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広告で“好き”を仕事にするメソッド
博報堂人物図鑑 第6回/TBWA\HAKUHODO 統合マーケティングディレクター 赤星貴紀

2023.03.13
上司、先輩に限らず、部下や後輩であっても、「この人のここが素晴らしい!」と、リスペクトしている人が社内には必ずいるもの。本企画は、博報堂社員だからこそ知っているオススメしたい博報堂のスゴイ人をリレー形式で紹介していきます。
第6回の推薦者は、前回登場したTBWA\HAKUHODO アシスタントアカウントエグゼクティブの徳永二紀。推薦するのは同じくTBWA\HAKUHODO 統合マーケティングディレクターの赤星貴紀です。

■徳永からの推薦文
赤星さんとは、同じTBWA\HAKUHODOでお仕事をさせていただいています。赤星さんのすごいところは、関わるプロジェクトをただやり切るので満足せず、関係者にとって心に残るような面白くワクワクするものを創り出せるところだと感じています。
クライアントワークであったとしても、ご自身が「心からやりたい!」と思えるプロジェクトにできる能力を持っている方だと思います。赤星さんの関わるプロジェクトってなんだか面白そうだな〜と思って観察していると、まず赤星さんご自身が楽しそうなんです。だから、同じプロジェクトのメンバーにとってもワクワクするプロジェクトになっていて、チームのパフォーマンスも上がるので素敵なアウトプットに繋がっているのだと感じます。
さらに赤星さんの能力を観察していると、世間を捉える目が鋭く的確な戦略立てができるストプラ的能力と、そこからエグゼキューションまで担うクリエイティブ的能力を兼ね備え、両方の能力をフレキシブルに操っています。なので、赤星さんの肩書きはプロジェクトによって変わるんです。肩書きに縛られないこういった動き方ができる方がいらっしゃるから、TBWA\HAKUHODOは型破りでディスラプティブなアウトプットができているんだと思い、密かに観察して感心させられておりました!
このような能力を持ちながら、周りに親しまれるパーソナリティも兼ね備えているところも赤星さんの魅力です!私も、赤星さんみたいに楽しい仕事を創り出せる人になれるよう精進したいです!!

■遠回りしてでも諦めたくなかった、ストプラの仕事

——今回は前回の徳永さんからTBWA\HAKUHODO繋がりということで、統合マーケティングディレクターの赤星貴紀さんのご登場です。赤星さんにとって徳永さんはどんな後輩でしょう?

赤星貴紀(以下、赤星):彼女は入社が2021年とまだ若いですが、すごくいいキャラクターですよね。最近の若い人って、結構クールすぎるというか素っ気ない人が多い印象なんですが、彼女は自分からオープンに話しかけてくれるのでとても話しやすいですし、人懐っこい魅力を持っていると思います。

——そんな徳永さんから、「赤星さんは常に楽しそうに仕事をされている」というメッセージをいただいています。今回はその秘訣を紐解いていきたいと思うのですが、まずは簡単に広告業界に入られた経緯を伺えますか?

赤星:僕、2010年入社なんですが、08年に新卒で一度博報堂を受けているんです。大学生で就活をしていた当時は、なんとなくマーケティングの仕事がしたいな、と思っていろんな企業をみてました。博報堂は、周りでインターンが人気で、当時は自分の中では「CMを作る会社」くらいの認識しかなかったんですが、その人気の理由が知りたいと思って説明会に顔を出してみたんです。そしたら、自分がまさにやりたいマーケティングをやる会社だと知りました。しかし、時すでに遅しで、当時は業界研究も自己分析もままならず、就活がうまく行かなかったんですよね。それでもどうしても諦めきれなくて、親と相談して大学院にいくことにしました。ちゃんと武器を得てから次は挑みたいと思ったので、大学院でマーケティングをしっかり勉強して再挑戦したんです。

——そこまで「広告の仕事がしたい」とこだわられた理由は?

赤星:僕自身、元々物事をロジカルかつ戦略的に考えるタイプで、ストラテジックプラニングの仕事に非常に魅力を感じていたんです。それに加えて、生い立ちも関係している気がします。僕の父はメーカーで研究開発の仕事をしていた「THE 理系」の人なんですが、モノの良し悪しをスペックだけで語るところがあって。でも、僕は「高くてもカッコいいブランドのがほしい!」っていつも感じていたので、ブランドのイメージとかコンセプトといったものがすごく大事だと思っていて、そういうものを考える仕事に興味を持ったんだと思います。

■ストプラ的な“筋力”だけでなく、営業やクリエイティブの“筋力”も付けられた

——入社されてからは博報堂の第二プラニング局(当時)への配属でした。念願のストプラ職としてのキャリアのスタートですね。

赤星:入社したての頃は、ひたすら調査やリサーチといった分析をやり続けた、ある種の“修業時代”でした。すごく地力がついた時期だったんですけど、メインの担当業務が企業広告だったこともあって、自分の関わったCMで商品が売れたとかって経験がなかなかなくて。それで、ジョブローテーションの際には、自分のプラニングがどうクリエイティブにつながったかとか、それで売上がどう変わったかがわかりやすい仕事のできる部署を希望してその部署に異動をさせてもらいました。

赤星:やっぱり結果がはっきり出る、手応えが実感できる仕事がしたい気持ちが強かったです。担当していた某大手飲食チェーン店の仕事は、数カ月ごとに新商品が出るのでスピード感が求められ、かつ前年に比べて売れた・売れなかったという結果が明確に分かるものでした。コミュニケーションの戦略だけでなく、新商品のコンセプト考案から価格設定まで深く関わって、やっと自分の仕事が世に出たという喜びが感じられた時期でした。クライアントにも週3回ぐらい通っていて、自分の席の後ろでビジネスプロデュース職、いわゆる営業担当者への電話がどんどん鳴っているような特殊な部署だったので、営業的な思考もこの時にある程度身についたと思います。

——そこから2015年〜2017年は統合プラニング局のメンバーとして奔走されたとのことですが、この時代にも新たな気づきがあったのではないでしょうか。

赤星:統プラ(統合プラニング局・当時)はクリエイティブ職が多い部署でした。そこに5人くらいしかいないストプラの一番若手として入ったので大変でしたが、ここでクリエイティブの感覚を養えたことは、今の自分にとって大きな糧になっていると思います。

実際、当時かなり忙しい大御所のクリエイティブディレクターと仕事をしている時に、僕も自分なりに「この戦略なら、こういうクリエイティブの部分に合うと思います」と意見をしていると、「それも企画書に書いておいて!」とお願いされるようになって。徐々にいろんな意見を言えるようになってきたら、気づくとプレゼン資料のCM案のトビラ部分まで書くようになっていました。そんな経験があったからこそ、「『アイデアを出す』というよりも『良いアイデアを選び・磨く』のがクリエイティブ・ディレクションなんだ」という学びが得られました。そして、それがストプラとも地続きの領域であるんだ、と感じることもできたんです。

■好きを仕事にするための、自分流の“いろは”

——2017年からは、現在所属のTBWA\HAKUHODOにいらっしゃっていて、赤星さんの肩書きを拝見すると「統合マーケティングディレクター」とあります。この肩書きは珍しいと思うのですが。

赤星:そうですよね。実はTH(TBWA\HAKUHODO)社員の職名は博報堂とは連動していないので、自分の働き方を的確に表現できる肩書きが作れたらと思って、自分で考えて人事に相談して決めたものです。データや分析などに基づいてロジカルに戦略を組み上げる、ストプラの領域を軸に置きつつも、よりエグゼキューションに戦略を落とし込むところまで踏み込んでプラニングするのが僕のスタイルなので、それを表現して「統合マーケティングディレクター」としました。これまでの経験も活かしつつ、コミュニケーションに閉じずに、4P全体で有効な打ち手を考えていきたいという思いも込めて統合「コミュニケーション」ではなく「マーケティング」としています。

2019年にはアジア最大の広告専門誌『Campaign Asia-Pacific』が主催する「Agency of the Year 2019」において、Japan/KoreaのStrategic/Brand Planner of the Yearを受賞した

——なるほど。赤星さんにとってTBWA\HAKUHODOはどんな場所でしょう。

赤星:赤坂の博報堂本社とは違って、あらゆる職種がぎゅっと詰まった場所ですね。社員数も500人ほどの規模感なので、すごく小回りが効くし、身動きも取りやすい。そんな環境なので、自分のやりたい仕事をどんどん提案していって、新しい仕事を作ったり、自分で動かしたりできるようになってきたと感じます。

——そんな働き方が、徳永さんもおっしゃっていた「赤星さんの常に楽しそうに仕事をしている姿」に紐づく気がします。

赤星:もちろん仕事なので、なんでも自分がやりたいことばかりできるわけではないですが、何かしら、仕事を自分の興味関心や趣味に結びつけるチャンスをいつも狙っています。

——趣味など、自分の好きなことを仕事に結びつける…一見難しそうなことですが、実現させるために心がけていることはありますか。

赤星:前提としては、どんな仕事でもプロとして責任感をもって仕事に向き合うことが大事だと思っています。そうして、周りの人からの信頼感というベースをしっかり作った上で、まずは社内外にあるいろいろな業務・ビジネスのシーズにアンテナを張っています。自分が関わりうる業務の種が多ければ多いほど、自分の好きなことと重ね合わせられるチャンスは増えますから。そうして、仕事に自分の好きなこととリンクできそうな要素を見つけられたら、次に提案につながるアイデアはないかを考える。こんな順番で考えていますね。

■好きなことを「好きだ」と言い続けよう

——実際にそうして仕事に繋がった例はありますか?

赤星:元々サッカーが大好きだったのですが、そうしたらTHにサッカークラブの仕事があると教えてもらって。しかも、自分がずっと応援しているチームだったので、アピールをしまくってプロジェクトに入れてもらいました。それからはもう、自分がやるべきだと思うことはどんどん提案していきました。特にコロナ禍では、従来のようにスタジアムでスポーツ観戦を楽しめなくなる中で、オンラインでの新たな観戦体験・ファンコミュニケーションを作ろうと、配信プラットフォームに自主提案を持ちかけて実現させたこともあります。また、最近ではまだビジネス化には至っていないのですが、とあるクライアントの離島プロジェクトにも参加させてもらっています。これも「島への旅が好きだ」と周囲に話している中で、チャンスをいただきました。

——そう考えると、「好きだ」と言い続けることも、好きな仕事をするきっかけ作りになりますね。

赤星:まさしくそうだと思います。言い続けておくと、ふと業務が降ってきたときに「じゃあこれは●●さんに」と声をかけてもらいやすくなると思います。ただ、やっぱり仕事なので中途半端な気持ちでは向き合わないことも大事ですね。先の離島プロジェクトでも、ビジネスになる確証がないからこそ、自分で現地の方にアポを取ってヒアリングをしたりフィールドワークをしたりして、現地住民の実態を徹底的に調べ上げるなど、自分としてできることをとにかく頑張りました。本当に自分がやりたいことだったら、人任せにせず、自分から動かしていくことを常に意識しています。

だから、そこまで熱を持って取り組んだ仕事がちゃんと形になった時はすごく嬉しく、やりがい感じます。自分の戦略を基に、それに則ったアウトプットが世の中に出て、反応があったり売れたり。これこそ、広告業界に身を置く醍醐味なんじゃないかと思います。

■広告会社で働く楽しさをもっと感じてほしい

——今回は赤星さんの歩みや、仕事への哲学について伺ってきましたが、最後に今後の目標などお聞きできればと思います。

赤星:できることなら、自分のように好きなことを仕事につなげる働き方ができる人をもっと増やしたいですね。広告会社に入社する人は、多少ミーハーな人が多くて、「自分の好きなことが仕事になったらいいな」という思いもあると思うんです。でも、実際は自分の好きではないことや関心のないこともやらないといけないし、昔に比べるとデジタル領域の仕事が増えたり、PDCAをしっかり回すような複雑で大変な仕事も増えてきているのは事実だと思います。

それでも、いろんな会社や業界を知れて、繋がれて、時には自分の好きなものも仕事にできるというのは、広告会社ならではの変わらない良さなんじゃないかと思っています。それを体感できないまま辞めてしまう人もいるのは少し残念だなと思っていて。だからこそ、“ロールモデル”っていうと少し言葉が大きすぎますが、自分のような働き方を若い人たちもどんどんできるようになればと思っています。そのためにどういう体制を作っていくべきか考えることも、僕ら世代の役割なんだと思います。

<コラム>
▼仕事よりも夢中かも…「私、いまこれにドはまりしてまる」というものを教えてください!
サッカーやフットサルをずっと続けているのですが、時間の空いた平日にふと参加する「個人フットサル」にも楽しさを感じています。これは、固定のチームではなく、その時々に集まった見ず知らずの人だけでチームを組んでプレーするのですが、ここでも“分析して戦略を立てる癖”が案外役に立っています。同じチームの人のプレーの癖や動きを観察していると、「この人はこうすればパスをくれる」とか気づけたりするんです。そうして、即興のチームでも連携を引き出して、うまく回り始めると楽しくなってきます。仕事のことを忘れてリフレッシュできる、貴重な時間ですね。

取材・執筆=田代くるみ(Qurumu)、撮影=杉能信介

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