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【博報堂生活総合研究所】みらい博2020
~「私の時間が溶けていく」を開催~

2020.03.06
#リサーチ#生活総研#生活者研究
博報堂生活総合研究所は、恒例の研究発表イベントとして、みらい博2020「私の時間が溶けていく」を、1月29日(水)渋谷ヒカリエにて開催しました。会場には、企業のマーケティング担当者や経営層、メディア関係者など、約800名が来場しました。
本レポートでは、講演の概略をご紹介いたします。

毎回、様々なテーマで10~15年先の日本の未来像を描き出す「みらい博」、今回のテーマは、「時間」です。

超高齢社会、100年人生・・・と、生活者が向き合う時間が長くなりました。一方で、働き方改革、時短商品・・・と、時間の無駄を減らす流れが強まっています。そして、時間の使い方が問われはじめている今、これまでのルールには縛られない、まったく新しい時間の使い方をする生活者が現れています。
彼ら彼女らの台頭が、これからの社会をどう変えていきそうか、その可能性を探りました。

はじめに 「時間」はどのように生まれたか

講演のはじめに、石寺所長より、時間の歴史をご紹介しました。

集落ごとに、牛の寝起きで時間を認識していたと言われる古来から、18世紀後半の産業革命を経て、時間は工場の労働者や生産の効率を管理するための、共通の物差しとして用いられるようになった。近代化の流れの中で、「社会の時間軸」に「自分の時間軸」を同期することが社会の常識になってきたという歴史がある。

Part.1 「時間」の常識が変わりはじめた 現在は、その常識が変わりつつあります。どのように変わってきているのか?

「行動の変化」「意識の変化」「変化の中心世代」に分けて、社会党系や定量調査の結果を中心に、内濱上席研究員よりご説明しました。

  • 行動の変化
    行動するタイミング、行動にかける長さ、行動の線引きが個々人の裁量になってきていることにともなって、行動する時間の「山」「塊」「際(きわ)」がなくなってきている。⇒生活者が「社会の時間軸」から解放されはじめている。
  • 意識の変化
    1999年、2019年に生活総研が行った「生活速度」調査をみると、生活行動(仕事や家事、遊びなど)の速度を「高速化したい」という欲求が、20年前とは逆転。社会の時間軸から解放されるなかで、社会に強いられるのではなく、主体的に高速化したい生活者が増えていることがうかがえる。⇒生活者が時間をコントロール「される」側から「する」側としての意識を持つようになってきている。
  • 変化の中心世代
    各定量調査をさらに詳しくみると、変化の中心となるのは、現在の20代であることが分かる。上記の、生活速度についての調査結果を年代別にみると、20代では「高速化したい」が71%にも達している。 また、他の調査項目においても、20代は、「物事を効率的に進めたい」(63%。全体比+17pt)、「複数のことを同時にこなしたい」(50.0%。全体比+10pt)が、他の年代に比べて高い傾向がみられる。

このように、20代を中心に自ら積極的に生活の高速化を図ったり、時間を重層的に使ったりする等、「タイムパフォーマンス」を向上させようとする生活者を、生活総研は「新・時間生活者」と名付けた。

Part.2 新・時間生活者がやってくる

「新・時間生活者」は、具体的にどのような新しい時間の使い方をしているのか?したいのか?街頭インタビュー、デプスインタビュー等の定性調査を踏まえ、その特徴を3つにまとめ、前沢上席研究員よりご説明しました。

<新・時間生活者 3つの特徴>

特徴① 時間は短くするより「濃く」する

  • 情報量が膨大な中、ハズレ時間のリスクを最小にしたい
  • ひとつの時間に情報量や熱量を詰め込み、自分好みの時間にしたい

特徴② 時間のために空間や関係を「組み替える」

  • “場所”を変えることで、時間のモードを変えたい
  • “相手”を変えることで、時間の創造性を高めたい

特徴③ 自分の時間軸に社会の方を「引き寄せる」

  • 自分の時間軸をつくるために、裁量権・編集権を持ちたい
  • 自分の時間軸をまもるために、同期を部分的にとどめたい

「新・時間生活者」は、自分たちの欲求を叶えるために時間をコントロールしている。そうすることで、自分にとって理想のタイムパフォーマンスをつくりだしている。
これからは、そのような人それぞれの時間のつくり方=タイムスタイルが、その人の生き方や、個性を表すものになっていく。

Part.3 未来の「時間」の風景

引き続き、前沢上席研究員より、2030年に実現しているかもしれない「新・時間生活者」たちの生活をご説明しました。

<「時間」をめぐるイシューから発想した風景>

  • 「時間格差」の発生というイシュー
    経済力や、技術リテラシーが「時間格差」に結びついており、格差がある人同士の共存や、格差を縮小することが求められている。 2030年の風景)時間を効率的に活用できるデバイス、ツールに“速度税”を課して、格差を埋める財源に充てられたり、格差を縮小するための再分配が行われたりする。
  • 「時間マナー」の激変というイシュー
    世代、地域、職業等で、「時間マナー」の感覚、意識が大きく分かれるようになっており、ギャップをお互いに理解したり、すり合わせたり、解消することが求められている。 2030年の風景) AIを用いてマナーの異なる相手との約束を絶妙にちょうど良い時間に設定してくれるような、時間軸のすり合わせをするサービスが生まれている。
  • 「同期レス」の深刻化というイシュー
    部分的な同期すらしたくない生活者が現れて「同期レス」が深刻化しており、社会的孤立、孤独を生まないための「新しい同期」が求められている。 2030年の風景) サグラダファミリアのような、超長期的で社会的なプロジェクトであらゆる人を巻き込んでいく「メガ同期」がつくられている。

おわりに 新・時間生活者がつくる新・時間経済圏

最後に、再び石寺所長が登壇し、「時間」の変化を踏まえ、企業に求められることは何か?お話しました。

これから企業に求められるのは、TPO(タイム・プレイス・オケージョン)、「いつ・どこで・何を?」の新しい組み合わせを生活者に提案すること=TPOのRe:デザイン。
これからの「時間」は、延長したり、連結したり、分割することがもっと簡単になる(下図右)。日常シーン(下図左)を掛け合わせることで、ビジネスチャンスを発想する際のテンプレートとして使用できる。

講演終了後、参加者からは、
「時間に対する発想がここまで自由化しているのかと驚きました。まさに現時代に合ったテーマ設定だと思いました。」
「今の若者の価値観の違いについて、全体像では聞いたことがあったが、『時間』という軸で考えたことはなく、新鮮でした。」
「自身の生活習慣、業務上での示唆を得ることができました。時間は平等にあるが、不平等であると改めて再認識しました。」
などの声をお寄せいただきました。

博報堂生活総合研究所は今後も、生活者のきめ細やかな調査研究を通じて、よりよい未来を提言する活動を続けてまいります。

「みらい博2020 わたしの時間が溶けていく」の内容はこちらをご覧ください!
https://seikatsusoken.jp/miraihaku2020/
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