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プラットフォームの変化とクライアントの挑戦に寄り添うクリエイティブとは
(連載:愛されるDXはカタチにできるのか Vol.25)

2022.04.01
#DX#クリエイティブ#デジタルマーケティング#マーケティング

「広告朝日」の新連載「愛されるDXはカタチにできるのか」の第25回、博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 ビジネスプロデューサー 横山昴の記事が掲載されました。

博報堂グループにおいて、クライアント企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を、マーケティングDXとメディアDXの両輪で統合的に推進する戦略組織「HAKUHODO DX_UNITED」。その唯一のクリエイティブ部門である「生活者エクスペリエンスクリエイティブ局」は、“潜在需要を発掘し、生活者の新たな好意・行動を喚起し、よりよい生活、社会を創り出す”といった価値創造型のDXをリードする部門です。キーワードは、「愛されるDXは、カタチにできるか?」。このテーマに取り組むメンバーたちの多様な視点をご紹介していきます。

連載第25回は、博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局ビジネスプロデューサーの横山昴が登場。横山はあらゆるプラットフォームと連携し、最適解を見つけ出すデジタル動画制作チーム「.QuickMovie」の発起人。クライアントが求める成果を出すためには、「変化」をいち早く汲み取り「挑戦」へと導くことが常に大事であると横山は語ります。

早く掴み、早く動く。メディアに一番近いクリエイティブチーム

──「.QuickMovie」の狙いと背景について教えてください。

3年前、社内外で求められていたのは運用型の動画やバナー広告を「早く」「安く」つくることでした。私は入社と同時にそのニーズを知り「.QuickMovie」を立ち上げるとともに、メディア「最適解」を見い出すというのが当時のトレンドでしたので、画角を変える、仕様に合わせて動画を再編集する、見え方に合わせて撮影手法を変える、といったトライ&トライの毎日を送りました。サービス立ち上げ当初は「.QuickMovie」ができることを具体的にするべく、プラットフォーム各社へ「ラブコール」を送り、制作手法のTipsを詰め込んだ動画サンプルを100本制作。それを博報堂DYグループ内へ啓発することでイメージを掴んでもらい、社内全体の「デジタルアップデート」を促進しました。社内でこれも「博報堂DYグループのクリエイティブ」なんだ、とわかってもらうためには語るだけではなく、作るところまで落とし込むことが必要だと考えたのです。

社内の優秀なクリエイターがつくったTVCMを僕らの手でデジタルメディアにフィットさせ、リーチを増やす取り組みは、当時のクリエイティブディレクターや営業担当からしたら“目から鱗”だったかも知れません。一筋縄でいかない所もありましたが、そうして作られたクリエイティブは結果的に各プラットフォームでの想定値を上回り、プラットフォームにとっても、クライアントにとっても、そして多くの出面に配信されることで社内クリエイターにとっても、“三方よし”な働きだったと自負しています。

それからの1年で、社内からの新規相談が毎日届くまでにサービスは成長しました。当時、この構想を描ける人は他にもいたと思いますが、短い期間で行動までつなげ形にできた人はいませんでした。僕が現場に最も近いプレイヤーだったからこそ、変化をキャッチし体現することができた「先行者優位性」があったと思います。

──そのような急速な立ち上げを可能にした秘訣はどこにあるのでしょうか。

入社当時、僕はクリエイターでもなく、動画制作の経験もありませんでした。「クリエイティブ」領域は言葉にしづらく、個人に依存しがちです。さらに企画のセンスが問われます。僕にはそのセンスは無かったので、前提を持たずありとあらゆる動画を見て分解し、型を見つけ出し、それを実際の仕事で事例化しました。結果、“素人”でも腹落ちできて、口を出せる動画制作手法を目指すことに。これは、社内ではやっている人がまだいませんでした。広告運用をわかっている人が、クリエイティブまで語れる未来を目指したのです。

「3BlockPlanning」や「縦型専用コンテフレーム」など僕が生み出した型は、今でも博報堂DYグループの各所で使われています。当時は明石ガクトさんが「動画2.0」と名付け動画を定義したり、GoogleがYouTubeの「ABCDフレームワーク」を生み出したりしており、クリエイティブがより言語化され「伝統芸」ではなくなった時代だったかもしれません。「クリエイティブ」の価値は「目的」に合わせて見直されるタイミングだったと思います。

僕の仕事はそんな目的に合わせて動画制作をするだけではなく、クライアントが求める成果や要望に合わせて全体のプランニングを行うこともしばしばあります。僕はこれを「クリエイティブプランニング」と呼びます。最近の流行りですと「ニュータイプインフィードクリエイティブ(※1)」のプランニングがあり、TikTok、YouTubeショートとInstagramリールを掛け合わせて商品をグロースアップしていく手法です。各メディアがまだ明確な答えを持っていない「フルアテンション動画市場」の横断プランニングには、まだまだ可能性があります。

ちなみに、僕は各メディアの仕様変更にはかなり敏感です。InstagramがリールをPO配信(※2)の対象に入れたというニュースを聞きつければ、運用中のクリエイティブでもすぐにチューニングを提案し、再入稿します。作るだけではなく、その後にどう見られるかを細かく考え続けることもこの仕事の重要なポイントです。

※1:TikTokやInstagramリールなど縦型インフィード広告を指す
※2:Placement Optimization(配置最適化)

人気TikTokerをクリエイティブディレクターに

──「.QuickMovie」は、「TiQuick」というチームも立ち上げました。

「TiQuick」はTikTok For Business Japanと広告会社が初めて連携したクリエイティブチームとして2021年初めに立ち上げました。未知な部分も多いTikTokの分析から取り扱いの説明まで、全てサポートする機関です。これも自主的にTikTokへラブコールを送り立ち上げました。週次で行われるチームの定例会には、株式会社TORIHADAのメンバーも参加し、ワンテーブルで博報堂DYグループ内の実績が集約されます。コンテンツの出し分けがよりマルチに行われるTikTokのアルゴリズムでは、なかなか“俯瞰”してメディアのことを見ることができません。何が流行っていて、何が人気なのかを冷静に判断し、企画に落とし込むためには、自分以外のフィードを覗き見させてもらうことも大事な習慣です。

──TikTok広告で最近の取り組んだ挑戦を教えてください。

TikTokで効果がでるクリエイティブ手法は「UGC(ユーザージェネレイテッド・コンテンツ)」です。その「UGC」をクリエイターに担わせた「CGC(クリエイタージェネレイテッド・コンテンツ)」が生活者の好意・行動を喚起する新しいキーワードになっており、人気TikTokerにクリエイティブディレクターとして広告制作に参加してもらうという新しい動きがありました。僕らの挑戦は彼らにクライアントとの会議にも参加してもらい、方向性を理解してもらった上で、表現を一任します。彼らの表現こそが、生活者に愛される情報の発信の肝となるのです。そして、僕らはTikTokerを「クリエイター」と呼びます。彼らはTikTokだけではなく、YouTubeやInstagramへも最適投稿を駆使しファンを魅了しているので、横断クリエイターとしてプロフェッショナルです。

彼らと組むときには、まず入り口から出口までの導線をわかりやすく引くようにしています。クリエイターは「興味」につながる導火線のような役割を担っています。生活者は気になる情報を自ら探し、学び、購入する。それに合わせて行動を「助け」、「参加」してもらうまでの仕掛けを設けるのです。

「TikTok売れ」という偶発的なものではなく「TikTok売り」をカタチにすることができれば、そこに生活者に愛される最適解があるはずです。「meme(ミーム)」と呼ばれる現象はその基本であり、どんな手法でそのトリガーを引くのかがポイントだと考えます。

──横山さんがこの仕事をする上で、最も大事にしていることは何ですか。

目標としているのは「最初に考えた人」より「最初に実現した人」になること。そのために、たとえばプラットフォームでまだ広告化されていないサービスがあれば、そのメニューが生まれたことをイメージして最適なクリエイティブの構想を前もって準備します。そこで生まれたノウハウや表現はプラットフォームへすぐに壁打ちを行い、社内の各所で「愛される」までの未来を想像し、どんなに小さくでもいいから事例を積み上げます。

それは、ビジネスに貢献することでもありますが、プラットフォームごとの環境、生活者の気分やニーズにあったコミュニケーションを実現することにもつながり、技術や数値に追われて忘れられがちなデジタル領域で「愛される広告」を実現することにもつながります。

──注目しているメディアやプラットフォームは。

2つあります。1つはコネクテッドTVの領域です。YouTubeやTVerをインターネットに接続されたテレビの大画面で視聴する家庭が2割ほどいると言われています。今後はさらに伸びてくるはずで、そこに最適なクリエイティブを考えています。きっと、スマホで見るものとは違うでしょう。「CMに帯をつけるだけ」では味気ないはずです。基本の視聴態度は「ながら」です。そうであれば、番組やコンテンツに連動した「タレントマッチング」や、マルチなアウトプットで「振り向いてもらう」ことも1つの手でしょう。古巣のマーケティングリサーチ会社を活用し、独自に調査をとり自分でも視聴態度の仮説を立てながらテレビ局と各プラットフォーマーと共に、お互いの強みを持ち寄り進行中です。

もう1つは「Good-Loop」ドネーションAD(※3)。SDGsやソーシャルグッドなど関心が高まる時代だからこそ、この取り組みが生活者にとっての広告を変える鍵となるはずです。

クライアントや営業担当にとって今後ニーズの高くなる領域へ先回りして小さなトライアルパッケージを提供する。これも僕自身が社内外で愛されるための役目だと思っています。僕が「横山昴」というコンテンツみたいなもので、関わる皆さんが楽しんだりワクワクしたりして欲しいと思っています。数年後に「あの人は今」とならないように、ヒットを連発しないといけない勝手な使命感と向き合う日々です。

※3:生活者の動画広告視聴に応じて、広告主企業が特定の団体へ寄付をすることができる、生活者と広告主企業、寄付先団体をつなぐ動画広告ソリューション

──広告は各プラットフォーム内で敬遠されているイメージもあります。愛されるDXのためには、何が必要でしょうか。

時代にあった距離のとりかたでしょうか。恋愛も一度失敗しても距離を置くと恋が芽生える、などと言いますよね。そのような生々しさが必要だと思います。広告という「カタチ」が嫌悪されているのであれば、クライアントと一緒に腹くくって受け入れられる「カタチ」を模索したら良いと思います。それは横型をそのままリサイズして縦型にしたり、2段積みにするなどのお利口で機械的なものではなく、もっと手ざわりや触感があるもの。手書きのラブレターのような。それが本当の意味での最適化と温度をもった表現となります。それを僕らが「広告」と呼べば良いのではないでしょうか。そんな「挑戦」にも、僕らは寄り添っていきたいですね。

横山昴(よこやま・すばる)
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 ビジネスプロデューサー

デジタルクリエイティブディレクター兼“サービス立ち上げ屋”。全プラットフォームと連携しクリエイティブを開発する「.QuickMovie」や、短尺デジタル動画集団「ULTRA SHORT」を兼務。3年間で1,500本以上の動画を制作からPDCA運用まで担当。その経験から動画起点で逆上がりしTVCM運用までを統合プランニングすることを得意とする。2021年Tiktokと共に発足したクリエイティブチーム「TiQuick」では縦型動画横断プランニングとクリエイターコンテンツの可能性最大化を見据えて奮闘中。

※「ウェブ広告朝日」より転載
(21-3049 朝日新聞社に無断で転載することを禁じます)

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