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【スパイクスアジア2018 レポート Vol.2】博報堂の若きクリエイターが、ヤングスパイクス・コンペ「デザイン部門」優勝!~リアルなインサイトが僕らを頂点へと押し上げた~

2018.10.17
#クリエイティブ

30歳以下の若手クリエイターを対象に、「スパイクスアジア2018」(以下、スパイクス)中に開催される「ヤングスパイクス・コンペティション」。予選を経て本戦出場を勝ち取った博報堂のペアが、シンガポール、マレーシア、フィリピンなど9ヵ国の代表チームをおさえ、新設のデザイン部門の頂点に輝きました。
スパイクスが行われたシンガポールから帰国直後の2人に話を聞きました。

2社のクライアントが複雑に絡んだ今年の「お題」

谷脇:
スパイクス1日目にあたる9月26日、11:30に所定場所に集合し、オリエンが始まりました。
今回、課題を出すクライアント企業は、ジョンソン・エンド・ジョンソン。ですが、大会全体のスポンサー企業は、ヒューレッドパッカード(以下、HP)社。クライアントの課題説明が終わった後、スポンサーのクレデンが続くという、珍しい形のオリエンでコンペがスタートしました。
結局、お題を簡潔に言うと:「ジョンソン・エンド・ジョンソンのベビー向けキャンペーンを、『ギフトボックス』を中心に据えて考案せよ。その際、HPのプリント技術を最低でも2つ使用すること」
―つまり、「A社のクライアントの課題解決を、B社のクライアントの技術を用いて成し遂げなさいよ」という、今までにない少々ややこしいものでした。
さらに提出物が、企画書・ボード・ギフトボックスの設計図・展開イメージ…と大量!!

過去の海外広告祭のヤング・コンペを振り返ると、最初の8時間(三分の一)を「アイデア出し」に使うチームが多かった気がします。でも今回はアイデア出しに時間を費やしていたら、作業が終わらない!と判断し、オリエンを聞いている間にある程度考えをまとめ始めました。

2人の提出案:Sleeping Idol Audition

谷脇:
コンセプトは「All Babies are IDOLs for their parents.(すべての親にとって、自分の赤ちゃんはアイドルである)」

親って、他人にどう言われようと、自分の子供が一番かわいいと思っている。その気持ちを形にするにはどうしたらいいか、と考えて辿り着いたのが、「我が家のアイドル」が「国民のアイドル」になれるキャンペーン、というアイデアでした。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの広告でモデルを務める赤ちゃんは、まさに“ナショナルアイドル”。もし愛する我が子がモデルなれるキャンペーンがあったら、惹かれる親は多いと思いました。具体的なアイデアは「Sleeping Idol Audition(スリーピングアイドル・オーディション)」の開催。寝ている我が子の写真を撮ってインスタにあげると、勝手にオーディションしてくれて、1位になったら広告に出れますよ、という単純な構造のキャンペーンです。
オリエン直後にそのアイデアを市田に話したら、彼は「これでいい。これで絶対いける!」と即判断。僕は「え?絞っちゃっていいの?」と心配になったほど(笑)。おかげでその場で腹を決め、企画書やビジュアル制作にとりかかることができました。

その場で即決した理由は“インサイト”

市田:
僕は、コンペにおいては「インサイト」が最も重要で、それを決めるのが難しいと感じていました。今回はターゲットが「東南アジアのミレニアル女性」と規定されていて、日本人には想像しづらいなと。そこに「すべての親にとって自分の赤ちゃんはアイドルである」は、まさにこれだ!という直感を得たインサイトだったんです。東南アジアというより、グローバルで共通の太いインサイトですからね。
ちなみに、谷脇は奥さんが妊娠中で、それだけにリアルな気持ちだと思ったし、そこを起点にアイデアを広げ、見栄えのするキャンペーンに仕立てていけば絶対にうまくいくと確信しました。

谷脇:
「ギフトボックス」=育児に役立つリアルグッズや、赤ちゃんが遊べるインタラクティブなおもちゃの詰め合わせなどを提案したチームもありましたが、僕らのギフトボックスは「INVITATION」。つまり、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ひいてはギフトの送り主からの「あなたのベビー、可愛いのでぜひ、応募してね!」という“お誘い”に建付けを変えました。オーディションの時って、胸にナンバープレートつけるじゃないですか。そのプレートとINVITATION CARDをセットにし、我が子が眠ったら胸にのっけてパシャリ⇒インスタでアップを誘導する “応募キット”ですね。

市田:
いくら我が子がかわいくても、自分から応募するのって恥ずかしくて躊躇する親御さんたちもたくさんいると思いました。日本人じゃなくても世界的にそういう傾向あるだろうなと。お誘い仕立てにして、誰かが他薦しちゃったよ風な雰囲気を出して、そのハードルを下げたんです。

谷脇:
最初のアイデア出しがすぐ終わったので、24時間殆どすべてを企画書や制作物にあて、ひたすら、アイデアのブラッシュアップと、作業に次ぐ作業。「ギフトボックス」の展開図もなんとか完成し、オリエン翌日の12時30分(〆切り2時間前)に提出しました。
提出から、プレゼンテーションまでは、またさらに24時間の猶予が与えられます。この間に僕らは、睡眠をとったりプレゼンの小道具づくりや、しゃべり・動きの練習をしました。

市田:
提出していた設計図を厚紙に出力して、カッターで裁断し、テープで貼り付けながら実際のスケールのボックスを作りました。さらに、ボックスの中に入れるジョンソン・エンド・ジョンソンの商品も、実際にベビー用品店に行って商品を購入したりして。「本当にボックスを作りました!」とプレゼンできれば、イメージビジュアルだけの他チームに差をつけられると思い、小道具準備にかなりの時間を割きました。

設計図からは、”イメージ”しか審査員に与えられないため、あくまでも立体の「BOX制作」にこだわった。ベビー服やクリームも近所で購入したもの。ディテールも手を抜くことなくサンプルを制作した。

そしてプレゼンは大受け! 勝利を確信

谷脇:
そして迎えたプレゼン当日。会場は湧きました! まず、「すべての親にとって自分の赤ちゃんはアイドルである」で審査員全員がおおっとどよめき、具体的なアイデアはこれです・・・と披露した「Sleeping Idol Audition」でどっかーん!と大爆笑が起きました。

市田:
次の説明を聞くまでもなく、このビジュアルとコピーで彼らには十分に理解できてしまったんですよね。
ここからは緊張もなく、楽しくプレゼンを進めることができました。

プレゼン時のあまりの反応の良さに、確信した勝利。結果的にそれはホンモノに・・・!

谷脇:
あと、ジョンソン・エンド・ジョンソンがこの時 “Choose gentle”=ジョンソン・エンド・ジョンソン商品は穏やかな商品を作っています、といった意味のブランドメッセージを展開していたんです。このメッセージをそのまま案に取り入れるとわかりにくくなると思ったので、「おだやかな商品を使った結果、このおだやかな寝顔が生まれたよ」・・・というストーリーにし、逆に僕らのキービジュアルでこのメッセージを説明する形にしたんです。それも高い得点をとれた理由かもしれません。アイデアもさることながら、まさに市田のキービジュアルの勝利だと思います。

プレゼンのスタイルは僕がメインで話し、おしゃぶりをくわえた“市田ベビー”が絡むコント形式に仕立て、終始笑いをとりながら説明を進めました。プレゼンに笑い”は、ものすごく重要です。

「NYのタイムズスクエアに、あのエントリー作品が並んだら」

谷脇:
審査員の講評では、「ギフト」から「INVITATION」へ考え方をスイッチしたクレバーさや、ビジュアルのかわいらしさなどに対して沢山のお褒めの言葉をいただきました。その中に 「この巨大なビルボードがニューヨークのタイムズスクエアを埋め尽くすこと想像してごらん。きっと、アンビリーバブルな効果を生むだろう」というコメントは心に残りました。「あれ、東南アジアじゃなかったの!?」とも思いましたが(笑)

応募期間が終了すると、ネットにあげるだけではなく、HP社のレーザープリンタを用いてつくられた巨大ODMに我が子の画像が掲出され、同じくHP社のLink Technologyで投票できる(イメージ図)

プレゼン後すぐ順位が発表され、その後アフター・パーティ会場へとバスで連れて行ってもらったのですが、そのバスの中で、複数のPR会社からのインタビューや、HP社のオウンドメディアに掲載するための取材など、ずーっとインタビューを受けっぱなしでした。

オリエン⇒作業⇒提出⇒プレゼン練習⇒プレゼン⇒表彰⇒パーティ…と、怒涛の時間を過ごしましたが、頑張った甲斐があったなと思います!

若手クリエイターへ贈るひとこと

ヤングコンペの代表になると、とにかく社内での扱われ方が変わります。大きな仕事を任せてもらえたり、憧れの人と仕事ができたり。「競争率高いし、どうせ無理だ」なんて思わずに、ガンガンチャレンジしてみるのがオススメです!(谷脇、市田)

谷脇 太郎
第一クリエイティブ局コピーライター/アクティベーションプラナー

1991年愛媛県生まれ。一橋大学卒業後、2014年博報堂へ入社。受賞歴:2016 ヤングカンヌPR部門日本代表、2017 ヤングスパイクスPR部門日本代表&本戦GOLD、2018 ヤングスパイクスデザイン部門日本代表&本戦GOLD など

市田 啓幸
第一クリエイティブ局デザイナー

1989年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業後、2014年博報堂へ入社。 受賞歴:2013 TOKYO MIDTOWN AWARD グランプリ / 2017 毎日広告デザイン賞 奨励賞 / 2017 読売広告大賞 協賛企業賞 / 2017 販促会議コンペティション 審査員個人賞・協賛企業賞 / 2018 Young Spikes デザイン部門 GOLDなど

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