若手!クリエイターが挑む!ソーシャルテーマVol.22
等身大の発想でたどり着いたアイデアと言葉―「♯浮かれ服バトン」

クリエイティブの力で世の中に新しい視点をもたらし、社会課題の解決に挑む博報堂の若手メンバーにフィーチャーする連載企画。今回ご紹介するのは、「#浮かれ服バトン」。2025年のACCヤングコンペで準グランプリを受賞したアイデアはどのように生まれたのか?小野香緒里、一瀬知恵、千田桃歌に話を聞きました。

「#浮かれ服バトン」とは
第6回「ACC YOUNG CREATIVITY COMPETITION 2025」において準グランプリを受賞した企画。クライアントは株式会社ボーダレス・ジャパンのエシカルブランド「LIB」。若者の心を掴むエシカル消費を広めるアイデアという課題に対して、旅行のために新調したファストファッションを結局捨ててしまうというインサイトに対し、つい買ってしまった服を「浮かれ服」と名付け、同世代で楽しくシェアし、バトンのように循環させていく仕組みを考案した。

期限ギリギリでたどり着いた「浮かれ服」というネーミング

―始めに、この3人で「ACC YOUNG CREATIVITY COMPETITION 2025」に応募したきっかけについて教えてください。

一瀬
まず私が「ACCヤングコンペ」に一緒に挑戦しないかと同期の小野に声を掛け、その後、キービジュアルづくりも万全にしたいと考え、同じく同期でデザイナーの千田にも声を掛け、チーム結成に至りました。

小野
「若者の心を掴む!アパレルにおけるエシカル消費を広めるアイデア」という課題を見た瞬間から、堅苦しいものではなくて、何かかわいいもの、楽しいもの、そして何より自分たちがワクワクできるものにしたいよね、という話を3人でしていました。気の置けない仲間同士なので、アイデア出しも雑談ベースで、のびのびと議論することができました。

―課題発表から一次選考までの一カ月間で、どのようにアイデアを絞り込んでいったのでしょうか。

小野
現業では千田がデザイナーで一瀬がCMプラナー、私はアクティベーションプラナーなのですが、案が決まるまではそれぞれ職種に関係なく、各自さまざまなアイデアを持ち寄りました。準備期間はひと月ありましたが、決め手に欠けるまま期限が近付いていき、最後の方はオンライン会議でも沈黙が続くことが多かったですね(苦笑)。

一瀬
気づけば提出前日で、「何かしらちゃんと提出したい!」という状況になったときに、そういえば私は旅行にいく直前に服を爆買いすることがあるなと思い立ったんです。でもそんなタイミングで買う服は奇抜なものも多いため、日常では着ることがなく結局捨ててしまう。そんな、若者にありがちな非エシカルな消費体験をフックにできないだろうかと2人に話してみたところ、すごく共感してくれて。そこで、旅行というモーメントにスポットを当てることにしました。

―「浮かれ服」というネーミングはどのように誕生したんでしょうか。

千田
旅行というモーメントに絡めて、空港に服を寄付するボックスを設置するなどのアイデアもいろいろと出てきたんですが、まずは、旅行の際につい買ってしまう服そのものに名前をつけることこそ、モーメントとして最大に機能させるために必要なことではないかと考えました。

一瀬
名前をつけることの方が大事だという、千田の指摘は大きかったです。「旅行ってワクワクするし、浮かれている状態で買っちゃうから、浮かれ服がいいんじゃないか」という案が出てきて、感覚的にもすごくいい名前だと全員納得したんです。期限当日の朝に起きた、奇跡的な展開でした。

―「バトン」のコンセプトが生まれた経緯も教えてください。

一瀬
「浮かれ服」というネーミングを考案するまではよかったんですが、それだけだと企画意図が伝わりにくいと考えました。私たちがこの企画で目指したのは、「浮かれ服」が次の人につながれていき、結果的に無駄がなくなるというゴールです。なので、次につなげるという意味を「バトン」という言葉にこめ、「#浮かれ服バトン」として目的とセットで世の中に出していくべきだと考えました。

小野
そして生まれたのが、「浮かれ服」を集めた店を渋谷など都心の街中にポップアップで出店し、安価でレンタルできるようにするというアイデアです。

それぞれの服には、もとの持ち主がどんな意図で買った服なのかを記した手書きの推しタグがついているので、バトンが回された分だけタグが増えていき、それを読む楽しさも生まれます。旅のために買う服だけにとどまらず、旅先で買う服や、結婚式やテーマパーク、同窓会などのオケージョンに合わせて買う服なども「浮かれ服」と見なして、幅広く展開することも可能と考えました。

―ビジュアル面ではどんな点にこだわりましたか。

千田
エシカルがテーマのデザインは、ナチュラルなトーンだったり、意識の高さが感じられるような、シリアスなイメージに寄りがちです。サービスの内容自体もなんとなく堅めで、若い世代が直感的に好むものとは距離があるのが現状です。なので「#浮かれ服バトン」では、若者が直感的にいいと思えるような、従来のエシカルらしさとは異なる、明るくポップなトンマナを意識してつくりました。

一瀬
エシカルがお題ではありつつも、いかにエシカル感を消すかというのは、最初から私たちの中で一貫していた考え方でしたね。

小野
私たち自身、最初にお題を見たときになかなかすんなりと頭に入ってこなかったんです。実際、「環境のために無駄に服を買わないでね」なんてまじめなトーンで言われても、多くの人は買ってしまいますし。せっかく私たちと同世代の若者がターゲットだし、千田の得意とする、かわいらしくてポップなデザインを活かしてほしいというのもあって、従来のエシカル文脈とは異なる切り口のビジュアルで、お題に応えられたらと考えました。

等身大の明るいノリで演じきり、熱量を伝えたプレゼン

―一次審査通過後のプレゼン審査では、どんなことを意識されましたか。

小野
審査員の方々に「これなら動きそうだな」と思ってもらうために、企画の説得力と、熱を持って伝える工夫が必要でした。内容を淡々と話しても企画のトーンに合わないので、まずは私たち自身が浮かれて(笑)、軽快なトーンでプレゼンすることにしました。等身大の明るいノリで、自分たちで会話のシーンを再現するなど、小芝居も交えながらプレゼンを行いました。とはいえ私たち自身がまだ現業でもプレゼン慣れしていないということもあり、不慣れな中なんとか乗り切ったという感じです(苦笑)。

一瀬
どうロジックを組み立てて見せていくか、スライドの順番も非常に苦戦しました。何度も順序を変えて作り直したのを覚えています。プレゼンに驚きをつくるため、「浮かれ服」というアイデアの核となるネーミングをどのタイミングで出すかは、特に念入りに考えました。

小野
一瀬は特に、普段CMプラナーとして動画の構成や流れをよく考えているからか、プレゼン構成を考える際も頼りになりました。結果的に、本当に効果的な、よりよく伝わる流れにできたのではないかと思います。

―もし今回のアイデアが実際に社会実装されるとしたら、どのような効果が期待できるでしょうか。

一瀬
家に眠っている「浮かれ服」に気づいたり、旅行先で浮かれ服を買おうとした時にふと思い出してもらったりすることで、非エシカルな消費行動の抑止につながるというのが、もっとも期待している効果です。

千田
エシカル文脈だとどうしても「我慢」が語られがちですが、私たちは、服を買うこと自体は否定していなくて、買った先に誰かに届けるための仕組みがあればいいと考えています。推しタグの仕掛けがあることで、あえてLIBを通じて買いたくなる気持ちも醸成できるし、拡散もしやすくなると思います。

一瀬
実際に審査員の方にも、「推しタグによってきちんと価値転換ができている」とおっしゃっていただきました。一般的には一度誰かが着た服の価値は下がってしまいますが、この企画の場合、着た人が増えるほど、新たな価値が生まれる。推しタグに書き記すことで、「自分の思い出の1ページをタグとして加えていけるという発想が新しい」と評価いただけたのは嬉しかったですね。

小野
「浮かれ服」という、企業主体の言葉ではなく、アパレル業界全体でも活用できる言葉を生み出せたのもよかったと思います。世の中の普遍的なインサイトを捉えたからこそ、今回のクライアント企業に限らず、概念として単独歩きし、一般化されうる言葉を生み出すことができた。インフルエンサーなどを通じて、この概念を広く社会にいきわたらせることができるのではないかと思います。

ちなみにプレゼン後の質疑応答では、社会課題解決だけでなく、クライアントであるLIBさんにどのように寄り添えるかといった点についても質問を受けました。確かに「浮かれ服」は普段のLIBさんのトンマナとは異なるため、親和性が感じられにくかったかもしれません。でも、だからこそ若者に対しては、「LIBはこんな取り組みをやっている企業なんだ」という、ポジティブな意外性をもって受け止めてもらえるのではないかと考えています。

生活者の本音を捉え、行動変容を生む広告の役割

―改めて、社会課題の解決にクリエイティブはどのように貢献できるとお考えですか。

千田

社会課題に対して真っ向から立ち向かうのではなく、皆がうっすら思っているけど、まだ言語化されていないようなことを探し出し、言語化し、多くの人の興味関心を引くような方法で伝えていくのが、広告会社ができることなのかなと思います。また、広告会社ならではの「人を巻き込む力」で、熱量を持って社会課題にあたっていくことで、本当に人や社会を動かすことにつながるのではないかなと思います。

一瀬
世の中、エシカルに関する施策はたくさんありますが、「きれいごと」にとどまっていると、なかなか人に動いてもらえないと思います。何より私自身、「エシカル消費をしましょう」と言われてもやっぱり動けないんですよね。性善説に頼るのではなく、生活者の本音のようなものを捉えて、行動変容を促すのが広告の役割だと思っていますし、今回の企画でも嘘のない視点として盛り込めたのではないかなと思います。

―今後頑張りたいことや、将来の展望についても教えてください。

一瀬
私はCMプラナーではありますが、アクティベーションや体験も含めて、トータルでプラニングできるようになれたらと思っています。そしてそれを、自分の考えた動画企画によって世の中に広げていけたら嬉しいです。そういう意味で今回の企画は、アイデアやコピーだけでなく、統合的な視点で施策を考えるいいトレーニングになったと思います。

千田
さまざまなアイデアに果敢にチャレンジできるのがコンペの面白さだと改めて感じました。ぜひ現業においても、さまざまな制約を乗り越えて社会実装できるような企画をつくっていけたらと思います。

小野
どんな施策でも自分が当事者であることを常に意識し、「自分だったら動くかな」を考えるようにしていますし、それこそが博報堂が大事にしている生活者視点だとも思います。こうすればバズるだろう…ではなく、若者がターゲットならば、「うちの弟だったらどう思うかな」「同級生だったあの子はどうかな」と具体的に思い描くこと。そのうえで、商品の先にある生活や、生まれるであろう行動を意識して、現実味のある嘘のないプラニングを行い、社会に広めていけたらいいなと思います。

※肩書は取材当時のものです

一瀬 知恵
博報堂 クリエイティブ局 CMプラナー

2024年入社、千葉県出身。生活者にとって、広告ではなく、いいものを見たと記憶に残るものをつくりたいです。
主な受賞歴:朝日広告賞グランプリ、 ACC YOUNG CREATIVITY COMPETITION 準グランプリ

小野 香緒里
博報堂 クリエイティブ局 アクティベーションプラナー

2024年入社。神奈川県出身。ブランドと商品愛を第一に、生の声でワクワクを作れる企画を心がけています。
主な受賞歴:ACC YOUNG CREATIVITY COMPETITION 準グランプリ

千田 桃歌
博報堂 クリエイティブ局 デザイナー

2024年入社。福島県出身。世の中が明るくなるようなデザインと企画を目指しています。
主な受賞歴:カンヌライオンズ国内予選デジタル部門ゴールド、 ACC YOUNG CREATIVITY COMPETITION 準グランプリ、グッドデザインニューホープ賞

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