「ネット発」と「テレビ発」で大ヒットをどう作る? その鍵になる7つの認知タイプ @メ環研フォーラム2026 レポートvol.1

2026年7月7日、メディア環境研究所によるフォーラム【情報圏のひらき方~「7つの認知タイプ」と「α世代」から見える未来~】が開催されました。
世の中に流通する情報は増え続け、生活者は自分にとって心地よい情報圏の中で過ごすようになっています。時に閉鎖的になりがちなこの環境の中で、私たちはどうやって新たなコンテンツを届け、生活者とのつながりを作ればいいのでしょうか。
今回のレポートは全4回にわたり、「情報圏のひらき方」を探っていきます。レポートvol.1では、20代以上の大人1万人を超える大規模調査から見えてきた、新しい情報を受け入れてもらうためのポイントについてお伝えします。発表者は、メディア環境研究所・森永真弓上席研究員です。
「文字と映像」「外部刺激と自己納得」で見る7つの認知タイプ
現代の生活者は欲しい情報を欲しい時に入手できることから、自分が作り上げた情報圏の中にこもるようになりました。企業主体の情報発信が効きづらい印象もよく語られるようになりました。その一方で、2025年も伝統芸能を舞台にした日本映画や陸上の世界大会、リカバリーウェアのように、個人の情報圏を超えて全く新しく生活者に届き、ヒットする社会トレンドの事例も生まれています。
新しい情報を受け入れる瞬間、人々はその情報圏をどのようにひらいているのでしょうか。今回は生活者がそれまで興味のなかった物事について、新たな情報を知り、興味を持ち、行動に至るまでに絞った情報行動を掘り下げる調査を実施しました。
まず「新しいことを知るきっかけとなるメディア」についてのアンケートでは、1位がテレビ、2位がニュースサイト、3位がリアル会話という結果になりました。これは世代や性別で分析しても、それぞれで大きな差はないようでした。しかし、生活者の情報行動が分散している実感もまたあります。では、差を生んでいる要因が他にあるはずです。

そこで注目したのが、生活者の39項目の「情報行動に関わるクセ」です。例えば、「第一印象や直感で好き嫌いや善し悪しを判断する人」と「理由や背景まで説明されないと納得できない人」、あるいは「同じ情報を得るなら文字の方が楽な人」と「映像の方が楽な人」では、性質が大きく異なります。
39の情報行動のクセのデータを見ていく中で、生活者を分類する時に大きな傾向の差として出やすい2軸が浮き上がってきました。
縦軸は、情報収集において「文字優先」か「映像優先」か。そして横軸が、メディアや口コミの情報を受けてすぐ自身の行動や生活に取り入れる「外部刺激優先」か、じっくり考えて納得したうえで行動をする「自己納得優先」かです。
この2軸でクラスター分析をかけたところ、7つの認知タイプが出現しました。

1:誰よりも情報を先取りしたい「先進先取活発」タイプ
シェア9.6%の「先進先取活発」タイプの認知メディアは、ショート動画やSNS、店頭など。とにかく新しいトレンドが気になっており、情報を積極的に取りにいき、全方位的に情報を拡散。まだ世間に知られていないことを他者に勧めます。

<生の声>
・【立体型シール書籍】「TikTokでカップルチャンネルの人が取り上げていて、すごくリアリティがあり気になった」(50代女性)
・【リカバリーウェア】「中年になって体が疲れやすくなり、いろいろ試している」(40代女性)
誰よりも情報を先取りできることを大切にしているため、新しいトレンド情報として発信すれば受け取ってもらいやすく、SNSやインフルエンサーマーケティングが特に有効です。また、広告や生成AI、推しを起点にしたコミュニケーションも効果的です。
森永 上席研究員
SNS上で情報の拡散に協力してくれるタイプなので、素材と機会を提供し「最近これが来てるよ」感を一緒に作っていけるのがポイントです。
2:みんなの気配を読んで行動する「空気読み同調」タイプ
7タイプ中シェア最大21.3%の「空気読み同調」タイプは、簡潔なものを優先するため長文はあまり読みません。メディアから情報を受け取るときも受動的で、刺激に対して反応するものの、様子見をします。自ら口コミ情報を発信することは少ないですが、シェアやいいねのリアクションが多いので拡散のきっかけを作ってくれるタイプでもあります。

<生の声>
・【2025年にヒットした日本映画】「歌舞伎に興味はなかったが、これだけみんなが勧めているから見てみたいなと思った」(50代男性)
・【2025年の大型国際博覧会公式キャラクター】「最初は魅力を感じてなかったけど、見慣れると愛嬌があるように感じ、グッズも欲しくなりました」(30代男性)
マスメディアやSNSの情報を素直に受け取るため、「そろそろ流行が来ていますよ」とトレンドの変化を示すことが、行動のきっかけになることも。また、インフルエンサーや推しからの刺激、若年層にはライブ配信やコミュニティアプリ、音声配信なども効果的です。
森永 上席研究員
社交的な行動が好きなので、「人と一緒にできること」を提供するとネット上で口コミを増やしてくれるタイプです。
3:テレビ発からネットで確認「メジャー確信反応」タイプ
シェア18.1%の「メジャー確信反応」タイプは、テレビなどから情報を得て行動を起こした後、ネットや口コミの盛り上がりも忘れずチェックしています。認知メディアはテレビ番組とテレビCMが多く、ランキングやトレンド情報にも敏感。7つの中では、かなりキャンペーンの親和性が高いタイプといえます。

<生の声>
・【男性アイドルグループ】「テレビの音楽番組の切り抜きで、パフォーマンス途中に転んでいるメンバーがいて、気になってYouTubeを見るうちにファンになった」(30代女性)
・【2025年にヒットした日本映画】「3時間の映画なのに、いろんな人が見たいと言っていたので興味を持った」(50代男性)
テレビや映像が主な情報源で、写真やサムネイルなどの効果的な刺激、画像中心のSNSやショート動画に反応します。また、キャンペーンやタイムセール、リアル会話が行動につながる場合も少なくありません。
森永 上席研究員
友人の紹介制度など周囲を誘いやすい仕掛けがあると、情報拡散のやる気を増やしてくれるタイプと言えそうです。
4:受動的でわかりやすさを好む「テレビ安心追従」タイプ
シェア15.3%の「テレビ安心追従」タイプは、圧倒的に映像優先で、複数のメディアから情報を得ているものの、反応はゆっくり。テレビは日常的につけっぱなしですが、文字メディアに触れる機会は少なめ。受動的な情報摂取を好むため、情報量が多いメディアは苦手です。

<生の声>
・【2025年の国際スポーツ大会】「開催が近づいて、情報番組で目に触れる時間が長くなり、いろんな選手の魅力を知ることで楽しみになった」(40代女性)
・【2025年にヒットした日本映画】「ニュース番組やワイドショーで、コメンテーターやゲストが感情を込めて語っていたので気になった」(40代女性)
このタイプにはテレビ番組やCMを通して接触回数を増やし、メジャー感や安心感を伝えていくことが効果的です。また、好き嫌いを直感的に判断できるように、短く分かりやすいビジュアルで要点を届けることも重要です。「みんなに人気」「SNSで話題」「ランキング」など、人気であることをシンプルに伝えるのがいいでしょう。
森永 上席研究員
知人やリアル、口コミの輪に所属しているので、テレビ番組やCMで知った情報を広げやすいよう、メディア側がサポートしてあげると効果的です。
5:納得できるまで情報を取る「精読論理考証」タイプ
シェア12.8%の「精読論理考証」タイプの情報行動は、圧倒的に文字優先で、自分自身が納得できるまで検証します。紙メディアや書籍もじっくり読むタイプで、能動的に情報を取りにいき、一次情報や根拠・出典を重視します。基本的には独立スタンスで、知人の話題にも、「それはね……」と情報を解説する役割を担います。

<生の声>
・【立体型シール】「ネットニュースでメーカーの記事を見て、膨らみ部分とベース部分の印刷により立体感を増しているといった工夫を知り、興味を持ちました」(50代男性)
・【女性アイドルグループ】「オーディションのコンセプトが、今までNOを突きつけられていた女性の物語であることに感銘を受けた」(20代女性)
このタイプには、事実・信頼できるデータをニュースや公式テキストメディア、書籍などで伝えるのが効果的です。たとえ長文でもじっくり読んでくれるので、詳細な背景をWebサイトに掲載することも有効でしょう。テレビや長尺横型動画などで考察を見ることもあります。
一方で、「精読論理考証」タイプは検証力が高いため、提供された情報で納得できない場合は大きく反発をすることも。
森永 上席研究員
誠意ある情報を詳細に提供すれば、強力な味方になってくれます。メディア側からきちんと情報を伝え、協力関係を築きたい人たちと言えます。
6:流行やメジャーを好まない「独自没入納得」タイプ
シェア17.1%の「独自没入納得」タイプは、圧倒的に映像優先で独自納得を優先します。認知メディアはYouTubeなどの横型動画が多め。ただし、マーケティング・流行・メジャーなものを避ける傾向があり、情報拡散もあまり行いません。

<生の声>
・【生成AI】「英会話をテーマにしたYouTuberが、生成AIを使った英会話学習の企画をやっていて興味を持った」(50代男性)
・【2025年の大型国際博覧会】「ライブカメラのチャットを見ていたらパビリオンの個性が見えて、自分に合う展示がどこか分かってきた」(30代女性)
あまりメジャーではない独立系個人配信者による事実やデータ、リアルな当事者の話など、プロモーション的でない横型動画が興味のきっかけになります。「自分しか知らない」「みんなはまだ気づいていない」という感覚が、情報圏をひらいてもらうきっかけになるでしょう。ニュースサイトや公式サイト、Web記事も起点になります。
一方で、「独自没入納得」タイプは反メジャー意識が強いため、施策によっては反発されてしまう可能性が高いです。そして彼らは決して少数派ではなく、人数ボリュームが大きめであることも覚えておきたいところです。
森永 上席研究員
アプローチが難しいタイプですが、特別な情報を提供して納得してもらえれば、情報発信に協力してくれる場合もあります。
7:身近な人の体験談が必要な「省エネ共感」タイプ
シェア5.7%の「省エネ共感」タイプは、文字・映像メディアからの刺激には低反応で、自分で検討することも少なめ。新しい情報を得るためのメディア活用も全方位的に少なく、身近な人の具体的な体験談を聞いてようやく関心が動くタイプです。

<生の声>
・【生成AI】「今までは必要ないと思っていたけど、知人との会話がきっかけで興味を持った」(30代男性)
・【2025年にヒットした日本映画】「家族との会話では気にならなかったが、職場の会話で評価を聞き、興味を持った」(50代女性)
このタイプの場合、知人・家族の日常会話に情報が乗ることが必須です。内容も、その機能や効果よりも「へぇ~」と言えるような話題、物語が効果的。加えてこのタイプは「取り残されたくない」と感じる傾向があるため、友人や知人、家族と「同じ話題で盛り上がりたい」気持ちになってもらうのも重要です。話題のネタを提供することや、参加型施策も効果があるかもしれません。
情報が届くまでにとても時間がかかるため、その過程で嫌われないことも重要。またカジュアルに見られるショート動画は効果的です。
森永 上席研究員
情報行動に関してとにかく非積極的で、「最後に口コミが届く人たち」とイメージしていただくと分かりやすいでしょう。
※掲載している情報/見解、研究員や執筆者の所属/経歴/肩書などは掲載当時のものです。