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【スパイクスアジア2018 レポート Vol.3】博報堂セミナー:Let Creativity Flow ~博報堂のAsia pacific地域で起こった2つの奇跡について~

2018.11.08
#クリエイティブ#グローバル
今年も9月26日~28日、「スパイクス・アジア2018」(シンガポール)で博報堂セミナーが開催されました。6月のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで日本人のクリエイティビティの源泉を解き、好評を博した「Hakuhodo Mix Tape:Extreme Stimulation」の第二弾で、テーマは「Let Creativity Flow」。
今回は、クリエイティビティへの情熱が成し遂げた博報堂グループの2つのプロジェクトについて、ビハインドストーリーやエピソードを披露しました。

セミナーの司会を務めた木村健太郎は、SPA博報堂(博報堂のバンコク拠点の1つ)でクライアントサービスディレクターを務めるJeed Thanthip、東京のSIX Inc.でクリエイティブディレクターを務める齋藤迅、博報堂アジア・パシフィックのリージョナルCCO(Chief Creative Officer)を務めるWoon Hohの3人のスピーカーを紹介しました。

左から 木村健太郎、Jeed Thanthip、齋藤迅、Woon Hoh

ストーリー1:「Obsession for Smoothness」制作秘話
「Obsession for Smoothness」は、タイの製紙メーカーDouble A社のために制作したキャンペーン動画で、2018年の主要海外広告賞を多数受賞しています。
DoubleA社製の紙は、プリンター等で紙詰まりしないなめらかさが特徴で、それを「世界初のペーパープロジェクションマッピングプロジェクト」を使って表現したものです。567台のプリンターから、色とりどりのペーパーが次々と出てくる圧巻な映像をご覧になった方も多いことと思います。

SPA博報堂と、博報堂グループのクリエイティブ集団SIX(東京) がタッグを組んで遂行した当キャンペーンについて、Jeedと齋藤は、「ペーパープロジェクションマッピングへの挑戦というコンセプトはすぐに決まり、演奏はアメリカのビッグスター、OK Goが引き受けてくれました。ここまではとてもスムースな流れでした。」と説明しました。

しかし、映像制作にとりかかった瞬間から、壮絶な2年間が待っていたのです。音楽・ダンス・紙の動きを一秒の狂いもなく同期させる精緻なシステム作り、視聴者を飽きさせないための“驚きの演出”、予算の交渉、クライアントとのスケジュール調整など。Jeedはその舞台裏で起こっていた数々の出来事を”crazy difficulty(けた外れの困難)”と表現しました。
しかし、関与するクリエイターの個々の才能が”team chemical reaction”(チームの化学反応)」を生み、これらの困難を克服していったのです。齋藤は、音楽家、音響技師、振付師、監督など全スタッフが相互に力を発揮する様子を、“creative sandbox”という言葉に例えました。

彼らの全面的な献身がクライアントの心に響き、プロジェクトは成功をおさめ、クライアント企業の知名度向上にも貢献することができました。
最後にJeedは、この画期的なプロジェクトを実現できたのはチームが「決してあきらめなかったからだ」と指摘し、齋藤は、アジア地域のクリエイティビティーの高さを讃え「make Asia cool」とオーディエンスに呼びかけました。

ストーリー2:マレーシアの眠れる森の美女が目を覚ます
次にWoonがマイクを握り、博報堂マレーシアが長らく続いた沈黙を破り、マレーシア国内広告賞のトップに輝くまでの変貌を遂げたストーリーを紹介しました。
Woonは博報堂マレーシアを「眠れる森の美女」に例え、今までは新しいアイデアをクリエイティブに反映させる取り組みが充分ではなかったと述べ、「噴火の時を待つ火山」のように、可能性を発見することが内なる美を目覚めさせる鍵であると言及しました。

Woonのチームは、”taking initiative with proposals(クライアントへの自主提案でイニシアチブをとる)“」を
スローガンに掲げ、新しいアイデアをクライアントに提案していく活動を開始しました。クライアントは常に市場に新しい製品を出しているのだから、広告会社もクライアントに新しいアイデアを提案しようではないか、と。
しかし、それは決して簡単なことではなく、最初はあらゆるアイデアが却下されました。あきらめずに新たな提案をし続けるうちに、クライアントが徐々に興味を示すようになり、次第にもっと新しいアイデアを強く求めるようになったそうです。そして一連の努力の積み重ねは、博報堂マレーシアにスキルの底上げをもたらし、会社は大きく成長したのです。Woonは、我々がしてきたことは「クリエイティブ人材である“自分たち自身”を発火させた」と述べました。

Woonのチームは、クリイティビティの火をつける→クライアントが「もっと新しい提案を」とエージェンシーに求めてくるようになる→エージェンシーは自分達自身のクリエイティビティを発火させる、という三段階のモデルをしっかりと実践することで、ミレニアル世代のクリエイティブ人材を動員し、最適なコンテンツを制作することができました。
博報堂マレーシアの快進撃は、2018年のAgency of the Yearの受賞でクライマックスを迎えました。Woonと彼のチームは、これからも湧き出てくるクリエイティビティをどんどん発揮していきたい、とセミナーを締めくくりました。

<“Let Creativity Flow”~ 3つのkey phrase(登場順)>
”crazy difficulty”
尋常でない難しさをクリエイティビティで乗り越える時に、感動的な結果が生まれる。
”team chemical reaction” (チームの化学反応) ”
様々なクリエイティブの専門職が集まった時にクリエイティビティーが発揮される
”taking initiative with proposals” (クライアントへの自主提案でイニシアチブをとる)“
待ちの姿勢ではなく、クライアントに新たな価値を提案し、クライアントのクリエイティビティに火をつける。
そして、それにより自分達のクリエイティビティにも火が灯るのである。

木村 健太郎
博報堂 APAC CO-CCO、博報堂ケトル共同CEO

1992年博報堂入社。ストラテジー、クリエイティブ、デジタル、PR の境界を取り去り、全体をシームレスにつなげるユニークなプラニング手法を確立。2006 年、従来の広告手法にとどまらないイノベーティブなキャンペーンを手がけ、熱いアイデアで世界を沸騰させることを目的に博報堂ケトルを設立した。これまでに8つのグランプリを含む150を超える国内外の広告賞を受賞し、カンヌライオンズチタニウム&インテグレート部門審査員、アドフェストプロモ&ダイレクト部門審査員長、スパイクスアジアデジタル&モバイル部門審査委員長など25 回以上の国際広告賞の審査員経験を持つ。海外での講演も多く、2013 年から3 年連続でカンヌライオンズ公式スピーカー。2018年6月にアドウィークのクリエイティブ100に選出された。

Jeed Thanthip
SPA博報堂 クライアントサービスディレクター

マーケティングコミュニケーション分野で20年以上の経験を持つ。SPA博報堂では、タイ国内および世界中の主要クライアントを多数担当している。

齊藤 迅
SIX Creative Director / Music campaign director

広告の枠をとっぱらい、商品やサービス開発、最近では音楽を中心としたブランデッドエンターテイメントキャンペーンを得意とする。また、ギタリストとして横浜のアーバン&メロウなレーベル、PPPことPAN PACIFIC PLAYAに所属。

WOON HOH
博報堂アジア・パシフィック CCO(チーフクリエイティブオフィサー)

1992年米サンフランシスコGraphic Design School of Fine Arts卒業後、マレーシアの広告会社、博報堂インドネシアを経て、博報堂アジア・パシフィックのチーフクリエイティブオフィサーに就任。
博報堂インドネシアではリージョナル・エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターとして、任期中同社をインドネシア国内で常にトップ3のポジションに導いた他、2016年のCitra Pariwaraにてエージェンシー・オブ・ザ・イヤーを受賞した実績がある。現在、博報堂アジア・パシフィックの若手の育成にも尽力しており、One Show、ニューヨークフェスティバル、ロンドン国際広告賞、AWARD、Citra Pariwara、 Kancil Awards、Longxi Awards、Bangkok Art Directors’ Awards (B.A.D)、アドフェスト、スパイクス・アジア、カンヌなど、同社に多数の受賞をもたらした。

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