博報堂のインド拠点Hakuhodo India、インドにおける生活者意識・行動の実態調査を実施し、「Hakuhodo India 生活者フォーラム 2026」で5つの新興トレンドを発表
株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:名倉健司、以下 博報堂)のインド拠点である Hakuhodo India Pvt. Ltd.(以下 Hakuhodo India)は、インドの生活者を対象とした暮らしと価値観に関する意識・行動の実態調査の結果を「Hakuhodo India 生活者フォーラム 2026」において、インドにて発表しました。
フォーラムの冒頭に博報堂代表取締役社長の名倉が登壇し、急速に進化するインドへの敬意を表明。その後、1895年創業の同社が大切にする、人を「消費者」ではなく「生活者」として捉える「生活者発想」を紹介しました。さらに1981年設立の博報堂生活総合研究所が「生活者のくらしや価値観はどう変わっていくのか」について日本・中国・ASEANで調査を続けており、昨年からインドでも調査を開始したことを説明し、来年の日印国交樹立75周年を前に「生活者価値デザイン・カンパニー」として、インドの生活者の人生を豊かにする価値を現地パートナーと共にデザインしていく姿勢を示しました。
本調査の中核となるのは、博報堂生活総合研究所が9カ国・地域、14,000人を対象に実施している生活者の経年調査「グローバル定点2026」です。お金・愛・余暇・健康・人間関係など、暮らしと価値観に関する質問を、長期的な変化を追えるようほぼ同じ設問で続けています。インドでの実施は今年で2年目で、デリー、ムンバイ、ベンガルールの3大都市(以下 メトロ)に加え、スーラト、ヴィシャーカパトナム、カンプールの3都市(以下 ティア2都市)を対象に、15~59歳の男女3,000人に調査を行いました。併せて有識者インタビューと家庭訪問調査を実施し、調査から立てた仮説を検証しています。
以下、インドでの発表内容の概要をご報告します。
<調査結果サマリー:2026年の5つの新興トレンドとDESIGNITY(デザイン+アイデンティティ)>
- ファイナンシャルリッチ 対 メンタルリッチ 【社会】ティア2都市は他人の目に映る豊かさを、メトロは自分が実感できる豊かさを求める。
- 繋がりデトックス 対 繋がりデザイン 【コミュニティ】ティア2都市は人付き合いから距離を取り、メトロは付き合う相手を選びながら繋がりを求める。
- デフォルト家族 から カスタム家族 へ 【家族】生まれたときに与えられた家族関係を自分の意思で選び直し、家族の形を再定義する。
- 伝統的ヒエラルキー から 自己流ダイバーシティー へ 【人間関係】職場の上下関係が崩れる一方、家庭内のルールは変化が遅れ、そのずれにストレスを感じる。
- 口コミから‘AI’コミへ 【個人】8割が「人は信頼できない」と感じ、信頼の順位では「AI > メディア > 人間」と捉える
5つのトレンドの根底にあるもの:DESIGNITY(デザイン+アイデンティティ) 自分のアイデンティティや選択肢を自分の手でデザインしたいという欲求
<調査結果詳細>
① ファイナンシャルリッチ 対 メンタルリッチ
「Follow the money: お金を追え」――インドの生活者が長く従ってきたこの価値観が揺らぎ、お金・成功・幸福のとらえ方がメトロとティア2都市で分かれ始めています。
【ティア2都市】ティア2都市の人々は外に目を向け、「自分の人生が周囲からどれだけ豊かに見えるか」を成功の尺度にしています。約6割が「お金がなければ幸せになれない」と答え、お金は幸せの必須要件であり、社会的な承認を得るための消費や、人に見せるための消費への意欲も高まっています。
【メトロ】一方、メトロの人々は内側に目を向け、「自分の人生がどれだけ豊かだと実感できるか」で成功を定義し直しています。休息や旅行、趣味にもっと時間とお金を使いたいと考える人はティア2都市より多く、お金は出世のためのものから、充実した人生を送るための手段へと変わりつつあります。
② 繋がりデトックス 対 繋がりデザイン
インドは「もっと人と直接会いたい」と考える人が日本の2.5倍にのぼる、つながりを大切にする社会です(グローバル定点2026:「もっと人と直接会いたい」インド29.6% vs 日本11.6%)。ところが、こうしたつながりへの向き合い方が、メトロとティア2都市で大きく異なり始めています。
【ティア2都市】これまで「コミュニティをより重んじる」と見られてきたティア2都市では、人と直接会いたい人や親しい友人と過ごす時間を増やしたい人がメトロより少なくなっています。その差は30代から開き始め、50代で最も大きくなります。「人と親しくなると、面倒ごとや噂話が増える」という声もあり、かつて人との結びつきを誇りにしていたティア2都市の人々が、個人としての自分を確立しようとする中で、あえて人と距離を取り始めています。これが「繋がりデトックス」です。
【メトロ】一方、メトロの人々はむしろ人とのつながりをより強く求めています。「友人は多いほどよい」と考える人や多様なネットワークを持つ人はメトロの方が多く、50代は若い世代以上に活発な社交生活を送っています。ただし、誰とでも付き合うのではなく、「自分が一緒にいたい人」を選び、深く支え合える関係を築いています。
変わったのは、繋がりを求める気持ちではなく、繋がりを「どう見つけ、どう選ぶか」。メトロの人々は交友関係を自分で設計しています。これが「繋がりデザイン」です。
③ デフォルト家族 から カスタム家族 へ
インドでは「家庭内の人間関係」がストレスの原因の上位に挙げられ、メトロでもティア2都市でも、家族は依然として大きなストレスの一因です。それでも人々は家族から離れようとはせず、「家族ともっと時間を過ごしたい」と考える人は日本の約2.5倍(グローバル定点2026: 「家族ともっと時間を過ごしたい」インド65.4%/日本26.4%)。仕事より家族を優先し、忙しい日常から一歩引いて家族との関係を取り戻そうとしています。
しかし、家族との関係に満足している人はティア2都市の方が少なく、特にティア2都市の30代は家族と過ごす意欲が全年代で最も低くなっています。「メトロは家族から離れ、ティア2都市は家族と密接」と見られてきた従来のイメージが覆り始めています。
【ティア2都市】一方、家族や近所に囲まれて暮らすティア2都市の人々は「距離」と自立を求めています。
【メトロ】すでに家族と離れて暮らすメトロの人々は、家族との「近さ」を求めています。
生まれたときに与えられた家族関係(=デフォルト家族)をそのまま受け入れるのではなく、どの関係をどのくらいの距離感で保つのかを自分の意思で選び直す(=カスタム家族)。インドの家族の形が、いま変わり始めています。
④ 伝統的ヒエラルキー から 自己流ダイバーシティー へ
年上を敬い、年功が権威をもたらし、稼ぐのは男性、家庭を守るのは女性――。こういったインドの伝統的な役割分担は、職場ではっきりと崩れ始めています。「若い人が社会のリーダーである」と考える人は日本の3倍にのぼり(グローバル定点2026:「若い人が社会のリーダーである」インド39.0% vs 日本13.0%)、6割以上が「年功序列の制度を守るべきではない」と答えています。権威のよりどころは「年齢」から「能力」へと移ってきていると解釈できます。
しかし家に帰ると、ルールは職場ほど変わっていません。特にティア2都市では、配偶者と家事・育児を平等に分担している人は少なく、このずれから生まれる負担を引き受けているのは女性です。外では現代的な役割を期待され、家の中では伝統的な役割を求められる――そのギャップが女性のストレスを高めています。
役割分担の変化は“都合のよいところだけ”という選択的なものであり、私たちが目にしているのはヒエラルキーの終わりではなく、部分的なヒエラルキーの変化です。
⑤ 口コミから‘AI’コミへ
“あなたは人を信頼していますか?” この問いに対し、インドの生活者の10人のうち8人が「ほとんどの人は信頼できない」と答えました。
興味深いのは、不信感の出現パターンです。匿名性の高い大都市ではなく、むしろ誰もが顔見知りであるティア2都市で高くなっています。インドは「人と人との信頼の危機」に直面しており、人々は信頼を他に向け始めたのです。
かつてインドのマーケティングは「口コミ」がかなり重要でしたが、今では友人よりメディア(主にソーシャルメディア)の情報を重視する人が過半数を占めています。友人は「最初に頼る相手」から「スマホ画面で得た情報を確かめる相手」へと役割が変わりました。
その先にあるのがAIです。「AIを信じている」人は約9割で、メトロとティア2都市の差はごくわずかです。「人は嘘をつくかもしれないが、AIは中立に答えてくれる」――人々がAIを選ぶ理由は速さではなく信頼です。人への不信がAIへの信頼を後押ししているのです。
信頼の順位は「AI > メディア > 人間」へと入れ替わり、最初に頼る情報源は「口コミ」から「”AI”コミ」へと変わったのです。
5つのトレンドの根底にある欲望:DESIGNITY(デザイン+アイデンティティ)
5つの新興トレンドに共通するのは、「自分らしさを自分でつくりたい」という強い個人の自覚です。私たちは、これを「DESIGNITY(デザイン+アイデンティティ)」と名付けました。自分のアイデンティティを自分の手でデザインしたいという欲求が、5つのトレンドの根底にあります。
メトロとティア2都市では、その現れ方が異なります。ティア2都市の人々は目の前に広がる選択肢に気づき始め、メトロの人々はその中から自分に合うものを意識的に選び取っています。生活者は自分なりのやり方で、自分のアイデンティティをデザインしているのです。
Hakuhodo Indiaは今後も、本調査をはじめとするさまざまな知見やネットワークを活用し、インドをはじめとするグローバル市場における生活者理解とブランド成長の支援に尽力してまいります。
■ Hakuhodo India 生活者フォーラム 2026概要
Hakuhodo India Pvt. Ltd.は、博報堂生活総合研究所が中心となって実施している「グローバル定点2026」を活用し、年に一度、インドの新興トレンドを分析しています。その分析結果は、現地インドの会場にて、クライアントをご招待し、フォーラムとして発表しています。
- 実施会場: DLF Cyber Park - The Auditorium
- 調査対象地域:インド6都市 ― メトロ:デリー、ムンバイ、ベンガルール/ティア2都市:スーラト、ヴィシャーカパトナム、カンプール
- 調査方法:オンライン定量調査(インド6都市3000サンプル)、家庭訪問による定性調査(30代男性5名・30代女性5名・50代男性4名・50代女性4名の計18名)、有識者インタビュー(7名)
- 調査時期:2026年1月~2026年7月
- 調査機関:QO株式会社、Market Xcel Data Matrix Pvt. Ltd
■ 詳細レポート・追加分析のご案内
Hakuhodo Indiaでは本お知らせで公開した内容以外のデータのお問合せや、より踏み込んだ分析レポートの提供および、貴社の課題に合わせた社内勉強会・報告会の実施を受け付けております。お気軽にお問合せ下さい。
メールお問合せ先:hglobal.news@hakuhodo.co.jp
■ Hakuhodo India Pvt. Ltd.について
Hakuhodo India Pvt. Ltd.はデリー、ムンバイ、バンガロールを中心にインド国内でグループ11社を擁する株式会社博報堂のインド現地拠点です。日系・グローバル・インドローカルの有力ブランドを幅広く支援し、戦略立案からクリエイティブ、デジタル、体験設計、実行まで一貫したサービスをワンストップで展開しています。さらにインドをグローバルサウスのハブと位置づけ、中東アフリカ南米向けの業務も担当し、世界規模でブランド成長を支援するパートナーです。