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Creatives of the Hakuhodo Network 3: 台湾から世界へ

2021.07.19
#グローバル
ADFEST2021にて、博報堂は最もクリエイティビティの高い広告会社ネットワークに贈られる、Network of the Yearを初めて受賞しました。この受賞を機に、海外広告祭等で顕著な活躍をしたクリエイター達を紹介する連載「Creators of the Hakuhodo Network」をスタートしました。

第3回は、金賞1つに加え、複数の部門にまたがって銀賞4つを獲得し、博報堂のNetwork of the Yearに貢献したGrowww Media Group(以下、Growww)の事業ブランドであるUnited Communication Group の Chief Creative Officer のMichael Deeと、Medialand の共同創立者兼副会長Kiki Chenに受賞作品の背景と台湾広告業界について、話を聞きました。

Growww Media Groupの経営陣。左から2番目がKiki Chen、右端がMichael Dee。

―ADFESTで複数のメダルを受賞し、台湾の若者を中心に大きな話題となった「Braun X Formosa Chang」キャンペーンについてご説明いただけますか?

この作品は、United Communications Groupのデジタルマーケティングソリューション会社であるUnisurfが手掛けました。電気シェーバーの老舗ブランドとして台湾市場をリードしていたBraunは、若者の間でのマインドシェア向上が課題でした。我々はまず、若者がSNS映えするニュースを拡散するという行動に目をつけました。そして、街中に看板が溢れる人気の魯肉飯レストランチェーン「Formosa Chang」とのタイアップキャンペーンを思いついたのです。

まず、謎のグラフィックアーティストが深夜にFormosa Changの店舗のひとつに到着し、看板に描かれたChang(創立者を模した髭のおじさんでチェーングループのシンボル)にひげのイメージチェンジを施し、その動画をSNSにアップしました。このティーザー映像は、期待通り若者によって一気に拡散され、「誰がChangの髭を剃ったんだ?」と盛り上がる中、2日後には満を持して「BraunとFormosa Changの合同キャンペーンである」ことを発表したのです。

BraunとFormosa Changは、髭剃りの拡張現実体験「Braun X Formosa Chang」をローンチし、髭剃りスタイルの創造性を競うコンテストを開催しました。参加者は、アップされた自分の作品を見せ、Braun製品、Formosa Changのレストラン双方から割引クーポンを受け取りました。

ティーザー動画はわずか一週間で120万人以上の人々に視聴され、キャンペーンは900万人以上にリーチする結果となりました。

―素晴らしいキャンペーンでしたが、クライアントにとっては非常にチャレンジングだったのではないでしょうか? すぐに提案は受け入れられたのでしょうか?

若者のインサイトは確実に捉える自信はありましたが、Braunがこのような大胆なアイデアを受け入れてくれるだろうかと正直心配でしたが、そのような心配を他所に、クライアント内での協議を経て、早い段階で承認をいただきました。
一方、Formosa Changの会長は、自社ブランドを活性化するために、Braunのようなグローバルブランドとのタイアップ企画のアイデアと機会を高く評価してくださいました。次の世代の新たな顧客を取り入れたいと望んでいた両社にとって、双方にメリットのあるウィン・ウィンなアイデアだったのです。

―昨年、博報堂グループの一員となったわけですが、コラボレーションの効果は何かでていますか?

博報堂ファミリーの一員になったことは、Growwwの社員にとって非常に前向きな変化だったと言います。博報堂からはあらゆる面においてクリエイティブでもデジタルでも専門性の高いグローバルなサポートを受け、世界中のさまざまな企業と緊密に仕事ができるようになりました。舞台は台湾だけでなく世界へと広がり、大きく飛躍することができました。
毎月開催される「博報堂デジタルネットワークサミット」も非常に意義深く、毎回参加し、インドやベトナムといった国から多くのことを学んでいます。台湾にいながらにして各国の生活者研究も共有しているんです。

さらに、博報堂からGrowwwのCEOとして鄭 儼驥(てい・げんき)を迎えたことによって、グループ内に、チームワークとコラボレーションの文化が生まれました。
Growwwには専門性の高い5つの事業ブランドがあり、それぞれの強みとバックグラウンドを掛け合わせることができるので、とても良いことだと思っています。『Growww』 という名前のように、より強く成長しています。

Growwのメンバー。最前列中央が鄭。その右側にDeeとChen。

―コロナ過で、Growww はクライアント向けにデータマーケティングソリューションプラットフォームを自社開発したそうですね。

オンラインコンテンツと電子決済の重要性が今後も引き続き高まるだろうと考え、昨年よりGrowwwグループのMedialandの事業部門が、データマーケティングソリューションプラットフォーム、SKYLENSを開発し、クライアントに提供し始め、好評をいただいています。
SKYLENSは、ターゲットのデジタルフットプリントをベースに、市場調査や生活者の特定、メディアプランニング/エグゼキューションから購入後の追跡まで、包括的なデータマーケティングサービスを提供するためのプラットフォームです(台湾最大の通信会社である中華電信(CHT)よりデータ供給されています)。

SKYLENS: Growwwのデータマーケティングソリューションプラットフォーム

このように、グループ会社や外部の優秀なデジタル企業と共創して新しい価値を生み出すことで、多くのクライアントの利益最大化を実現できるのではないかと考えています。

―ADFESTの受賞に加え、Growww Groupは、マーケティング効果の高さを評価する賞として世界的に権威のあるEffie賞を受賞したそうですね。

はい。Medialandの「Different City, Same Coca-Cola」を紹介させてください。
このキャンペーンは昨年12月に中国本土、香港、台湾、マカオ対象の「2020 Effie Awards Greater China」で 最高賞のGrand Effieを獲得しました。

コカ・コーラ社は、2020年の東京オリンピックのスポンサーだったのですが、オリンピック延期が発表されたため、急遽新しいキャンペーンコンセプトを考え出す必要がありました。
そこで急遽企画されたのが、コカ・コーラの文化と歴史の象徴である「コーラ缶」を軸とした販促企画です。

台湾の10都市を代表する典型的なキャラクターを設定し、缶にそれぞれのキャラクターをデザインしました。「Where do I come from?」という問いが全てのジェネレーションに共感を呼ぶ台湾において、このキャンペーンは人々の心に届き、関連した楽曲やウェブコンテンツが生活者の間で話題となり、わずか1カ月でスーパーの売り上げが79%増加しました。

https://www.youtube.com/watch?v=3R4Ud0FEr7E

 

Braun、コカ・コーラのキャンペーンは、どちらも台湾市場向けに制作されたものですが、世界的な賞賛を受けている点では、「場所が異なっても文化は共有され、共感される」 事を示しているかもしれません。最も効果的なアイデアは真に普遍的であることを示しています。

―クリエイターとして仕事をするとき、持ち続けている信念はありますか?

まず、誰に対しても何に対しても常に心をオープンにし、することが重要だと思っています。
一方で、クライアントと仕事をする時は、自分自身の確固たる意思と主張を持って仕事をするように働き掛けています。常にクライアントのブリーフに基づいていればいいというものではありません。既成概念にとらわれず、自主プレゼンすることが必要です。

こうした価値は今回のBraunの作品を手掛けたUnisurfのクリエイティブチームでも共有されています。Unisurfは、平均年齢32歳という非常に若く、彼らの働き方は活気に溢れています。Unisurfの企業文化は、あらゆる可能性に対してポジティブで、競合よりも優位に立ちEHS(環境・健康・安全)に留意しながら、お互いを尊重することを重視しています。

Growwwが長きにわたって築き上げたクライアントからの信頼とパートナーシップ、台湾市場に関する深い知識と博報堂の国際的なネットワークがダイナミックに結びつくことで、引き続き、台湾から更に良いニュースをお届けしたいと思います。期待していてください。

Michael Dee
Chief Creative Officer
United Communications Group

作品への情熱とトレードマークの赤の帽子で知られるDeeは、キャンペーン誌のCreative of the Year in Greater Chinaを受賞するなど、業界から高い評価を得ている。2017年にUnited Communications Groupに入社。2018年、グループの台湾でのAgency of the Yearの受賞に貢献。これまで、Cannesでゴールド、London International Awardsでゴールド、ADFESTでグランデを獲得するなど数々のクリエイティブ賞を受賞。世界中の広告賞の審査員やフォーラムのスピーカーも務める。また、清華大学のEMBA講師や南京大学の名誉教授でもある。

Kiki Chen
Co-Founder/Deputy Chairwoman
Medialand Digital Strategy Limited

2002年にMedialandを共同設立。社員は設立から10年で5人から100人に増え、台湾最大の独立系デジタルエージェンシーの一社となる。20年以上のデジタルマーケティング経験を持ち、主要なグローバルブランドの仕事に携わる。Chenが主導したプロジェクトは、様々な広告賞を受賞している。2014年から、LIA Chinese Creativity、Effie Awards Greater China、Spikes Asia、AMES(Asian Marketing Effectiveness & Strategy)Awardsなど、アジア各地の広告賞の審査員も務めている。

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