PRパーソンだからできる社会課題へのアプローチとは?オズマピーアールが取り組む食品ロス問題

独自のPRメソッドである「社会デザイン発想®」を掲げるオズマピーアール。企業課題の解決だけにとどまらず、食品ロスを中心とした社会課題解決にもPRの発想を活かして取り組んでいます。さまざまなステークホルダーを巻き込むことで推進させる、PRパーソンならではのアプローチとは?「社会コミュニケーション推進室」室長の国友千鶴にききました。
具体事例を上げながら、活動の実態について語った記事はこちら
食品ロス研究の専門家渡辺達朗教授×オズマピーアールが担うファーストペンギン。両者が描く食の未来は
PRは“Love Me”のコミュニケーション。合意形成のプロとして食品ロス対策に参加
-はじめに、オズマピーアールと国友さんご自身の紹介をお願いします。
国友:オズマピーアールは日本のPR産業の草分け的存在として1963年に創業した会社。60年以上にわたり企業のコミュニケーション課題を解決してきたPRのプロフェッショナル集団です。私は1998年に新卒で入社したのですが、創業者から「PRは“Buy Me”ではなく、“Love Me”のコミュニケーションだよ」と言われたことがとても印象的で、この世界に飛び込むことを決めました。広告は売ることが目的ということも多いですが、PRは好きになってもらうことが目的。そのためのキューピッド役になりたいという気持ちでいまも仕事をしています。
はじめは商業施設や消費財メーカーなど多種多様な企業のメディアプロモーションを中心に活動していましたが、現在では食品ロスをはじめとしたさまざまな社会課題に対し、PRの視点で支援する活動を行っています。

-食品ロスの問題に向き合うことになったきっかけは?
国友:2017年に、日本パブリックリレーションズ協会の推薦で「東京都食品ロス削減パートナーシップ会議」に参加したことがきっかけでした。
東京都内の食品ロス削減に向けて、食品製造業や卸売業、小売業、外食産業など食品のサプライチェーンに関わる事業者団体と、消費者団体や有識者が集まって協議する場で、私はPR、つまり合意形成を設計する立場として呼んでいただいたかたちになります。
その後、フードサプラチェーン全体で食品ロス削減や持続可能な取組みを遂行していくため、民間主導のネットワーキングの場として生まれたのが「一般社団法人サスティナブルフードチェーン協議会(以下SFA)」。1社だけでは解決しづらい問題をフードサプライチェーン全体で課題を検討する中立な場として2019年に発足し、私はアドバイザーとして参加させていただくことになりました。
環境、経済、福祉。それぞれの立場の合意形成に「社会デザイン発想®」が役立った
-かなり専門的な会議の場に参加されていたようですが、食品ロスに関する知識はあったのでしょうか?
国友:はじめはまったくの素人でした(笑)。でも、SFAはその分野で日本屈指の有識者が揃う協議会ですので、「こういうことができたらいいね」というアイデアはたくさん出るんです。ただ、それを企画にして実行するのはむずかしい。その点私はずっとPRの仕事をしていましたので、“三方良し”の企画や実行の部分ではお役に立つことができるのではと考えました。もちろん、企業のPRとは大きく異なる活動ですので、とにかくやってみて、みなさんに教えていただきながらひとつひとつ前に進めていくという状態でしたね。

-食品ロスに取り組むことでどんな気づきがありましたか?
国友:食品ロスというと、まず環境問題が頭に浮かびますが、企業から見れば食品ロスはビジネスに関わる問題ですし、食品を受け取る方々にとっては福祉的な問題。ひとつの事象であってもさまざまな視点が必要です。例えば以前は食品を寄付する企業に対して「廃棄しようとしているものを子どもたちに与えるのか!」とお𠮟りをいただくケースもあったと聞いたことがありますし、よいことをしているはずが企業のレピュテーションリスクに転換されてしまう危機感があり、なかなか寄贈が進まないといった状況でした。どの立場の人にとっても「それいいね!やってみたい!」と思っていただける施策にするためにはどうすればいいか、まさしくPRの合意形成のスキルが試されると感じました。
-はじめて飛び込んだ食品ロスの分野でも、PRの経験が役に立ったのですね。
国友:そうですね。オズマピーアールでは「社会デザイン発想®」と呼んでいますが、問い・提唱・巻込・喚起という4つのプロセスで、企業、社会、支援する人、支援を受ける人の三方良しを超えた四方良しの“最適解”を生み出すことが私たちの得意技。あらゆるステークホルダーにとって、協力したくなる、参加したくなる取り組みはどんなものかを設計し、それがいずれ、我々の手を離れて自走可能な仕組みになることが理想だと考えています。

地域で自走可能なスキームへと進化した「ハートドライブキャンペーン」
-特に「社会デザイン発想®」が活きたと感じたエピソードはありますか?
国友:2023年に東大阪市で行った「ハートドライブキャンペーン*」は、印象的な事例のひとつですね。
*給食がない夏休みや冬休みなどの期間中、企業・団体から募った食品を子ども支援・福祉団体に寄贈するSFAの活動。
多くの場合、余剰の食品はフードバンクや社会福祉協議会が受け取り、子ども食堂など地域の支援団体を通して子どもたちに届けられるのですが、その配送に関わる人や車両の確保、
いわゆる「ラストワンマイル」の確保が課題になっていました。
東大阪市で行った事例では、東大阪市へ子ども食堂への寄贈をご相談し、市内の子ども食堂のネットワーク内で寄贈を受け取りたい団体へのヒアリングを行っていただきました。そして、市内に就労継続支援事業所を持つ社会福祉法人の協力を得て、施設利用者の方々に寄贈食品の仕分けや子ども支援・福祉団体への配送を担っていただいたんです。いつもは支援を受けていらっしゃる方が、支援する立場になられる。
この取り組みは実際に参加された就労継続事業所の利用者の皆さんや、社会福祉法人、そして受け取った子ども食堂のみなさんに大変好評をいただきました。あの時の“ありがとう”といわれることがうれしかった、次はないの?とおっしゃる施設利用者の皆さんを受けて、いまでは東大阪市内の就労継続支援事業者が複数法人参加して「東大阪フードバンク推進連絡会」が立ち上げられて、実装されています。はじめに行政や社会福祉法人、企業をつなげるお手伝いはしましたが、その後は自主的に取り組みを継続いただいていて、いわゆる行動変容のところまで達成できた。これはとてもうれしいできごとでしたね。私もメンバーとしてかかわり続けています。
-さまざまな立場の人を巻き込むことで、自発的なアクションを生み出すことができたということですね。
国友:はい。我々PR会社は、クライアントからの依頼を受けて企業課題を解決していくのが基本の仕事ですが、これからは我々が掲げた社会課題にさまざまなステークホルダーを巻き込みながら解決に導いていく、そんなPRの活かし方に未来を感じています。
オズマピーアールでは2023年から「社会コミュニケーション推進室」を設けて、その新たなスキームの実現に取り組んでいるところ。私自身、ゼロから食品ロス問題と子どもたちの食の福祉に取り組んできましたが、そのなかで築いてきたメソッドは他の社会問題にも活かせると考えています。
目指すは「社会デザイン実装」。多くの人に愛される取り組みで、新しいあたりまえをつくる
-企業のPRと社会問題への取り組みで「違い」を感じられる部分はありますか?
国友:さまざまな立場の方々を巻き込んで、合意形成をしながらアクションにつなげていく、という基本は変わりません。しかし、巻き込んでいく対象が企業であったり自治体であったりボランティアの方であったり、実に多種多様。問題意識も違えば見ている時間軸も異なるステークホルダーに対してどのように向き合うかは、社会課題ならではのむずかしさかもしれません。
-そのなかで国友さんが大切にしている姿勢は?
国友:とにかくお相手の立場に立って提案しつづけることですね。丁寧に対話をして、それぞれのステークホルダーの共通項を探していく。「社会デザイン発想®」では「最適解」と呼んでいますが、みんなが「いいね!」と言ってくれる最適解に仕立てて、かつ永続的に実践できる仕組にしないと、持続可能な取り組みにはならないんです。これってまさしく“Love Me”のコミュニケーション。たくさんの人に愛される取り組みでないと、「新しいあたりまえ」にはならないわけですから。
私はPRは“For myself”ではなく“For the others”の仕事だと信じてこれまでやってきました。誰かのために機能するのがパブリックリレーションズなら、社会を少しでもよくすることに貢献できることは何よりの幸せ。これまでのクライアントワークの集大成だと思って取り組んでいます。
AIの発達が目覚ましい昨今ですが、異なる立場の方々を巻き込んで共に合意形成していくというのはAIにはできない仕事。そこはPRパーソンとしてだからこそできるのだと誇りを感じている部分です。
「社会デザイン発想®」をこえて、実際に自走できる仕組みをつくる「社会デザイン実装」まで推し進めるのが私たちの使命。そのためにとにかく動いて、オズマピーアールだからこそできる社会課題への取り組みを推進していきたいです。
SFAの活動や今後の取り組みについて、こちらの記事も併せてお読みください。
食品ロス問題の専門家×ファーストペンギン。SFAとオズマピーアールが描く食の未来

※肩書は取材当時のものです

国友 千鶴
株式会社オズマピーアール
社会コミュニケーション推進室 室長
大手デベロッパー・消費財・飲食メーカーやキャラクター ビジネス・金融・保険など多岐にわたる業種のPR業務に従事。多業種でのB to B、B to Cコミュニケーションの 広報を中心としたコミュニケーション課題解決に向けたコンサル・実務サポートの経験を活かし、食品ロス削減×子どもたちの食の福祉を解決するプロジェクト「こどもスマイリング・プロジェクト」を推進。