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【カンヌライオンズ2019レポートvol.4】「ヤングカンヌ世界一」快挙のウラ話

2019.07.19
#カンヌライオンズ#受賞#広告賞
博報堂グループ初のヤングカンヌ世界一に輝いたPR部門日本代表ペア  左)谷脇太郎  右)関谷“アネーロ”拓巳

「カンヌライオンズ・インターナショナル・フェスティバル・オブ・クリエイティビティ(以下、カンヌライオンズ)」の開催期間中に、30歳以下の若手クリエイターを対象としたコンペ・プログラム「ヤングライオンズコンペティション(以下、ヤングカンヌ)」が毎年実施されます。
今年国内選考を勝ち抜いてPR部門日本代表となった博報堂のペアが、博報堂グループ初のヤングカンヌ金賞(世界一)を獲得しました。
「世界一の実感、いまだに湧かなくて・・・」という2人へのインタビューをお届けします。

お題:「食べ物を作るたびに、森林が消えている」ことのAwareness向上

谷脇:
カンヌライオンズ1日目にあたる6月17日(月)の14時からオリエンが始まりました。毎年発生する飛行機の遅延を見越して、土曜日にカンヌ入りした僕たちは、日曜日をフルに使って時差ボケを解消し、オリエン会場に。

今回のクライアントは、全部門共通でWWF(世界自然保護基金)。課題は各部門で異なっていて、PR部門の課題は「さまざまな食品(特に食肉)を生産する過程で、エサとなる大量の穀物を生産するための農地確保を目的に、大規模な森林伐採が起こっている、ということをミレニアル世代(1980年代~2000年代生まれ)に伝えるPRキャンペーン」でした。

関谷:
オリエン直後に会場に残り、2人で30分ほど、お互い頭に浮かんだことをすり合わせました。そこで谷脇が「世界一有名なディナー、ノーベル賞の晩餐会をハックするのはどう?」という切り口をくれたんです。
これはむちゃくちゃ良い!と、谷脇に言いました。

わざわざメディアを呼ばなくても、既にメディアが集まっているタイミングで何かするというのはPRの理にかなっていてものすごく良いし、森林伐採=暗い画になりがちなところに、ノーベル賞のディナーという華やかなキービジュアルを持ち込めるし、何もかも良いと思いました!

谷脇:
アネーロ(関谷のミドルネーム)とコンペでペアを組むと、彼は常にCD的な存在になってきっちり判断してくれます。その関谷が「安心した」と言ってくれたので、僕もひとまず安心しました。
このタイミングで、時刻は16:00頃。提出は次の日の19:00なので、残りはあと27時間です。長丁場になるので、とりあえずハンバーガー屋で腹ごしらえして、すぐに宿に戻って作業を開始しました。

広い部屋をちっちゃく使う谷脇

谷脇:
部屋に籠ってノーベル賞以外の様々な方向性のアイデアを探り、さんざん議論し尽くしました。しかし、めぼしい企画は出ず、日付が変わった頃に「やはりノーベルディナーを核にしよう」と2人で最終決定しました。
残り時間は18時間。ここからは一気にストーリーを作り、夜が明けると会場に移動して10枚のスライドを作りに没頭することになります。

関谷:
宿の話ですが、「作業場所の確保」は極めて重要なポイントです。3年前にヤングカンヌに挑戦した際には、ベッドと小さな机しかない普通のホテルやカフェでアイデア出しをしましたが、まったく集中できなくて、ストレスがたまる一方でした。それ以来“広い作業机がある部屋”、“2人が別々に作業できる間取りや広さ”があるスペースを確保することが僕らの決め事です。
効率も集中力も全然違いますよ。
今回は、会場から車で10分の距離にある一軒家(1LDK)を借りました。

互いの役割分担がものすごく明確

谷脇:
僕とアネーロの役割分担は、はっきりしていました。
プレゼンターは僕なので、自分が話しやすいように企画の全体のロジック、企画書のストーリー、および細かい文章を作ります。それをプレゼンテーションに適した体裁に整え、画をつくる、といったデザインは全てアネーロが担当します。
企画書が完成した後、僕はプレゼンの練習を延々としていきますが、その間はアネーロが資料を何度も見返して、「抜けている穴」を見つけて、分厚い質疑応答の想定問答集を作ってくれるんですよ。

関谷:
谷脇は手を動かすことが得意。僕はそれを見て、徹底的に見直すことにしています。
自分たちの企画を俯瞰して、審査員の気持ちになって見ることが谷脇よりも得意なんだと思います。

谷脇:
実はアネーロのチェックって、ものすごく嫌な時間です(笑)。自分が書いた流れにケチがつけられるわけなので。でもそのケチが100%正しいんですよ。ぐうの音もでない。
「おいおい、またやり直しかよ」と思うんですが、いつも確実に良くなりますね。

今回も、書いては直し、書いては直しを繰り返し、締切ギリギリに資料を提出しました。

では、僕たちの提出したスライドに沿って、今回の企画を説明します。

↓↓↓

博報堂ペアの提出案:「ノーベル賞晩餐会をハックする」 #TheSustainableChoice

-Let’s see the world-changing decision, at the world’s most famous dinner.-

プレゼン用スライド

谷脇:
前述の通り、与えられたミッションは「食べ物の生産によって引き起こされている森林破壊に対するミレニアム世代のAwareness(認知)向上」です。 しかし、僕らは認知向上だけでは足りないと感じました。それだけでは、この問題の本質的解決には程遠いと。

僕らが真のターゲットにしたのは、Industry Leaders、つまり産業界や政界のリーダーたちでした。この問題を解決するには、彼らが本気で取り組み始めることが必要だからです。

そもそも、どんな解決策があるのでしょうか?この問題に真剣に向き合うと、2つの選択肢に直面します。
1つは、肉を食べ続けること。この場合は、生産方法を効率化したり、食べる量を減らしたりと、状況の改善に向けた努力が必要です。もう1つの選択肢は、代替肉(大豆や藻、昆虫など)を食べるようにすること。エコですが、肉を食べたい人にとっては抵抗がありますよね。

僕たちは、この2つの選択肢を先ほどのIndustry Leadersに突きつけて、どちらを選ぶのか、彼らの意見を表明させようと思いました。それも、世界レベルの「衆人環視」の状況下で。

プレゼン用スライド

そこで着目したのが、世界中から注目される「ノーベル賞の晩餐会」。世界で最も有名なディナーであり、メニューの細かい内容までも毎年報道されています。
僕たちのアイデアは、このイベントをハックして、メイン料理を二種類用意すること。一つは普通の肉料理で、もう一方は昆虫などを使った肉の代替料理です。代替料理を選ぶ場合はお咎めなし、ですが、肉料理をチョイスした人には、「今後この問題の解決にむけて取り組んでいく」という書類にサインをしてもらいます。

プレゼン用スライド

どんな料理が出されたのか、どのセレブがどちらを選んだのか、彼らが今後どんなアクションに取り組んでいくのか、全てがニュースとなって広がり、結果的にミレニアルを含む幅広い生活者がこの問題について知り、考え、自らも行動を起こしていくことにつながっていく、というストーリーを描きました。

プレゼン用スライド

そしてプレゼン。大切なのは「エンタメ性」

谷脇:
今回のアイデアは、ある意味「真面目」な企画です。そのまま普通にプレゼンしてしまうと、暗かったり、つまらないものになってしまうだろうなと。だからこそ、逆に「エンタメ性」のある楽しいプレゼンにしようと、アネーロが方向性を定めてくれました。

関谷:
僕たちはあくまでヤングですから、審査員はフレッシュで元気なアイデアを聞きたいはず。そして長時間の審査で疲れている審査員からしてみれば、単純に楽しめるプレゼンが効くはずだと思いました。
ちなみに、今回のPR部門の審査員の方々は全員欧米系の女性。異性・他人種であることを、ポジティブに捉えると、アジアの男の子達が楽しそうにプレゼンしていたら、好意的に受け止めてくれるかもしれない。そう信じて、楽しく陽気な演出を試みました。

谷脇:
審査員をノーベルディナーのゲストに見立ててメニューを選んでもらったり、雰囲気を出すためにクラシック音楽を流したりと、楽しませるための小さな工夫はプレゼンの中に散りばめたつもりです。結果、良い雰囲気でプレゼンを終えることができました。
企画内容だけでなく、そういった演出もクリエイティビティとして、高評価に結び付いたのだと思います。

そして世界一に。 勇気ある“オリエン返し”が功を奏した。

関谷:
結果発表を待つ間、不安だったことが2つありました。
ひとつは、提案がオンブリーフ(オリエン通りの提案をする)ではなかったこと。
「Awareness向上だけじゃ十分じゃない。“アクション”につなげるべきだ」「ミレニアル世代に訴えるだけじゃ足りない。国や世界に影響力のあるリーダーをターゲットにすべきだ」などと、オリエンで提示された条件を越えた提案をしたことが、ズレているとみなされないだろうか?
ふたつ目の不安は、31ヶ国から精鋭のプランナーやクリエイター達が参戦しているのだから、自分たちを超えるオンブリーフなすごい案が出ているのではないか?ということ

そう考えると不安に包まれましたが、結果は・・・・・優勝!!!!
あきらめずに続けてきてよかったです。信じられないけど、世界一になれました。

審査員は口をそろえて「JAPANチームだけ異次元だった」と言ってくれた

谷脇:
審査員の評価として最も多かったのは、「とにかくJAPANだけ、他のチームとまったく違う切り口で、まったく違うストーリーを考えていた」ということ。31チーム中、ダントツで際立っていて、他チームの提案を受けている間もずっとJAPANチームのアイデアが頭から離れなかったというんです。これは嬉しかったですね。

関谷:
コア・アイデアの強さだけでなく、次のフェーズへ、次のフェーズへと展開されていくストーリーも、これぞPRという感じで、完成度が高いと言われました。良いPRって一発で課題が解決するのではなく、他へ波及しながら中長期的に効果を発揮するプロジェクトなんですよね。

ヤングカンヌの全部門を通じて、日本代表のメダル獲得は5年ぶり。そして博報堂グループでは史上初の快挙。関谷・谷脇ペアのGOLD獲得はカンヌにおける「JAPAN」の存在感を示した。

次に表彰台を狙う後輩たちへ。

谷脇:
最初はヤングカンヌで優勝するなんて、口にするのも憚られるほどの大きすぎる目標だと思っていました。でも、無我夢中でもがいてみたら、手が届いていた。
29歳とか30歳とか、年齢ギリギリになると、出るのが恥ずかしいなんて言ってる人がけっこういるけど、そんなこと全くないですよ。最後まで頑張ってほしいです。

関谷:
チャレンジし続けてみて、「継続は力なり」ということを、身をもって体験しました。
最初に負けたときは「もうやりたくない」と凹みましたが、めげずに続けていると知見がたまり、自分自身も成長します。2回目のカンヌは、見える世界が違いました。

また次回、JAPANチームが表彰台に立つことを期待しています!

帰国後、あらためて喜びをかみしめる2人

関谷“アネーロ”拓巳
TBWA\HAKUHODO アクティベーションプラナー、コピーライター

1989年栃木県生まれ。東北大学大学院卒業後、2014年博報堂へ入社。
2017年よりTBWA\HAKUHODO へ出向。
受賞歴:2016年ヤングカンヌPR部門日本代表、2017年ヤングスパイクスPR部門日本代表/本選GOLD、2019年ヤングカンヌPR部門日本代表/本選GOLD、2017年販促会議コンペティション 審査員個人賞/協賛企業賞、2018年Metro Ad Creative Award メトロアド賞、2018年Date FM ラジオCMコピーコンテスト 佳作

谷脇太郎
博報堂 アクティベーションプラナー、コピーライター

1991年愛媛県生まれ。一橋大学卒業後、2014年博報堂へ入社。
受賞歴:2016年ヤングカンヌPR部門日本代表、2017年ヤングスパイクスPR部門日本代表/本選GOLD、2018年ヤングスパイクスDESIGN部門日本代表/本選GOLD、2019年ヤングカンヌPR部門日本代表/本選GOLD

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