ヒット習慣予報 vol.412『エンタメ的スポットワーク』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの吉田です。

SNSを眺めていると、最近「旅行先でバイトをして旅費代を稼いだ」という旨の投稿がバズっているのをちらほら見かけます。

宿泊費を中心に旅行費用が値上がりしていることで、このような旅行の仕方が若い世代を中心に広がりつつあるのかもしれないと思い、少し調べてみたところ、どうやら旅行時だけでなく、様々な目的で本業以外の仕事を行う「スポットワーク」という働き方を取り入れている人たちが増えてきているようです。

出典:Googleトレンド(「スポットワーク」の直近10年間のウェブ検索数の推移)

この「スポットワーク」という働き方を取り入れている人たちについていろいろと調べてみると、一部で、「お金を稼ぐ」という本来の労働の目的に加えて、全く異なる職種や現場に飛び込むことで、普段とは違う職業を体験できることを、一種のエンタメとして楽しんでいることがわかりました。
今回はそんな、働くことと遊ぶことが融合した新しい兆しを『エンタメ的スポットワーク』と名付け、いくつか事例を紹介していきます。

最初に紹介する事例は、「職場体験でエンタメ的スポットワーク」です。

普段している仕事と異なる業種の仕事を体験するためにスポットワークを取り入れている人たちが増えてきており、将来やってみたい・興味があると考えている領域の仕事をすることで、隙間時間にノウハウを貯めたり、他業界の市場リサーチも兼ねて、違う業種の仕事をしてみるといった取り入れ方をしています。

実際にスポットワークを自分のスキルアップや、他業界の体験の機会として活用している人の発信内容を見ると、空いた時間で経験のない業界を楽しみながらお小遣いも稼げるという、まさに一石二鳥の良さが魅力となっているようです。

続いて紹介する事例は、「舞台裏でエンタメ的スポットワーク」です。

大型の野外音楽フェスや話題の展示会、映画の試写会、あるいは最新ガジェットのテストモニターなど、普通はお金を払ってもなかなか入れないようなイベントや現場の「舞台裏」に、スタッフとして潜入するためにスポットワークを取り入れている人たちです。「自分の好きな空間の内側を見てみたい」「最新トレンドの裏側を誰よりも早く知りたい」という強い好奇心を満たすための手段として、スポットワークを活用しているようです。

普段は見られない景色を見ることでワクワクし、記念にもなるという、「働く」だけでなく非日常感を楽しんでいる人たちが増えているみたいです。
ただし貴重な体験といえど、働きに行くということは忘れず、決まりを守って仕事をすることには変わりないのではしゃぎすぎないよう注意が必要です。

最後に紹介する事例は、冒頭でも触れた「旅先でエンタメ的スポットワーク」です。

旅行先で働いて旅行費を賄う、という旅の仕方が広がりを見せており、SNSでの投稿を見ていると、特に推し活で各地に「遠征」をするような人たちが、遠征費に加えてグッズの購入費など出費がかさむ中でも推しを応援するために実践していることが多いようです。

このように、お金を稼ぐことを目的にしている人がメインである一方で、単なる観光客として有名な名所を回るだけの「消費的な旅」に物足りなさを感じている人たちが、旅先ワークを通じて現地の住民と直接コミュニケーションをとることで、その土地のリアルな生活感やディープな魅力を肌で感じる目的で取り入れている場合もあるようです。
実際、地域の様々な求人と旅人をマッチングするサービスもあり、地域の魅力を深く知る手段としてのスポットワークにもニーズがあるようです。

ここまで「エンタメ的スポットワーク」の事例をいくつか紹介してきましたが、このような新たな兆しを見せている背景にはどのようなことが考えられるでしょうか。

まず一つ目の背景として、働き方の選択肢が広がり、単発で働くことへのハードルが極端に下がったことが挙げられます。スマートフォンのアプリ一つで、履歴書や面接なしに自分の都合の良い時間に働けるプラットフォームが普及したことで、労働がよりカジュアルなものになりました。その結果、働く目的が単なる「お金を稼ぐ」から、自分の好奇心を満たすための「体験の消費」へとシフトし、労働自体をアクティビティやエンタメとして捉える層が顕在化したのだと考えられます。

もう一つの背景としては、自分が自由に使える時間が限られている中で、ただ遊んでお金と時間を消費するのではなく、お金を稼ぎながらリフレッシュや自己成長、あるいは普段できない特別な体験も同時に手に入れたいと考える人が増えてきていることが考えられます。こうした考えが広がりつつある中で、「遊びのための時間」や「仕事をするための時間」といった区分が曖昧になり、「エンタメ的スポットワーク」という習慣が定着し始めているのではないでしょうか。

最後に、「エンタメ的スポットワーク」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「エンタメ的スポットワーク」のビジネスチャンスの例
■ 企業側があえて自社のレアな舞台裏や特殊な体験を開放し、ファン作りに繋げる「プレミアム・スポットワーク」の企画
■ 旅行会社と連携し、旅先でのローカル労働体験をアクティビティとして最初から組み込んだ「体験型ワークツーリズム」の販売
■ 異業種で働くことによる「スキルの掛け算」を評価し、本業のキャリアアップに繋げるための越境学習サポートサービスの開発

副業可の企業は今後も増えていくことが予想される中、今回紹介したような、働くことをポジティブに活用する習慣は、新しい常識として定着していくかもしれませんね。

▼「ヒット習慣予報」とは? 
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。 
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

吉田 裕(よしだ・ゆう)
北海道博報堂
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2020年北海道博報堂に入社し、マーケティング・ストラテジックプラナーとして業務に邁進している。2024年博報堂プラニングハウスに参画。インターネットに生息し、日夜インターネットカルチャーを浴び続けている。

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