ヒット習慣予報 vol.411『ランダムにお任せ』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中林です。
最近引っ越しをしました。
不動産屋さんとのはじめての打ち合わせのときのこと。エリアや間取りなど条件を伝えつつ、あまり急ぎでもなかったので雑談していると、不動産屋さんの携帯に着信が。「え、キャンセル?そうかあ、残念。わかりました」どうやら別のお客さんの審査が通らなかったようでした。なんだか気になってしまって、ちなみに、、、と見せてもらうと、なかなか良いお部屋なのです。「今から行ってみます?」「え、いいんですか?」ということで内見し、その場で即決してしまいました。
希望のエリアとは違ったのですが、まあこれも運命!と思ったりして、偶然出会ったお部屋での暮らしをたのしんでいます。
こういう偶然のたのしさって生活にたくさん潜んでいる、と気付き、今回は「ランダム」にまつわる新習慣をいくつかご紹介したいと思います。
▼「ランダム」の検索数推移

出典:Googleトレンド
1つ目は、「ランダム定期便で生活ランダム化」です。
サブスクサービスは、すでに私たちの暮らしに欠かせないシステムになっていますが、最近はランダム性を売りにしたものがじわじわと人気を集めているようです。
例えば美容領域では、人気のコスメやスキンケアアイテムが毎月ランダムで届くサービスが流行しています。普段自分では買わないようなアイテムに出会えたり、お得に新しいコスメを試せるのは、特に若い人にとっては魅力的なようです。お試しサイズを使ってみて良かった商品は改めて基本サイズを購入した、などの口コミをSNSではよく見かけます。
他にも、プロが選定した季節のお花の定期便や、その時々の天候や収穫状況に合わせて、あえて品種を指定せずに届くお野菜定期便などもあります。

いつでも同じものが手に入る均一的なお買い物とは違い、届いた植物や食材を通じて、季節の移り変わりや、自分では絶対に選ばなかった新しい味覚に偶然出会う心地よさを味わっているのかもしれませんね。
2つ目は「ブラインドボックスで運試し」。
ブラインドボックスとは、その名の通り中身が見えない容器に入った商品のことで、購入後に開封するまで何が出てくるか分かりません。中身はランダムなので、お目当ての商品が出るかどうかのドキドキ感、そして箱を開けた瞬間の「当たった!」という純粋なときめきがあります。
商品そのものを手に入れるだけでなく、運試しにわくわくする時間そのものを、日々の小さなご褒美として楽しんでいる人が増えているようです。
▼「カプセルトイ」の検索数推移

出典:Googleトレンド
カプセルトイの人気も、右肩で上がり続けていますね。個人的には、ニッチなシリーズを見つけるとつい回したくなってしまいます。この間は暗闇で光るカエルの水かきのカプセルトイがあって、やってみました。使い道がないので、たまにぷにぷに触って癒されています。
3つ目は、「ルーレット旅行」です。
モノだけでなく、移動や旅のトレンドにも、この兆しがあらわれており、行き先がランダムで決まる鉄道会社の企画や、航空会社のパッケージプランなどが発売されるたびに大きな話題を呼んでいます。ミステリーツアーとして、仕組み自体は昔からあったものではあるのですが、ランダムな行き先やその感想をSNS中心にお披露目する動きが最近活発に見られる気がします。
どこへ行くかをあらかじめ何時間もかけて吟味するのではなく、偶然引き当てた「まだ見ぬ土地」へ、呼ばれるように出かけてみる。そんなゲーム感覚で未知の街を探検するスタイルが、新しい旅の定番になりつつあるようです。
実は私も、友人と旅行に行く際はランダムに場所を決めることが多く、この間の連休は、日本の小さな離島ばかりが載った本をパラパラめくり、友人がストップ!と言ったところに行ってきました。旅の目的って観光地や名物グルメになりがちですが、全く未知の場所なので旅そのものが目的になって楽しいのです。いざ行ってみたら人も建物も見当たらず、無人の池の周りでぼーっとしたりとか、よくあるんですけどね、、、これもルーレット旅行の醍醐味です。

では、なぜいま私たちは「ランダム」に惹かれるのでしょうか?
まずひとつの理由として、失敗したくない気持ちからくる選択放棄がありそうです。現代人は、損をしたくない、コスパよく生きたい、というプレッシャーから、常に膨大な情報を比較し、決断し続けるという選択疲れを起こしています。最初からランダムと分かっていれば、もし自分の好みに合わなくても運がなかったと納得できるため、あえて選択を手放すことで、お疲れ気味の脳を休ませているのかもしれません。
また、予定調和に飽きてしまった、という心理的背景も考えられます。AIによるレコメンドが優秀になればなるほど、私たちの日常からは予想外のハプニングが消えていきます。快適だけど味気ない、自分好みの情報だけに閉じこもる毎日から脱出して、ランダムな非日常を楽しんでいるのかもしれませんね。
最後に、「ランダムにお任せ」について、新たなビジネスチャンスを考えてみました。
【「ランダムにお任せ」のビジネスチャンスの例】
■ 飲食店での「メニューガチャ」その日のおすすめからランダムでオーダーされる。
■「おまかせワーケーション」予算と日程を入力すると、全国のリモートワークに適した宿がランダムで提案される。
■ イメチェンにぴったり「ランダム美容室」第一印象で似合うスタイルを提案してもらえる。
外国の友人が日本に遊びに来ると言うので、なにしたい?と聞いたところ、「gacha☆」と返事が。え?なにそれスラング?と思いきや、カプセルトイのことで、浅草でも案内しようと考えていた私は拍子抜けでした。けれど聞くところによると、日本のカプセルトイはクオリティが格別らしく、それ目当てで来日する人も増えているのだとか。
せっかくなので友人が来る前に、おすすめのカプセルでも見つけておくか~と思い最寄り駅に新しくできたカプセルトイショップに行ったら、手元に小銭がなく遊べませんでした、、、涙
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

中林 磨美(なかばやし まみ)
博報堂 クリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー
2021年博報堂に入社。一人前のコピーライターをめざして毎日修行中。毛量が増えたので犬用の梳き鋏でカットしてみたら、髪の毛が四角形になってしまって困っています。