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AaaSが創出するイノベーションと、次世代の広告メディアビジネス

2021.08.02
#AaaS#生活者インターフェース市場#生活者データ・ドリブンマーケティング
広告メディアビジネスに革新をもたらす「AaaS」とは。
6月11日(金)に開催された宣伝会議主催のオンラインカンファレンスSIMCにおいて、広告メディア業界のDX推進にはたす役割や、実現する新しい広告・マーケティング活動の姿、今後の展望などについて、独自基盤システムや各種サービスの説明なども交え、AaaSを提唱し推進する博報堂DYグループから詳細な紹介を行いました。本稿では、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ/株式会社博報堂/株式会社博報堂DYホールディングス常務執行役員の安藤元博がAaaSの概要と開発の背景を説明した第1部をご紹介します。

■広告業界に求められる進化:データとシステムの利活用による意思決定の重要性

第1部では、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ/株式会社博報堂/株式会社博報堂DYホールディングス常務執行役員の安藤元博が、AaaSの概要と開発の背景を説明しました。まず、安藤が広告業界の課題として提示したのは、あらゆる産業でDXが進む中で、広告業界のDXは進んでいるのだろうかということ。「テレビとデジタルの評価指標や、バイイングの方法などが別々なので、成果やマーケティング効果にどのように関係しているのかわかりにくいといった意見がよく寄せられます」と、広告主からもさまざまな指摘があると紹介しました。一方で、媒体社やプラットフォーマー、ベンダーから新しいサービスやツールが次々と提供されていることに対しても、個別には有用な進化ではあってもそれぞれのつながりがなく、カオス状態になっている面があるとの指摘。こうした現状を踏まえて、「広告業界こそ抜本的な改革が必要」とし、広告メディアビジネスのDXを果たすモデルとして生まれたのが、AaaS(Advertising as a Service)と説明しました。

AaaSは、メディア取り引きを一元管理するシステム基盤、メディアデータと博報堂DYグループが保有するデータとを連携するアルゴリズムを有し、ダッシュボードを活用した常時接続型のサービスを提供し、さらには専門のコンサルタント集団が適切な支援を行うものです。提供するサービスは大きく4つ。メディアやマーケティング施策の投資配分の最適化する「Analytics AaaS」、テレビとデジタルを統合管理・運用する「Tele-Digi AaaS」、テレビの高速PDCA化を実現する「TV AaaS」、独自のシステム基盤を活用し、効率的・効果的にデジタル広告を運用する「Digital AaaS」となっています。

AaaSは、独自のシステム基盤をベースに、バイイング、モニタリング、プラニングの3要素が運用ダッシュボードの上で動くことで、統合的にメディア運用を行い、広告目的を果たしていくもの。メディア投資効果を最大化することによって、広告主の事業成果、事業成長に貢献します。

第1部の後半では、株式会社データビークル代表取締役・最高製品責任者の西内啓氏をゲストスピーカーに招き、「データとシステムの利活用による意思決定の重要性」をめぐって意見交換をしました。データビークルが研究・開発しているのは、企業がデータを分析し、それに基づいて意思決定をして現場が動き、またデータを集積するというサイクルを回すために必要なツール類。「誰もが理解できて使えるツールの提供」(西内氏)が、データビークルの目標となっていると説明しました。

企業のマーケティング活動におけるデータの利活用の課題をたずねた安藤に対して、西内氏は「顧客のマスターデータが、店舗やウェブ、コールセンターなどの部署・部門によって、形式が異なるというようなことがよくあります」と例をあげ、データの不揃いが課題としました。「テレビとデジタルでデータの扱い方が異なるということもまさに課題でした」と応じた安藤に、「加えて、データを整理できれば課題は解決かというと、そうでもないことがあります。整理がいつまでたっても終わらず、分析を行えないということがあるからです」と、データの整理がいつの間にか目的化してしまうこともあると指摘しました。西内氏からは「データの整理が少しできたら分析し、また、整理して分析するという進め方がいいのではないでしょうか」というアドバイスがありました。
分析における課題として、西内氏があげたのは「分析者と現場とのギャップ」です。「分析者が自社の業務に興味がなかったりすると、せっかくデータ分析の高い能力があっても、現場の役に立つ分析を提供できなかったりします」と補足しました。「AaaSの開発・運用にあたっても、データ解析ができて、かつ広告を理解している人材が必要で、時間をかけて育てました」と話す安藤に対して、現場寄りの業務や事業に詳しい分析者の育成が、これからも求められるとしました。

西内氏は「データに詳しい経営者は少なく、データの分析結果をもとに意思決定をしたことの経験のある経営者は少ないので、サブブランドなどで実験的に試したり、小さい成功事例をつくったりして、データの利活用の効果を確認することが必要です」と話し、安藤も「AaaSを部分的にテレビだけに利用する、モニタリングだけに活用するといったこともできるので、場合よっては部分的な使い方をして、成果を確認しながら全社にデータの利活用を広げていくのもいいと思います」と提案しました。

企業経営の現状について西内氏は、「経営にエビデンスが求められる時代になり、データに基づいた判断をしないと株主が納得しなくなっています。これまでは、経営者が自らの経験や勘をもとに意思決定を行っていましたが、価値観が多様化したいまでは機能しなくなりました。また、コロナ禍で社会が変動したように、大きく時代が動くときに、意思決定に時間をかけて慎重に行っていては、社会や時代に遅れてしまいかねません」と解説し、そういう時代に役立つのがデータとしました。
「データは無機質なものに見えますが、実はさまざまな人の経験が凝縮したものであり、自分が経験しなかったことが入っているので、経験や勘に頼れない時代には、データから必要なものを抽出して活用することがビジネスにはプラスに働きます」と西内氏。安藤もその意見に賛同し、「IT企業が自社の広告として活発にテレビ広告を行っているのも、データに敏感でよく理解しているからこそ、テレビの効果がわかっていて選んでいるのだと思います」と説明し、データから情報を拾い出すことが大切と訴えます。「テレビは広告効果がはっきりしないとよくいわれますが、テレビに媒体価値がないのではなく、価値を可視化できていないだけなのです。データを活用してテレビの価値を可視化し、デジタルとともに統合的に活用できる環境を整えれば、デジタルのみならずテレビの広告市場も現在よりもさらに大きくなると考えています。すべての広告主にデータ利活用の重要性を理解してほしい」と話し、データビークルのツールやAaaSが貢献できるとしました。

株式会社データビークル
代表取締役/最高製品責任者

安藤 元博
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
株式会社博報堂
株式会社博報堂DYホールディングス
常務執行役員

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