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あたらしい時代、ブランドが愛されるための情報戦略とは? ―藤平達之×note トークイベント

2020.07.29
7月3日、note place にて開催されたトークイベントに博報堂/SIXの藤平達之が登壇。ウィズコロナ、アフターコロナの時代において、企業やブランドにはどのような情報発信が求められるのか――。note株式会社のCEO・加藤貞顕さん、CXO・深津貴之さんと、進行役の高越温子さんとともに、これからの時代に求められる情報戦略のあり方についてディスカッションを行いました。

ブランドへの褒め言葉は「勇気がある」「意義がある」へ

藤平
博報堂/SIXの藤平です。まずは僕から、現在の企業・ブランドが直面している課題についてお話しさせていただきます。
かつてはヒット商品や面白いCMなどを通じて、企業・ブランドは評価されていました。ただ、新型コロナウイルスを受けてそれだけでは不十分となりこれからの時代の誉め言葉は、「meaningful(意義がある)」や「brave(勇気がある)」という形容詞になるのではないかと考えています。この困難な時代において、意義のある取り組みをしているか、勇気をもって新しいチャレンジをしているか、などの点で生活者から褒められ、尊敬されるかどうか? 企業やブランドはそんなことを考えなければいけません。そして、だからこそ、強い志や行動力がはっきりと見えてくるような情報発信が必要になってくると思っています。

先日僕たちが実施した調査でも、コロナ前後で、企業に対する生活者の意識が変化していることが分かりました。
まずは、アンダーコロナの期間(緊急事態宣言中)に、「応援したい企業」ができたないしは増えたという方が52%おり、逆に「嫌いになった企業」ができたないしは増えたという方が30%いました。次に難しい状況下において、「具体的な行動・アクション」に投資して欲しいという方が80%と非常に高かったです。メッセージだけではなく、実際の行動を企業やブランドに求めていることがわかります。
そして、ウィズコロナ、アフターコロナの期間、企業やブランドに何を期待するかという問いに対し、「自分たちにしかできないことに取り組んで欲しい」と答えた方が85%。マーケティングでよく使うキャンペーンやターゲットという言葉はもともと軍事用語なこともあって、どうしても他社との競争を想起させますが、生活者にとってはそうではなく、その企業らしさをもっと大事にしてほしいと考えていることが見えてきます。その際、もちろん地球規模のサステナビリティも大切ですが、まずは「ふつうの人の毎日が楽しくなったり幸せになるような取り組みをして欲しい」という回答も、87%と非常に高く出ました。

自分たちの「存在意義」を体現したアクションがあるか

こうしたデータから言えることは、マーケティングにおいて我々は長らく差別化を求めてきましたが、これからはブランドの「独自性」がより重要になってくるということ。また、広い意味でのソーシャルグッドよりも、一人一人の生活にどれだけコミットするか。そしてメッセージを発するだけではなく、いかに行動・アクションを作っていくかが企業に問われているということです。
まとめると、何を言うかではなく「何をするか」。ナンバーワンではなく「オンリーワン型」を目指す。社会にいいことよりも「私たち(生活者一人ひとり)にいいこと」を追求する。これらが、企業やブランドに必要なことなのではないかと考えます。

今後、ブランドや広告に携わるすべての人には、その企業やブランドの「存在意義」を即答できるかが問われていくでしょう。そして、その存在意義を世の中の人にも同じように認識してもらえるよう、いかに企業の想いを具体的なアクションとして世の中に届けられるかも必要になります。
そう考える理由の1つ目は、情報がオーバーフローしている現在、優れたコンテンツが多々ある中、企業やブランドの情報発信もサムストップ(親指を止めて見る)してもらえるものでなければならないため。2つ目は、等価交換が当たり前の時代にあって、その先も支持し続けてもらうためには、期待されている価値以上の愛・意義を感じてもらえるような情報が求められるため。そして3つ目は、生活者がどんどん多様化し、もはやマーケット、ターゲット、カテゴリーという既存の概念で戦うことが難しくなっているためです。自ら目的意識を持ってコミュニティやカルチャーに飛び込んでいかない限り、存在を認識されないのではないかと考えるためです。

テレビCMを打つ、ニュースリリースを発信する、オウンドメディアのコンテンツをSNSで広げていくといったすでに完成されたアプローチが、果たしてこの先も有効なのか? 企業・ブランドにとって、今このタイミングこそが正念場です。この先ずっとリスペクトされるブランドになるための情報戦略の答えを、今日見つけられたらと思っています。

企業も“クリエイター”として、個性豊かに発信できる

加藤(note)
ぼくは普段noteで、クリエイターさんに対して「まずメッセージをちゃんと発信し、仲間をつくり、コミュニティをつくっていきましょう」とおすすめしているのですが、藤平さんのお話は非常にそれに似通っていますね。いまや企業もクリエイターとしてふるまう必要があるのかもしれないなと感じました。

深津(note)
「法人」と言うくらい、昔から会社を「人」に例えてはきましたが、SNSの広がりもあって、近年は本当に法人がインターネット上で人として扱われるようになりました。だから、通り一遍のプレスリリースではまったく刺さらないし、逆に怒られるような場合もある。ツイッター上では、これまでの常識を覆すような砕けたコミュニケーションによって、ユーザーと友達同士のようにつながる大企業も出てきています。法人も、一方通行のコミュニケーションではなく、どんどん主体的にキャッチボールをしていかないといけない時代になってきていると感じます。

藤平(博報堂)
企業をクリエイターととらえると、キャラクターや個性がはっきりするので、やるべきことが明快になっていきますよね。

高越(note)
私から、実際にnoteの中で生まれた企業の情報発信の事例をいくつかご紹介させてください。
まずは、あるビールメーカーのnoteです。noteではハッシュタグを使った「投稿コンテスト」という形で、エッセイや漫画などクリエイターの皆さんの投稿を募ることができるんですが、このビールメーカーが最初に行ったコンテストのテーマは「#社会人1年目の私へ」で、たくさんの投稿が集まりました。「#あの夏に乾杯」というコンテストを実施されたこともあります。同社はnoteを「これからの乾杯を考える場」と定義していて、ユーザーの皆さん、ファンの皆さんと一緒にコミュニケーションをとりながら、そのテーマについてみんなで考える場としてnoteを活用いただいています。

深津(note)
noteではできる限り企業PR感、商品広告感が出ないようにしていて、企業側が、企業のファン、あるいは将来のファンになってくれる人たちと一緒に、今後どんな活動をしていくかを話し合うような場になっています。一般的な商品広告だと「#〇〇ビールを飲んで」みたいな直接的なハッシュタグになりがちですが、noteの場合は「ビールって美味しいよね」「皆で飲むと楽しいよね」といった、その業界全体を盛り上げるようなスタイルを大事にしています。

高越(note)
ある資産運用会社が実施された投稿コンテストのハッシュタグは、「#ゆたかさって何だろう」でした。ちょうどブランドメッセージを「次のゆたかさの、まんなかへ」というものに見直されたタイミングだったのですが、それを一方的に提示するのではなく、皆さんと一緒に改めて豊かさについて考えていきたいということでした。

「ひとつ上のコンセプト」で共創・共振を作る

藤平(博報堂)
いずれもハッシュタグの付け方に、noteのカルチャーが感じられます。僕らもブランドのクリエイティブを作るときには「生活者が参加できる余白」を意識しますが、この事例だと真ん中の一番大事なところを、勇気を持って空けている。そこをユーザーと一緒に作ろうというスタンスは、勇敢でかっこいいですね。

深津(note)
まさに「共創」のいい例。企業のアイデンティティレベルのところで、一緒に語ろう、皆さんの意見が知りたいと言っている。企業として、非常に腹を割っている感じがあります。しかもこのテーマであれば、お金の話が来てもいいし、人生の話が来てもいい。

加藤(note)
そうですね。たとえば親との思い出をつづったものなど、お金以外の投稿も多くありました。ハッシュタグの検討では、コンテストがきっかけでみんなが「豊かさ」について考えられたらということで、このハッシュタグになりました。

高越(note)
ある音楽配信サービスの公式noteでは「#いまから推しのアーティストを語らせて」という投稿コンテストを実施されたのですが、これまで語りたくても機会がなかった人たちに場を提供し、盛り上げていくやり方が面白いですよね。また、ある会計ソフト会社の公式noteでは「#はたらくを自由に」という投稿コンテストを実施され、こちらもものすごく盛り上がりました。

藤平(博報堂)
うかがっていると、note発の企画は、たとえば業務支援のサービスに対して「働く」という概念を、音楽サービスに対して「推しのアーティスト」という概念を持ってきている。「ひとつ上のレイヤー」でクリエイティブのコンセプトをつくっていますよね。そうすることで求心力を上げていると感じます。どれも、生活者目線で参加したくなるハッシュタグだと感じました。

加藤(note)
ハッシュタグはとても重要です。ここへ安易に商品名などを入れてしまうと想像が広がらなくなって、台無しになってしまいます。

深津(note)
私はこの新型コロナの事態を受けて、「みんな、いまこそメッセージを」というタイトルの記事を投稿しました。法人が“人”であるならば、こういう時こそ積極的に、社内へは「大丈夫だよ」とか「こっちに行くからついてきてね」と発信すべきだし、社外へも「こうすれば、こんな環境下でも安心できますよ」「工夫して楽しくできますよ」と発信すべきだという内容です。これはnote社のオープン社内報1号とも言えるもので、noteの読者にも「あなたの会社でもオープン社内報をつくってみましょう」と呼びかけたところ、たくさんのオープン社内報が実際に生まれていきました。

まずは「当たり前のこと」から発信してみる

藤平(博報堂)
僕らはさまざまなクライアントのコミュニケーションをお手伝いしていますが、時としてそのブランド、企業のことだけを見てしまいがちです。でもこれからの時代は、noteの投稿コンテストのように、「ひとつ上のレイヤー」に仲間が集えるようなコンセプトを置き、そこを起点にさまざまなコンテンツを共創し、そこから僕らマーケッターやクリエイターも気付きを得てさらに良いコミュニケーションを生み出す…というループが生まれるような情報発信が理想的なのかもしれないと感じました。そうすれば、意義と勇気がある企業やブランドがもっと増え、日本がもっと幸せで豊かになるのではないでしょうか。こういったアプローチに、ぜひnoteの皆さんと一緒に取り組んでいけたら嬉しいですね。

深津(note)
法人という存在がどんどん“人”に近くなり、企業のコミュニケーションも、顧客と企業というよりは、友達同士、仲間同士に近いものになってきています。これまでのように一方的に原稿を読み上げるようなコミュニケーションでは届かなくなっている。同じ土台に立って、一緒に手を動かしたり汗を流したり、抱きしめあったりといったことが必要になってきます。noteはそれができる場です。ぜひ、人格をもってメッセージを伝えていきたい企業さんは、僕らの街に引っ越してきてください。

加藤(note)
noteでは何かすごいことを書かなくてはいけないのではないかと思う方が結構いらっしゃいますが、そんなことはありません。運送業だろうが医療だろうが、何らかの工夫をしてお客さんとつながり仕事をしているという意味で、みなさんがやっている普段の活動そのものがすべて創作行為です。たとえば先日、ある70代のすし職人の方が書いたnote が大きな反響を呼びました。彼が普段考えていることをごく素直に書かれただけで、たくさんの方の心に届いているわけです。みなさんすべてがクリエイターです。それを表現する場として、noteを活用いただければと思っています。

プロフィール

藤平達之
クリエイティブ・ストラテジスト/UXデザイナー

2013年博報堂入社。クリエイティブブティック・SIXにも所属。マーケティング・クリエイティブ・プロデュースの各領域を経験。ブランドの志と生活者の価値観を組み合わせて強いコアアイデアを作り、ストラテジーとクリエイティブを一気通貫させるプラニングが好き。ブランド体験の全体像を描き、広告にとどまらず、メディアやサービス開発など、様々な手段で実現していく。「勇敢で意義のあるブランド」を増やすことが目標。

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