ヒット習慣予報 vol.417『背徳感ヒーリング』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの山田です。
ジメジメとした梅雨が続き、そして厳しい暑さの夏が始まると、知らず知らずのうちに心身が消耗し、どうにも鬱屈とした気持ちを抱えてしまいがちですよね。
ストレス発散といえば、「美味しいものを食べる」「旅行に行ってリフレッシュする」といった楽しいことで気を紛らわせるアプローチが主流ですが、昨今では、理性のタガを外して、あえて背徳感や欲望を味わうことで心を癒やすという選択をする人が増えているようです。
「Vol.311『不摂生ウェルビーイング』」では、不摂生に見えて実はウェルビーイングに繋がっている行動をご紹介しましたが、今回は本当に背徳感のあることをすることでリフレッシュするという新習慣になります。
そんな変化を、今回は『背徳感ヒーリング』と名付けました。
身近な3つの兆しから、その正体を探ってみましょう。

一つ目は、「ギルティな飲食」です。
深夜のラーメンや、バターと砂糖をたっぷりと使ったスイーツなど、いわゆる「ギルティフード」をあえて摂取する動きです。
健康志向やダイエット等の社会的に良しとされる潮流に逆行し、欲望に身を任せることで得られる背徳感が、どんな栄養よりも心に沁みるご褒美となっているようです。
実際、Google Trendsで「ギルティ」というワードの検索量(2021年7月~2026年6月)を調べてみると、ここ数年で増加していることが分かります。
大手企業からもギルティをテーマにした飲料が発売されるなど、話題になっています。
SNS上でも、「夜中のラーメン最高。明日も頑張るための必要経費!」「罪の味がするスイーツで今週のイライラをリセットした」といった、背徳感を楽しむ投稿が数多く見られます。

出典:Google Trends「ギルティ」検索量(2021年7月~2026年6月)

二つ目は、「映画館での応援上映」への参加です。
通常の上映とは異なり、観客が大声で声援を送ったり、サイリウムを振ったりすることが公式に許可された上映スタイルです。
大人になると、日常生活で思い切り大声を出す機会は滅多にないものですが、通常であれば静かにしなければならない映画館という空間で、興奮を全力で叫ぶという背徳感も相まって、これまでにない爽快感と一体感を得る人が増えています。
私の周りにもよく応援上映に行っている友人がいますが、彼女曰く、「映画の内容に集中して没入したい時と、周りを気にせず感情を爆発させストレス発散をしたい時とで、通常上映と応援上映を意図的に使い分けている」のだそうです。

三つ目は、「破壊」の体験です。
不要になったお皿や家具、家電などを、防護服を着て安全にバットなどで叩き割ることができたり、壁や床一面に落書きをすることができる体験型サービスが、数年前に日本に上陸して以来人気を伸ばし続けているようです。
日常生活では許されない「モノを壊す」という禁忌を破る行為を通じて、日頃溜め込んだイライラや衝動を物理的に解放できる場として、SNS上でも口コミが広がっています。
先日私も友人に誘われて行ってきました。最初は「本当にお皿を割っていいのだろうか……」と少し躊躇しましたが、いざ思い切り投げつけてガシャーン!と割れる様子を見ていると、不思議な爽快感に包まれました。

出典:Google Trends「破壊 体験」検索量(2019年7月~2026年6月)

こういった『背徳感ヒーリング』の動きがみられる背景として、主に2つの理由があると考えます。
一つは「常に正しく、理性的であること」への疲れです。
コンプライアンスの遵守、ビジネスマナー、さらには健康やタイパの意識など、現代人は公私ともに「正しさ」を常に求められています。その反動として、たまには「正しさのタガを外したい」「自分の感情に素直になりたい」という欲求が強まっているのではないでしょうか。
もう一つは「免罪符」の渇望です。
完全にルールを破るわけにはいかないけれど、公式に「やっていいよ」とお墨付きをもらっている場所や、お金を払うことで罪悪感が中和される仕組み(=免罪符)があれば、安心して全力で羽目を外すことができる、という防衛本能的なインサイトがあります。

ポジティブな感情で蓋をするのではなく、普段は抑えている一面をあえて解放して心を整える『背徳感ヒーリング』。この視点を取り入れた、新しいビジネスのアイデアを考えてみました。

『背徳感ヒーリング』に関連するビジネスチャンスの例
■ ギルティフード特化デリバリーサービス
深夜限定で、高カロリーや中毒性の高い「背徳グルメ」だけを届けてくれる専用デリバリーサービス。
■ エモーションリリーススペース
駅のホームや商業施設の中に設置されているワークスペースのように、完全防音で大声を叫んだり、サンドバッグを叩けたりする1畳ほどのスポットスペース。商談前や仕事帰りに、1分間でサクッと感情をリリースできる定額制サービス。
■ 背徳感リトリート
日頃の健康意識やマナー、自制心をすべて忘れて、合法的に「堕落」することに特化したホテルの宿泊プラン。高カロリーなフードやスイーツを夜間でも提供。夜更かし用の漫画や映画も完備。大音量で好きな音楽を流して大声で歌ったりしても外に漏れない完全防音仕様など、誰の目も気にせず安心して欲望を解放できるおこもりプラン。

自分の心の中に溜まったモヤモヤやストレスに蓋をするのではなく、安全に、そしてスマートに手放していく『背徳感ヒーリング』。 この習慣は、これからの私たちのメンタルウェルネスを、より素直で心地よいものに変えていくかもしれません。

▼「ヒット習慣予報」とは? 
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。 
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。 

山田雅(やまだ・みやび)
中部ビジネスデザイン局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2022年博報堂入社。趣味は旅行で、休日は常に複数の旅行計画に追われている。 転勤を機に国内旅行へのモチベーションがアップ中。

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