ヒット習慣予報 vol.419『ライフログ・シェアリング』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの金井です。

前回の記事「ヒット習慣予報 vol.418『五感で追憶』」では、私たちの「思い出の刻み方」が進化していることに触れられていました。
その時に思ったこと。
「被ってしまった…」
ちょうど、若者を中心に広がるライフログ習慣を紐解こうとしていたため、とても焦りました。ただ、前回の記事は「記録する手段」が中心でした。そこで今回は、人生のさまざまな瞬間を記録し、家族や友人、時には社会と共有する「ライフログ・シェアリング」の広がりに焦点を当て、変化の兆しをご紹介します。

1つ目は、「自分では記憶できない人生の始まりを、家族で共有」。

赤ちゃんの写真を残す習慣は、以前からありました。しかし近年は、生後数週間という限られた時期の姿を、プロによるニューボーンフォトとして残す人が増えています。さらに、撮影した写真をアルバムにしまうだけでなく、離れて暮らす祖父母や親戚にリアルタイムで共有できるアプリも登場しています。かくいう私も、先月、子どもが生まれた兄夫婦からアプリの招待URLが届きました。改めて開いてみると、甥の写真のそばには、家族からのあたたかなコメントが並んでいました。そこに残っていたのは、甥の姿だけではありません。その誕生をみんなで喜び、成長を見守っていた家族の気配まで、一緒に記録されているように感じました。

出典:Google Trends(「ニューボーンフォト」の検索関心度)

2つ目は、「モーメントログ共有SNSで何気ない日常の一瞬を共有、かつ、共同編集による未来の記憶づくり」。

例えば、「vlog」は数年前から親しまれていますが、今ではアプリ側から半強制的に短い動画撮影が促され、親しい友人とのグループに共有するとその日の動画をVlogとして書き出せるアプリが流行っています。私もそのようなアプリを使用しており、同期4人のグループがあるのですが、当初は見ることが中心だった1人が、3人の投稿に繰り返し触れるなかで、自らも外に出かけ、その様子を投稿始めるようになりました。親しい人の日常へ高頻度で触れることが自分の行動を変え、その行動がまた新しい記録としてグループに共有される。記録の共有が次の行動と記録を生む循環が起きているようです。 

出典:Google Trends(「vlog」の検索関心度)

3つ目は、「生前の記録を死後も家族や社会と共有する“デジタル・リメモリー”」。

生前に残された声や映像、人生のエピソード、家族へのメッセージなどをもとに、故人の声や姿を再構成する取り組みも進んでいます。こうした技術は “Grief Tech” とも呼ばれ、遺族が大切な人との記憶に触れ直す手段になる一方、テレビやSNSを通じて公開されることで、個人や家族の記憶を社会へ共有するものにもなっています。例えば、ある亡くなったアーティストの過去の音声・映像データをもとにAIが歌唱をし、家族やファンが個別に抱く思い出にとどまらず、技術とメディアを介して社会で共有され、新しい記憶が作られています。しかしながら感動の声があがる一方、AIが本人の意思を超えた表現を生み出すことへの懸念もあり、慎重な設計が求められる分野でもあるようです。

出典:Google Trends(「Grief Tech」の検索関心度 ※すべての国)

3つの事例に共通するのは、記録する対象が、人生の始まり、何気ない日常、死後に残る声や姿へと広がり、それらが個人の手元だけでなく、家族・友人・社会へ共有されていることです。その背景には、大きく2つの要因があると考えます。

1つ目は「記録と共有のハードルの低下」です。
スマートフォンで撮影した写真や動画をそのまま限定グループへ共有し、アプリ上で時系列に並べたり、自動編集したりできるようになりました。共有する行為そのものが記録になる、続けやすい設計が習慣化を支えています。

2つ目は「会えない時間も記憶を作り続けたいという欲求」です。
私たちは記憶によって、物理的な距離や時間を超えたつながりを感じ、安心感や、やすらぎを感じることができます。誕生日や旅行のような特別な出来事だけでなく、何気ない日常も、未来に残す価値があるかを今決め切らず、まずは記録し、共有しておけば、後から振り返ればかけがえのない記憶になるかもしれないと期待しています。こうした欲求もライフログ・シェアリングを後押ししているのではないでしょうか。

最後に、「ライフログ・シェアリング」から生まれそうなビジネスチャンスを考えてみました。

『ライフログ・シェアリング』のビジネスチャンス例
■ 保存した記録を、現在の関係の再確認や修復に生かす「リメモリー体験」

*たとえば、けんかが増えたカップルが、付き合い始めた頃によく訪れた店の雰囲気や、当時聴いていた音楽、注文していた料理を再体験する。
■ 写真や動画をあえて残さないカフェやホテルで、同じ時間を過ごす相手と現在に集中する「メモリーオフ体験」
■ 故人の声や肖像の利用条件を本人・遺族・事業者で管理し、無断利用を監視する「AI墓守」サービス

私自身、日々増えていく記録や記憶を、何のために、誰と共有するのかを考えながら、これからのライフログとの付き合い方は探っていきたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは? 
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。 
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。 

金井真歩(かない・まほ)
ビジネスデザイン局 / ヒット習慣メーカーズ メンバー

2023年博報堂入社。好きな食べ物は餃子。 ですが最近は、ナポリタン作りに勤しんでいます。

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