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アフターコロナの消費行動(5)/内濱大輔(連載:アフター・コロナの新文脈 博報堂の視点 Vol.15)

2021.09.08
#生活総研#生活者調査
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、企業や生活者を取り巻く環境はどのように変化したのか。また、今後どう変化していくのだろうか? 多様な専門性を持つ博報堂社員が、各自の専門領域における“文脈”の変化を考察・予測し、アフター・コロナ時代のビジネスのヒントを呈示していく連載です。
第15回は、博報堂生活総合研究所の内濱大輔上席研究員が、「消費行動」の観点から解説します。
※本コラムは、2021年7月15日~21日付の日経産業新聞「戦略フォーサイト」に掲載された寄稿連載(全5回)の最終回です。

Vol.15 アフターコロナの消費行動(5)

博報堂生活総合研究所 上席研究員 内濱大輔

「決めない」という新・合理

新型コロナウイルス渦中においても、フリマアプリやサブスクリプション(定額課金)サービスなどが生活にますます浸透している。今回はその活用から生まれる新しい消費スタイルを論じる。キーワードは「決めない」消費だ。

まずフリマアプリ活用の先端的な生活者として、20代女性Aさんの話を紹介する。

彼女は作家ものの食器を大量に集めており、フリマアプリで5000件以上の売買実績がある。彼女は「合わなかったものは売ればいい。だから失敗するリスクは気にせず欲しいものをどんどん買っている」という。さらに「売買を繰り返すうちに、作家や焼き方などの知識がどんどん増えて楽しい」とも。彼女は買ったものを持ち続けるとは「決めていない」。次々に流動させる消費スタイルにより、生活の質を向上させている。

ここで定量データも確認したい。生活総研の調査(全国の15~69歳)でコロナ禍前の2019年5月からコロナ渦中の2021年6月への変化をみると、「フリマアプリなど売り先があることで買い物がしやすくなった」は34.9%から44.8%へ、「買って失敗だったら売ればいいと考える」は26.5%から33.6%へと増加した。もはや一部の人だけのスタイルではないのだ。

また、「家にものがあふれていると、新たなものを買うのをためらう方だ」は68.3%から73.8%に増えた。コロナ禍の在宅生活を通して、改めて自宅内のものの多さに辟易(へきえき)し、整理に乗り出した人の話はよく聞く。では、もはや特定のものを所有しないサブスクを活用した生活はどうだろうか。別の20代女性Bさんの生活も紹介しよう。

サブスクとは定額でモノ・サービス・コンテンツなどが一定範囲内で使い放題になるサービスで、Bさんはサブスクを家具や洋服など10種類以上で活用している。そんなBさんの消費スタイルは、どれを買い所有するか「決めない」ということなのだ。彼女はサブスクの良さを「身軽でいいし、変わる楽しさもある」と評する。例えばひとり暮らしのBさんだが「ソファもサブスクで今は3人掛けを使っている。2カ月前まで2人掛けを使っていたが、寝転んで電子書籍を読みたいと思って大きいのに替えた」と言う。その時々の生活に最適化できる可変性がこのスタイルのメリットなのだ。

さらに彼女いわく「服のことに頭を使いたくないので、サブスクで借りた服のうち、周りの人から似合うと言われたものだけ買い取っている」。サブスクによって、どれを選ぶか悩みたくないという欲求をもかなえている。Bさんだけでなく、動画配信のサブスクで自分でコンテンツを探すより、おすすめを中心に見る人が多いのも同じことだろう。

何を買い、何を使い続けるのかを「決めない」消費。そこには多くのメリットがあることがわかってきた。さらにコロナ禍に突然見舞われた生活者は未来を予見する難しさを痛感したはずだ。「決めない」ことで生活の可変性を担保することが、今ほど合理的に感じられる時代はないだろう。

企業も商品が買われることをゴールとする発想を見直す必要がある。商品が二次流通やサブスク上で価値あるものとして巡ることや、商品を使用中の人たちのコミュニティーを活性化するなど、足の長い視点が求められる。

内濱 大輔(うちはま・だいすけ)
博報堂生活総合研究所 上席研究員

2002年博報堂入社。マーケティングプラナーとして多様な分野のブランディングや商品開発などに従事。2015年より現職。調査全般の統括や生活者の研究などを担当。共著に「生活者の平成30年史」(日本経済新聞出版)。

▼本コラムで紹介した「消費の新しい潮流」についての研究は下記ページをご参照ください
博報堂生活総合研究所 消費対流「決めない」という新・合理
https://seikatsusoken.jp/shohi2019/
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