高校生が“答えのない問い”に挑む!「Hasso Camp Project ミライ」を通じて育む発想力

博報堂DYグループは2024年から、中高生向けの探究学習プログラム「Hasso Camp(ハッソウキャンプ)を提供。学校単位で実施する「Hasso Camp」と、高校生が個人で参加できる「Hasso Camp Project ミライ」の2つのプログラムを設けています。当社グループが強みとする「生活者発想」や「クリエイティビティ」を中高生に体感してもらい、未知なる答えを導く発想力を育みながら、生徒それぞれの個性や可能性に気付くきっかけをつくっています。
昨年の「Hasso Camp Project ミライ 2025」では、「生物多様性とまちづくり」をテーマに3日間のプログラムを実施。失われつつある生物多様性を回復・再生させるために私たちが暮らす「都心部の街」を舞台に何ができるかを、参加した高校生と博報堂DYグループの社員がチームになり協力し合いながら考えていきました。
講師を担当いただいた株式会社ハビタ 代表取締役の滝澤恭平氏と、プログラム開発・進行を担ったプロジェクトチームのメンバーとともに、本プログラムを振り返りました。

■Hasso Camp Project ミライ 2025 協業スペシャリスト 
滝澤 恭平氏/株式会社ハビタ 代表取締役 

■Hasso Camp Project ミライ 2025 プロジェクトチーム 
錦織 叶羽/博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラナー 
入江 遥斗/博報堂 PR局 PRプラナー 
村瀬 悠/博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラナー 

■Hasso Campプロデュースメンバー 
永田 奈々子/博報堂DYホールディングス サステナビリティ推進室 マネジメントプラニングディレクター

知識を未知なるアイデアへ昇華させるプログラム設計

永田(Hasso Campプロデュースメンバー)
2025年のHasso Camp Projectミライは、「生物多様性とまちづくり」をテーマに開催しました。Hasso Camp Projectミライではテーマを決める際、“社会課題として広く認識されているかどうか”を条件の一つとしています。生物多様性の回復はここ数年非常に重要視されています。また、まちづくりは生物多様性と切っても切れない領域であり、課題解決の重要なカギを握ります。そのような背景から、両者を掛け合わせたテーマにすることで、これまでにない新たな発想の機会が生まれるのではないかと考えました。

今回プロジェクトチームとして、錦織さん、村瀬さん、入江さんにプログラムの設計から参加いただきました。まずは設計においてどんなところを意識されたのか教えていただけますか。

入江(Hasso Camp Project ミライ 2025 プロジェクトチーム) 
博報堂はコミュニケーションの会社として、サステナビリティをどのように生活者価値へ結び付けるかを大切にしています。普段のプランニングでも向き合っているこのテーマを、博報堂DYグループの社会貢献活動を通じて次世代に還元できることは、純粋にうれしい機会でした。
まず私たち3人が意識したのは、生徒たちが学校の授業で習っている「生物多様性」や「サステナビリティ」の知識と、実際の現場で起きていることのギャップをどう認識し、プログラムの中で結び付けていくか、という点でした。また、「生物多様性」という社会課題の解決に向け、人々が行動を起こしたくなるよう、いかに生活者価値に結び付けるかを重視しました。そのうえで、生徒たちが自らの体験や気づきから紡ぎ出した「想い」と生物多様性とのつながりを探求する道筋を検討していきました。

錦織(Hasso Camp Project ミライ 2025 プロジェクトチーム) 
社会課題解決を生活者価値に結びつけるために、いったん生物多様性とは関係なく、高校生たちが日常の行動の中でどんなポイントでワクワクするのか、心が動くのかを考えてもらいました。一見関係ない二つの文脈の要素を掛け合わせて発想してもらったことがいい仕掛けになったのかなと思います。

村瀬(Hasso Camp Project ミライ 2025 プロジェクトチーム) 
そうですね、それによって各チーム異なる方向性にアイデアが広がったと思います。高校生がいち生活者としての自分自身と向き合いながら考えるというのは、まさに博報堂DYグループが大切にしている生活者発想らしいアプローチでしたよね。

錦織 
とはいえ、0→1のアイデアを導き出すのは、私たち社員にとっても難しいことです。このプログラムでは高校生たちが「未知なる答えをみんなで考える」ことが肝なので、インプットされた知識をしっかりと未知なるアイデアに昇華させるため、私たちが最後まで並走しながら一緒に考えられるような設計を考えていきました。

村瀬 
そのためにも、思考のプロセスをステップ・バイ・ステップで丁寧にデザインするということを、最終局面まで強く意識していました。一つ一つのインプットやワークがどのように関わりあってアイデア発想に繋がっていくのか、自分たちでもテストプレイをしながら細かく作り込んでいったのは、「未知なる答え」を見つけにいく上でとても大事な過程だったと思います。

永田
生物多様性もまちづくりも、深く理解するのはなかなか難しいテーマかと思います。生徒たちに専門的な知識を伝えるうえで工夫された点などはありますか。

村瀬
科学的な正しさとプログラム上必要な正しさのバランスでしょうか。たとえば国際条約についての情報をそのまま高校生に伝えたとしても、その場で十分に咀嚼し理解することは困難でしょう。なので、こちら側でどの程度紐解いてから伝えるべきか、あるいはどの程度捨象するか……その切り分けが非常に難しかったです。そのうえで工夫したのは、とにかく多様な視点を提供することで丁寧に補助線を引いていくことでした。

錦織
そうですね。特に初日のインプット量が非常に多かったので、ラップアップでは、講義の内容をアイデアに繫げやすいように、生物多様性に向き合う上での重要なポイントを捉えやすい設計を検討し、いくつかの視点を設けながら、講義を振り返り、周囲と共有し、考えを深める時間を多くとりました。

入江
また、専門的な知識をアイデアの源泉にするために、頭だけではなく、手や身体を動かしながら学びを深める工夫をプログラムの中に多く組み込みました。付箋を使って、キーワードや疑問を可視化する、フィールドワークで実際の街に繰り出す、などです。
特に、タウンウォッチング※は我々が実際に業務を行う際にも大切にしているアプローチです。そういう意味で、Day2で行ったフィールドワークは格好の機会だったと思います。
※タウンウォッチング:街を歩きながら、人々の行動や街の変化、文化、デザイン、商業、暮らしなどを観察し、そこから社会や生活者インサイトを発見するリサーチ手法

Hasso Camp Project ミライ 2025のプログラムスケジュール

永田
今回のプログラムは、滝澤さんをはじめ、さまざまな社外のステークホルダーの方々にもご協力いただきました。生物多様性とまちづくりは、本当に多くの人の協力がなければ前に進めないし、よりよい答えにもたどり着けないものだと思います。多くの方々と目指したい方向性を共有できたことも大きかったと思います。

滝澤さんには、Day1で生物多様性に関するインプットを、Day2でフィールドワークの舞台だった竹芝エリアを案内していただきましたが、特に意識された点はありましたか。

滝澤(ハビタ/Hasso Camp Project ミライ 2025 協業スペシャリスト)
生物多様性もまちづくりも概念的で難しい領域なので、下手をすると理解できないまま終わってしまうのではないかという懸念がありました。また、私が関わるレインガーデンやグリーンインフラなどは都内の複数箇所にあり、それらを訪問する案もありましたが、場所が断片的になることで一つの場にのめり込んでいくような体験性が失われるような気もしていました。

最終的にフィールドワークの場として選んだ竹芝エリアには、徒歩圏内に人工干潟が形成されたウォーターズ竹芝と、立体的な緑化が進むポートシティがあり、浜離宮と周辺の街が存在します。生物多様性を育んできた経緯がある一方で、最先端のスマートシティの取り組みも進んでいて、複合的な要素をはらんだ場所でもある。生物多様性を肌で感じ、その感覚に没入できると同時に、さまざまな切り口でのアイデアを可能にする場所を選ぶことができたように思います。

インプットとフィールドワークでリアリティのあるアイデアを引き出す

永田
プログラム全体を通じて、高校生たちからどのような変化や成長を感じましたか。

滝澤
高校生の中で特に鋭い質問をしてくる生徒がいて、その生徒に引っ張られるように徐々に周りの人も積極的に発言するようになっていくのを感じました。また、あまり発言しない人でも、みんなの意見を記録していくなど、自然とそれぞれが役割を担うようになっていったのも印象的でしたね。

村瀬
最終プレゼンを行ったDay3では、タイトな時間配分のなか、チームごとに粘土や付箋などを使って竹芝のまちの理想を模型で表現してもらいました。誰もが「時間がない!」と思っていたはずですが、各々が自発的にリーダーシップをとり、見事なチームワークで完成させていましたね。皆が自分たちの発表内容に自信を持てていたと感じました。その自己評価の高さがとても大事だと思うんです。3日間を通して、仲間と協力して考えることの楽しさや大切さを学んでくれたのではないかと思っています。

Day 3 プレゼンの様子

入江
時間がなくなってくると焦りが出てきて、どうしてもきれいに答えをまとめたくなるものですが、チームの一員として入っていた当社グループの社員が、「本当にそうかな」と、適宜視点を変える問いを投げかけてくれていたのもよかったですね。それによって、彼らのありのままのアイデアを引き出せたのではないかと思います。

永田
そうですね。社員がフラットな目線で高校生と接していて、高校生たちも気を使うことなく自然にリーダーシップが発揮できていたように感じます。
最終プレゼンで、特に印象に残っていることなどはありますか。

村瀬
最終プレゼンのお題は「生物多様性の課題解決につながる、高校生が参加したくなるようなまちづくり」でしたが、それをハードで実現しようとしたチームもあれば、アプリなどのソフトで実現しようとしたチームもありました。どのチームも、生活者のどんな行動に繋がるかまできちんと掘り下げて考えて、立体的に街を創造してくれましたよね。

入江
提案のなかで、多くのチームが、生活者の行動予想を物語のように語っていたのが印象的でした。地図だけを眺めていても、本当の街の姿はなかなか見えてきません。Day2のフィールドワークで実際に現場に行き、歩いてみることで、「ここにはこういう店があるのか」「こんな過ごし方ができそうだな」と実感を伴って思考することができた。だからこそ、各チームがリアリティのある街を創造することができたのだと思います。

Day2 フィールドワークの様子

滝澤
そうですね。たとえば、「浜離宮の内部ではキャンプもできるよ」とか、「水辺に船を浮かべて街を見ることもできるよ」など、いくつかヒントを投げかけたところ、一気にアイデア出しが盛り上がっていきました。ランドスケープをどう使うかという視点は、高校生にはなかなか難しかったかもしれませんが、現場で自分たちが体感したものがあったからこそ、少しのヒントで思考をドライブさせることができたのではないかと思います。

チームワークを通じて共創の力を育む

永田
Hasso Campでは、高校生に共創の楽しさや重要性を体験してもらうことも重視していますが、その点はいかがでしたか。

村瀬
高校生の皆さんはいろんな学校から参加されていて、考え方もアイデアも実に多様でした。まさに参加者同士の視点の多様性も体感してもらえましたよね。分断が進む社会だからこそ、自分とは異なる意見や価値観を持つ人への思いやりや理解が大切です。それは実際に共創社会を前に進めていくうえで欠かせないドライバーになると思います。

錦織
当社グループは「生活者発想」という考え方を大切にしていますが、多様な生活者を捉えるためには、意識的にさまざまな立場の人と対話したり、越境して外に出ていったりすることが欠かせないと思っています。今回参加くださった皆さんは、まさに他者との対話や越境を体験されましたよね。さまざまな仲間と意見を出し合い、アイデアをまとめていくことの楽しさも難しさも感じてもらえたのではないかと思います。

永田
滝澤さんは、生活者が協働する環境共生型の地域づくり・まちづくりを推進されていますが、生物多様性を推進するために、共創の力をどう活かせると思われますか。

滝澤
生物多様性の観点から見ると、戦争があったり、「温暖化は存在しない」という主張が出てきたりと、いまは本当に逆境にあります。一方で気候変動はますます激しくなっていますし、このままいけば地球環境は確実に悪化するだろうと思っています。ただ、地球全体を良くしていくことは難しくても、自分が住んでいる地域の環境をケアしていくことはできます。地域のスケールで循環を考え、自立していくというボトムアップ・アプローチです。その街に価値を感じ愛着がある人たちが、街をケアし、将来も住みやすくなるための取り組みを実践する。そういう人たちがネットワーク化していけば、その地域圏域が生物多様性を維持したまま、ある程度豊かに生きられる場所として保全されていく。そんな未来もあるのではないかなと思っています。

また、公共的なものに対しては、多くの人が、「誰かがやってくれるだろう」「行政に任せればいい」と思いがちですよね。でも自分の生存を支えている基盤が、実は自分ととても密接な場所にあって、自分が関わることでそれを改善できる可能性もある。そうした公共領域に誰もがアクセスできる回路があるということを、今回参加した皆さんは発見できたと思います。この経験を通じて、自分もいろんな人を巻き込んで社会を良くすることができると思ってもらえたらうれしいですね。

永田
そうですね、今回の経験が、一人ひとりが当事者意識を持ちながら、共創の力で社会課題に関わっていく、そのような未来に繋がっていくと嬉しいですね。
最後に、未来を担う高校生たちにメッセージをお願いします!

村瀬
皆さんには等身大の自分の考えや感性を大切にしてほしいですね。そして、考えたことを自分たちだけで完結させようとせずに、大人をはじめ周囲の人をどんどん巻き込んでいくことを恐れないでほしい。僕たちも高校生も、互いに巻き込み、巻き込まれながら、共創できるフラットな関係性でいられるといいなと思います。

錦織
3日間を一緒に過ごして、大人の枠にはまりきらない純粋さをとても感じました。高校生のいま、好奇心を抱いている対象や、何か気になっている些細なことから目をそらさずに、アイデアの種として真剣に向き合ってほしいなと思います。

入江
自分のなかの「変わり者」な一面に向き合ってほしいです。その偏愛に隠された発見や、偏愛からしか生まれない面白さやクリエイティビティ――今回で言うところの「未知なる答え」――があるからです。それから、所属、世代を超えて越境することを恐れないでほしいですね。今回のプログラムで紡ぎ出されたような創造的で面白いアイデアを生み出し、社会実装するためには、多様な主体による、領域を超えた対話と行動が必要です。これからも、未知なる答えでより良い社会を共創する仲間として、越境精神をずっと持っていてほしいし、僕自身も持ち続けたいと思います。

滝澤
このプログラムに参加した高校生が、先日インターンで弊社に来てくれました。今後、海外の大学へ留学し、本格的にグリーンインフラやランドスケープアーキテクチャーを学ぶそうです。彼女のような存在が、20年後、30年後の未来を変えてくれるかもしれないととても期待しています。

永田
高校生の皆さんやグループ社員と“共創”し“発想”することで未知なる答えを導き出す場を持てたことを嬉しく思います。これからもHasso Campの活動を通じて、社会課題に取り組む仲間を増やしていけるといいなと思っています。
皆さん本日はありがとうございました!

※肩書は取材当時のものです

滝澤 恭平 氏
株式会社ハビタ 代表取締役

ランドスケープの計画・デザイン、水辺・流域のまちづくり、協働マネジメントを専門とし、実践・コンサルティングと研究を行き来する。ボトムアップ・アプローチでグリーンインフラを地域実装支援する株式会社ハビタを2023年に創立。 博士(工学)。

錦織 叶羽
博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラナー

2023年博報堂入社。幅広い業界においてマーケティング戦略立案・実装、ブランディング、新商品企画などを担当。博報堂SXプロフェッショナルズにも参画し、社会課題へのアプローチをテーマにしながら、企業の想いや生活者インサイトを捉えた価値創造・マーケティング推進を行う。

入江 遥斗
博報堂 PR局 PRプラナー

2024年博報堂入社。生活用品・製薬・公共組織・サービス・大型イベントなど、幅広い業種のPR業務に従事。コーポレートPR・HRを主領域としながら、社会発想を用いたマーケティングPRプラニングにも参画している。「博報堂SXプロフェッショナルズ」メンバー。Young Cannes Competitions 2024 PR部門 Finalist。

村瀬 悠
博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラナー

2024年博報堂入社。業界を問わず幅広いクライアントのマーケティング戦略立案・実装に従事。「博報堂SXプロフェッショナルズ」メンバー。サステナビリティ領域における次世代共創を得意とし、社会課題に関わる若年層向けの広報施策や、環境貢献活動を通じた企業価値向上支援などに携わる。

永田 奈々子
博報堂DYホールディングス サステナビリティ推進室 マネジメントプラニングディレクター

2012年博報堂入社。航空、化粧品など複数クライアントのマーケティングプロデュースに従事後、自社の業務フロー変革およびプラットフォーム開発、ビジネス領域拡張推進を担い、現在はサステナビリティ推進室にて、主に環境領域、情報開示、社会貢献領域を推進。

■中高生向け探究学習プログラム「Hasso Camp」
社会や地域、自身の課題をテーマに、中高生の「発想力」を育む120分のプログラムです。独自のフレームワークを用いて、中高生の皆さんに新たな視点を発見したり、アイデアを発想することに挑戦していただきます。(本プログラムは学校単位でのお申し込みとなります)
・開催時期:通年
・対象:中学1~3年生、高校1~3年生
・回数:1回(2時間)
・場所:東京・赤坂
・定員:4~30名
・費用:無料

▼プログラムの詳細につきましては「Hasso Camp」サイトをご覧ください
https://hassocamp.hakuhodody-holdings.co.jp

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