ゲームセンターの景色を変えた異色のクレーンゲーム|Hakuhodo Showcase Vol.05「TOFT」

博報堂が手がけた革新的なプロジェクトやクライアント事例を厳選してご紹介する連載「Hakuhodo Showcase」。最新のマーケティング戦略からクリエイティビティあふれるコミュニケーション手法、事業開発、社会実装のケースまで、担当したプラナーやクリエイターによる解説を交えてご紹介します。 第五回は、「楽市楽座」や「アドアーズ」などのゲームセンターを展開するワイドレジャーが、2023年に発表した独自のプライズブランド「TOFT(トフト)」にフィーチャー。アニメキャラクターなど人気IPの景品が並ぶゲームセンターで一際異彩を放つTOFT。九州博報堂の自主提案からスタートしたというそのプロジェクトの狙いとは?

(写真左から)
ワイドレジャー 営業本部 副本部長/リクルーター 川畑孝蔵さん
ワイドレジャー 購買企画本部 景品企画 スーパーバイザー 吉岡靖幸さん
九州博報堂 クリエイティブ局クリエイティブ二部 コピーライター 中村彩乃 

TOFTについて

ワイドレジャーによる、「FASHION・ART・TOY」の3つの要素を兼ねそなえたクレーンゲーム限定のソフトトイブランドのこと。2023年12月から「TOFT Vol.1」を展開するとSNSなどで話題となり、わずか一か月半で全国で完売した。2026年4月下旬には「TOFT Vol.10」がリリース予定で、これまでに約30種のアイテムを展開している。

雑談から課題を見つけ、おもしろい解決策を示してくれる。九州博報堂は「ヒマ」を与えてくれない存在

-ワイドレジャーさんと九州博報堂のこれまでの取り組みについて教えてください。

川畑:九州博報堂さんとのお付き合いがはじまったのは2020年。はじめはCM制作やイベント運営をご一緒していたのですが、そのうち我々の事業課題に応えるさまざまな自主提案をいただくようになりました。「ラクイチ遊び大学」もそのひとつですね。遊びを通じて学べる場を提供しよう、というテーマのWebコンテンツなのですが、猿島にクレーンゲームを置いて、お猿さんがクレーンゲームで遊べるかを実験するなど話題化につながるようなユニークな企画にもチャレンジしてもらいました。
日々の雑談から課題を見つけて、それを解決するための企画を次々に提案してくれるんですよ。それがまたおもしろいものだから、ぜひやろうとなる。九州博報堂さんのおかげで、僕らはまったくヒマを与えてもらえないんです(笑)。

-TOFTのプロジェクトも九州博報堂からの提案だったのでしょうか?

川畑:そうですね。これも我々の事業課題から九州博報堂さんが提案してくださった企画になります。クレーンゲームがブームになってしばらく経ちますが、十数年前からアニメキャラクターなど特定のIPに頼った景品展開になっていて、他店との差別化ができない。また、キャラクターに興味のないお客さまの足が遠のいてしまうという課題がありました。
これまでゲームセンターに遊びに来なかった客層にも興味を持ってもらうためにはどうすればいいか、そんな話をしていたときに、営業さんが「FASHION」「ART」「TOY」というキーワードで独自のブランドをつくらないかという提案をしてくださったんです。20代のファッション感度の高い女性をターゲットにしたいという話もしていたので、これはすばらしい提案だと思ってすぐにGOを出しました。そこからはローンチまで約半年間。異例のスピードで実現したプロジェクトになります。

「FASHION」「ART」「TOY」。どれにも偏りすぎない新しいジャンルをつくる

-「FASHION」「ART」「TOY」というキーワードに至った経緯は?

中村:学生の頃はゲームセンターに遊びに行っていたけれど、社会人になってからその習慣がなくなってしまった。そんな人を呼び戻すにはどんな企画がいいかを考えたとき、そういった層が時間とお金を費やすのは「FASHION」と「ART」であるという仮説がありました。そこに「TOY」という要素も加えることで、大人からお子さんまで幅広い年齢層に楽しんでいただけるコンセプトになっています。
実は、私がチームに参加したときはすでのこの3つのキーワードが決まっている状態で、まさしく自分がターゲット世代だったんですよね。学生時代はアパレルでバイトをしていてファッションにも興味がありましたし、率直にターゲットに響くコンセプトだなと感じました。

-「TOFT」というネーミングはどのように決まったのでしょう?

中村:ファッションアイテムでもあり、アート作品でもあり、おもちゃでもある。「FASHION」「ART」「TOY」、そのどれにも偏りすぎない新しいジャンルをつくろうという思いを込めて、意味を持ちすぎない記号のような名前がいいと考えました。いろいろなアイデアがあるなかで、英語でぬいぐるみを意味する「SOFT TOY」からアルファベットを抜き出して組み合わせたのが「TOFT」。キャッチコピーも「あると、ちょびっと楽しくなる。」として、商品を限定するものでなく、可能性が広がる言葉にしています。

アイデアはナマモノ。博報堂の生活者発想とワイドレジャーのスピーディな意思決定が鍵になった

-座れない椅子やサボテンなどさまざまなモチーフがありますが、デザインモチーフはどのように決めているのでしょう?

中村:まず企画当初から「目・鼻・口のついたキャラクターにはしない」というこだわりがありました。アニメIPなど人気のあるキャラクター景品はたくさんありますので、それとはまったく別のジャンルをつくるのが大前提。そのうえで、プロダクトデザイナーやチームメンバーでアイデアを出し合いながらモチーフを決定。私を含めてターゲット層に近いメンバーが多いので、「これなら家に置きたい」「友だちが持っていたらかわいい」というように、博報堂のフィロソフィーである「生活者発想」を軸に考えていきました。
2026年3月時点でVol.9までリリースしているのですが、そのとき「これだ!」と思ったデザインをタイムリーに発表できるのがひとつの強み。それはひとえに、ワイドレジャーさんの意思決定の早さのおかげです。常に、走りながらつくっている感じですね。

川畑:我々はフットワークの軽い会社なのでね(笑)。こういったアイデアはナマモノなので鮮度が大事。直感を大切にして、だめならまた次の手を考える。そういう気概でTOFTそのものもスタートしています。

Vol.1が1ヶ月半で6,000個完売。ゲームセンターに来なかった層からも支持された

-実際の反響はいかがでしたか?

吉岡:私はTOFT発売当時店舗担当をしていたのですが、お店のなかでいい意味での「違和感」をつくり出せていたと思います。販売実績としても、はじめに出したVol.1のシリーズが約1ヶ月半で計6,000個を完売。若年層を中心に、並んででもとりたくなるアイテムとして話題になりました。やはり、クレーンゲーム発のブランドというこれまでにないアプローチが支持されたんだと思います。

中村:Instagramのフォロワーも1.5万人まで伸びて、発売日に必ずお店に足を運んでくださる方や、これまでのTOFTコレクションを並べてアップしてくださる方など、着実にファンが増えていると感じます。
これまでクレーンゲームをやったことがないけど、TOFTがほしくて店舗を調べて来た、という方もいらっしゃいますし、大阪でポップアップをやったときは、わざわざ広島から来たというお客さまにもお会いしました。

-そういった感想を伺って、ワイドレジャーさんとしてはいかがですか?

川畑:狙いどおりですね(笑)。これだけクレーンゲーム専門店が乱立するなかで、ほかにはない強みを持てていると思います。我々はこれまでも「楽市楽座」のような明るく清潔な店づくりを通じて、ゲームセンターのイメージをポジティブなものにすることができたと自負しています。つぎはさらに一歩進んで、これまでアミューズメント施設に来なかったお客さまをお呼びしようというフェーズ。その実現のためにもTOFTは大きな役割を果たしてくれていると思います。

今後も、ゲーム機に頼らないアミューズメント施設として存在感を示していきたい

-TOFTとして、またワイドレジャーさんとして、今後の展望についてお聞かせください。

中村:これまでも商業施設内でポップアップイベントを行ってきましたが、今後はカフェのなかにTOFTのクレーンゲームを置いたり、「ゲームセンターに行かない人」がいる場所でTOFTが楽しめるようになったらいいなと思っています。
あとは、海外の方からお問い合わせをいただくこともあるので、いつかは海外展開も視野に入れて活動したいですね。TOFTのキャラクターは言語不要でかわいいと感じていただけるものだと思っているので。

吉岡:今後はクレーンゲームの景品とは別のラインでTOFTのグッズを販売するという構想もあるんですよね。

川畑:そうですね。我々はゲームメーカーではありませんので、ゲーム機そのものをつくることはできません。しかし、TOFTのようなアイデアでお客さまをお呼びすることはできる。今後もゲーム機に頼らないアミューズメント施設として存在感を示していきたいですし、「TOFTワールド」のような施設をつくって、その世界観を楽しんでいただくような展開も考えられると思います。

-さいごに、ワイドレジャーさんにとって博報堂グループとはどんな存在ですか?

川畑:もうワイドレジャーの一員だと思っています。クライアントと広告会社という関係性ではないですね。とにかく有言実行で、常にお客さまの気持ちになって提案していただけることが何より信頼できるところ。プロジェクトごとに最適な人材をアサインしていただき、それぞれの人が、それぞれのチームの一員になってくれています。
今回TOFTという新しい取り組みをしたことで、会社のなかでも新境地を開くことのハードルが下がったという実感があります。現在も、ほかの新規事業を九州博報堂のみなさんと進めているところ。ワイドレジャーが発信する新たなコンテンツにご期待いただければと思います。

※肩書は取材当時のものです

川畑 孝蔵
ワイドレジャー 営業本部 副本部長/リクルーター

1996年入社。7年間の店舗経験を経て、2003年より本社勤務となる。エリアマネージャー、店舗開発部などを歴任し、2026年3月より営業本部副本部長に就任。趣味はゴルフ。

吉岡 靖幸
ワイドレジャー 購買企画本部 景品企画 スーパーバイザー

2017年入社。九州、関西、関東での店舗勤務経験。2024年10月より本社勤務、景品企画としてプライズのOEM企画や景品商談を実施。趣味は、映画鑑賞。

中村 彩乃
九州博報堂 クリエイティブ局 クリエイティブ二部 コピーライター

2021年九州博報堂に入社。旧統合プラニング局(現マーケティング局)に配属後、二年目よりクリエイティブ局に複属。ブランディングや商品開発など幅広い領域を担当。大学時代は黒澤映画を研究していました。

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