ヒット習慣予報 vol.427『ゆるエフォート』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの吉田です。

最近SNSを見ていると、ストイックに自分を追い込むような「意識高め」な投稿よりも、あえてハードルを下げる工夫をした日常の投稿によく目が行くようになりました。

完璧な成果を目指して気合いを入れるのではなく、自分の生活スタイルに合わせて努力のハードルを調整し、ゆるく長く継続していく。今回は、そんなストイックさよりも「自分に合った無理のないペース」で取り組む新しいセルフケア・自己研鑽のスタイルを『ゆるエフォート』と名付け、具体的な取り組み事例を紹介していきます。

最初に紹介する事例は、「ゆるお弁当作り」です。

最近、弊社内でタッパーにおかずやご飯を詰めた、“タッパー弁当”を持参する人がここ最近急激に増えてきているのですが、「タッパー 弁当」の検索ボリューム自体もここ数年で大きく伸びており、手軽なお弁当づくりのニーズが徐々に高まってきているようです。

出典:Googleトレンド(「タッパー 弁当」の2004年からのウェブ検索数の推移) 

色鮮やかなおかずや綺麗なお弁当箱に詰める「映える弁当」ではなく、手作りでありながらタッパーに前日の残り物を乗せるだけの、手軽に作れる高コスパの「地味弁」が注目を集めています。お弁当を作るための調理時間を大幅に短縮し、無理に何品も作らないことで、精神的な負担を減らしながら自炊生活を長く続けつつ、ついでに節約にもなるのが人気の理由のようです。

続いて紹介する事例は、「ゆるボディメイク」です。

トレーニングやボディメイクといえば、ストイックに取り組むものというイメージが先行しがちですが、毎日のハードな筋トレやシビアな食事制限を行わず、週1回の軽い運動や、自宅で1~2分程度できるストレッチ、さらに休日のお酒や好きな食事も我慢しすぎずに楽しむという、マイルドなボディメイクを取り入れる人も増えています。僕の周りでも、週に1回行ければいいというマインドでジム通いを始めた先輩もいるので、ゆるくトレーニングしつつ、健康維持に取り組む人は増えつつあると感じます。
ストイックになりすぎないことで、途中で挫折するリスクを防ぎつつ、体型維持と心のリフレッシュを両立させる方法として支持されており、動画プラットフォーム上では一見ダイエットに不向きな食品や料理を取り上げつつ、ダイエット中に食べるゆるさを見せるタイプの動画が、多くのユーザーから共感を得ています。

最後に紹介する事例は、「ゆるリスキリング」です。

資格取得や語学学習といえば、毎日数時間机に向かう姿が想像されがちですが、最近は「1日5分だけアプリを開いて勉強する」という超低ハードルな学習法で何千日も継続している人が話題になっています。
ある語学学習アプリは、ログイン期間が空くと通知が届くのですが、空いた日数によって届く内容が変わったりすることがSNS上で注目を浴びるなど、継続させるための工夫もあるのがポイントです。実際、SNS上で話題になっているのをきっかけに超低ハードルな学習を始めた人を見かけることも多く、継続して取り組んでいる投稿も増えてきています。
こういったアプリを活用することで、まとまった勉強時間を確保できなくても、通勤時間や就寝前の数分間を「学習の時間」と割り切ることで、罪悪感なく自分のペースで知識を積み重ねることができます。

ここまで『ゆるエフォート』の事例をいくつか紹介してきましたが、このようなスタイルを取り入れる人が増え始めている背景にはどのようなことが考えられるでしょうか。

まずひとつに、「完璧主義による燃え尽き症候群からの脱却」が挙げられます。「やるからには完璧にやらなければならない」「毎日何時間もストイックに努力すべき」というゼロ百思考は、一度でも計画が崩れると大きな挫折感を生み、挑戦自体をやめてしまう原因になっていました。60点の出来であっても「自分に合ったペースで続いていること自体」を肯定する、自分に優しい思いやり(=セルフコンパッション)の意識が広がり始めていると考えられます。

もうひとつの背景として考えられるのは、世間一般の「こうあるべき」ではなく、自分サイズへの最適化する意識が広がりつつある点です。「手の込んだお弁当が良い」「筋トレはジムに通って追い込むべき」「勉強は毎日数時間机に向かうべき」といった、従来語られてきたハードな基準(型)に自分を無理やり合わせるのではなく、自分のライフスタイルや体力に合わせて「努力の形をカスタムする」スタンスが定着したことです。自分にフィットした努力に再設計することで、生活全体のQOLを損なわずに継続できるようになっています。

最後に、『ゆるエフォート』のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。 

『ゆるエフォート』のビジネスチャンスの例
■ 5分以内で完成する超手抜き工程に特化した「ゆる自炊専用ミールキット」の開発
■ 挫折しそうな日に「今日は何もしなくてOK」と優しく認めてくれる、ゆる継続特化型AIコンシェルジュサービスの提供
■ 頑張りすぎない「週1回・15分だけ」の利用を推奨する、ゆるトレ専門のライトフィットネス店舗の展開

30代に入ってからぐんぐん増量中なので、僕もゆるくボディメイクをして、ゆくゆくは20代のころの肉体を取り戻せればと思います…。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。 
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。 

吉田裕(よしだ・ゆう)
北海道博報堂
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2020年北海道博報堂に入社し、マーケティング・ストラテジックプラナーとして業務に邁進している。2024年博報堂プラニングハウスに参画。インターネットに生息し、日夜インターネットカルチャーを浴び続けている。

Xでシェア Facebookでシェア