステートメントの制作に携わりました。

【JANICのロゴマーク / 17の円は「世界を変えるための17の目標」の実現に向けて活動しているNGOを表し、ふたつの円をもつ無限には、SDGsの実現に向けNGOと世界をつなぐ役割を果たすという意味が込められています。スローガン等はこちらから。】

実はそこで一旦プロボノは完了する予定でしたが、日本人の多くがまだSDGsのことをあまり知らないという事実を知り、「この目標をひとりでも多くの人に知ってもらいたい」「目標の達成に向けて行動してもらいたい」という想いから、理解促進ツールの作成を思い立ちました。

伊藤
SDGsには、世界中どこにいても、もちろん日本においても、誰もが取り組むことができるゴールが提示されています。当時、僕自身もSDGsについてほとんど知識がなかったのですが、17目標と169のターゲットを読みこんでいくと、実は、僕たちが生活の中で実践できることがたくさんあると思いました。そこで、生活のさまざまなシーンでSDGsを想起させる方法を大石くんと話し合い、張り紙という発想にたどり着きました。

世界中の一人ひとりに関わる目標だからこそ、 生活者の目に留まるメッセージ、デザインを考え抜いた。

大石
「注意!」「~お願い~」など、その生活シーンにおいて大切なことが張り紙に書いてあるのをよく見かけると思います。「ひとこと多い張り紙」では、普遍的で誰もがすぐに理解できる言葉を使い、SDGsが示すゴールに取り組むことの大切さに気付いていただけるようなひとことを入れました。

伊藤
たとえば、目標13の「気候変動に具体的な対策を」にあたる張り紙には、「地球の気温が年々上昇しているので、冷やし中華はじめました」と書いてあります。お店で冷やし中華を提供することによって地球の気温が下がるわけではありませんが(笑)、空調の温度調節の近くにこのポスターを張ることによって、地球温暖化について考えるきっかけになるかもしれません。

【JANICホームページのダウンロード画面より】

大石
目標16の「平和と公平をすべての人に」や目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」はどちらも非常に大きなテーマですが、日々の生活で普段使われている言葉から課題を捉えていくことを試みました。世界中の一人ひとりの目標だからこそ、生活者との距離感を大切にしています。

【目標16「平和と公平をすべての人に」の張り紙には、「いち市民としての発言は控えなくても大丈夫ですが、業務内容に関する会話は控えましょう 世界にはさまざまな理由によって、市民活動が制限されている国や地域がたくさんあります。」と書かれています。】

伊藤
張り紙の判型はA4とし、17枚とも白い縁のあるデザインにしたのは、家庭用プリンターで出力してもデザインが欠けないようにするためです。手作りっぽい仕上がりにもこだわりました。オフィスや自宅、図書館など、具体的にどういったスペースに張れるかも想像しながら作りました。

【目標12「つくる責任 つかう責任」の張り紙には、「いったい何本失くせば、気が済むのか知りませんが、傘忘れ注意 2050年までに世界の人口が96億人に達した場合、今の大量生産大量消費を続けていくと、地球がいくつあっても足りません。」と書かれています。】
【目標11「住み続けられるまちづくりを」の張り紙には、「万が一の災害に備える意味でも、扉の前に物を置かないでください 2006年からの10年間で、世界では77万人以上の命が災害で失われ、19億人以上が被害を受けました。」と書かれています。】

そして、自由にダウンロードできるようにサイトで公開すれば、誰もが気に入った張り紙をプリントアウトでき、職場や学校、店舗などに張ってもらえれば、張り紙の中のメッセージが多くの人に届けられると考えました。

【目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の張り紙には、「電気の使えない生活に想いを馳せながら、退出時には消灯してください 世界では、13億人が電気を利用できず、30億人が二酸化炭素を排出する化石燃料を使っています。」と書かれています。】 

クリエイティビティを活かして、 社会課題と生活者との架け橋をつくる

大石
広告にはそもそも、商品やサービスと、生活者や社会とをつなぐ役割があります。JANICのロゴリニューアルから始まったこのプロジェクトでは、貧困や紛争など社会課題解決に真っ向から取り組むJANICの想いを生活者にとってわかりやすいメッセージにして発信していくことにより、SDGs達成に向けた動きを日本国内においても大きくしていくことを目指しました。

伊藤
社会的課題解決に向けた活動はとても時間がかかります。「ひとこと多い張り紙」は、SDGs達成に向けて、ずっと使い続けていただけるツールだと思います。この張り紙が誰かの視点を変え、行動を変える手助けになることを願っています。

大石
JANICとの取り組みを通じて、「SDGsで世の中を変えていこう。その中心的な役割を果たそう」という情熱を感じました。その情熱をできるだけシンプルで生活者に伝わりやすいクリエイティブで表現するというのは、生活者発想を掲げる博報堂の強みだと思います。私たち広告会社のスキルを、これからも社会課題解決に活かしていきたいという想いを強くしています。

伊藤裕平(いとう・ゆうへい)

2008年 博報堂入社。
TBWA\HAKUHODO アートディレクター。広告のアートディレクションを中心に、企業のCIやパッケージデザイン、CMやミュージックビデオの企画など幅広く制作。国内外受賞歴多数。

大石将平(おおいし・しょうへい)

2014年 博報堂入社。
TBWA\HAKUHODO コピーライター。国内外のさまざまな企業のクリエイティブを担当。言葉からアイデアを発想することを意識している。

【ご参考】
・JANIC公式ホームページ「ひとこと多い張り紙」のダウンロードはこちら
・国際連合広報センター公式ホームページ「SDGs公式日本語版アイコン」のダウンロードはこちら