博報堂が考える、生活者に支持されるコンテンツのつくり方と届け方【vol.4】日本のエンタメコンテンツの魅力を世界に響かせるFANFARE(ファンファーレ)

メディアの多様化が進む今。一人ひとりのユーザーの心をつかみ、深く響くコンテンツの生み出し方、その届け方もまた多様化しています。メディア企業に限らず、事業会社を含めて多くの企業が事業運営の一環として“コンテンツ”の提供に取り組むなか、博報堂でもこのテーマを模索しています。 本連載では、博報堂DYグループのコンテンツ制作・発信における最前線を紹介。今回は、今年1月に始動したグローバルチーム「FANFARE(ファンファーレ)」の活動にフィーチャーします。アニメをはじめとする日本のエンタメコンテンツを世界に発信する新たな取り組みについて、コンテンツプロデューサーである中川富由基、水越陸太、吉住尚次郎の3人に話をききました。
アニメビジネスを知り尽くす博報堂DYミュージック&ピクチャーズの知見と、世界各国の情熱を持ったローカルスタッフの存在が鍵
-はじめに、FANFAREの成り立ちについて教えてください。
中川:2026年1月に、博報堂のコンテンツデザイン事業ユニット(取材当時)と、海外事業体である「Hakuhodo International Unit(以下HIU)」、そして「博報堂DYミュージック&ピクチャーズ(以下博報堂DYMaP)」のグループ横断で生まれたグローバルチームになります。
MaPは映画やアニメ作品の製作出資から、劇場配給、TV放映などの権利まで扱ってきた会社。一方、HIUは世界19の国と地域に展開し、グローバルな広告事業を支援しています。
日本のエンタメコンテンツは世界で注目を集める存在ですので、海外クライアントからの問い合わせも年々増えている状況です。そういった広告事業の支援とあわせて、日本のコンテンツを効果的に世界へ発信するためにIPホルダー側の支援も行うチームとしてFANFAREを立ち上げました。

-FANFAREのサービスにはどのような特徴があるのでしょう?
水越:日本のエンタメコンテンツのポテンシャルを最大限に活かしながら、世界各国、それぞれの文化に合わせた展開を支援するのがFANFAREです。コンテンツの企画製作や出資、買付けまで関わり、アニメビジネスを360度知り尽くしているMaPの知見と、HIUが世界に持つステークホルダーとのコネクションや人材、そしてマーケティングノウハウが武器になると考えています。
中川:日本のコンテンツが世界で人気ということは広く知られていますが、その人気は現在進行形で製作されているものだけでなく、過去の作品が注目されるというケースもあるんです。たとえば、インドでは「おぼっちゃまくん」が人気で、インド製作で続編がつくられました。新作をつくるだけでなく、旧作のなかからポテンシャルを秘めた作品を掘り起こすこともできますし、そういった現地のファン文化を理解し、その国らしいコンテンツの魅力を届けるためにも世界各国のローカルスタッフの存在が重要になってきます。日本のエンタメコンテンツを愛する熱量の高いスタッフが世界各国に存在することも、FANFAREの強みですね。
インドネシア・インド・サウジアラビアで実施した、日本のアニメ IP に関する調査
-具体的にはどのような活動をしているのでしょう?
吉住:FANFAREとしての活動第一弾として、インドネシア・インド・サウジアラビアで日本のアニメ IP に関する調査を実施しました。グローバルクライアントから日本のIPを活用したいという相談をいただきますが、どの国でどんな作品が人気なのか、今後どのような需要が生まれそうかということについてはデータがない状態だと感じていました。一度体系的に調査をしようということで今回の調査を実施しました。
(博報堂、インドネシア・インド・サウジアラビアでの日本のアニメIPに関する調査を実施 課題と意外な現地トレンドが判明:https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/123113/)
-インドネシア・インド・サウジアラビアの3カ国を選んだ理由は?
吉住:今回の定量調査を行う前にデスクリサーチと業界有識者へのインタビュー、博報堂海外現地拠点職員へのヒアリング等を行って、マーケットサイズやアニメファンの規模、市場の成熟度、参入障壁・規制状況、リソースといった観点を総合的に判断して、インドネシア・インド・サウジアラビアの3カ国で定量調査を実施することを決めました。

中川:我々は海外における日本のアニメコンテンツ市場を、大きく「ファン育成フェーズ」と「収益化フェーズ」に分けて考えています。アメリカや中国は「収益化フェーズ」である一方、インドやサウジアラビアは「ファン育成フェーズ」、インドネシアはちょうどその中間の移行期にある状態。今後の成長を見込める国について調査することで、新たな発見ができればという期待もありました。
-とくに印象的だった調査結果はありますか?
水越:アニメ作品で最も重要だと思うポイントについて質問したのですが、インドネシアでは「ストーリー構成」が、インドやサウジアラビアでは「キャラクターデザインやキャラ設定」が高い割合を占めることがわかりました。アニメ市場がある程度成熟しているインドネシアにおいては、ストーリー構成や映像美・ビジュアルといったアニメーション作品としての完成度が評価され、「ファン育成フェーズ」であるインド、サウジアラビアではキャラクターそのものを楽しむことが入り口になっていると考えられます。

吉住:日本とインドネシアは、比較的地理的条件が近く、文化的な共通項が多いこともあり、日本のアニメ・マンガがベースとして持つストーリーや価値観に共感しやすいのではないかと思います。アニメ市場の成熟度によって、そしてその国の文化的な背景も捉えながらローカライズしていく大切さをあらためて感じました。
国ごとに特有の人気を誇るアニメ IPの存在。秘めたるポテンシャルにも注目したい
中川:あとはやはり、国ごとに特有の人気を誇るアニメ IPがあるということ再度確認できました。インドでは「忍者ハットリくん」や「ベイブレードシリーズ」の認知率が3割を超えるという特徴的な結果になっていましたし、サウジアラビアでは「キャプテン翼」や「イナズマイレブン」が上位にランクイン。サッカー人気が高いお国柄が反映されていると感じました。
吉住:国ごとに差がある一方で、今後はその差が縮小する可能性がある事もポイントです。例えば、忍者ハットリくんがインドで人気なのは2004年頃にインドのテレビ番組でヒンディー語、タミル語、テルグ語などインドで利用されている様々な言語に吹き替えられて放送されていた事が要因として大きいと思います。当時の子供にはテレビで、自分たちの言葉で放送されているアニメなので親しみやすかったのでしょう。その世代が大人になって今でもハットリくんの人気を下支えている、という構造になっていそうです。
一方で今はストリーミングサービスがアニメ視聴において主流となりつつある時代なので、すべての国で同じタイトルを視聴する事が可能になりました。鬼滅の刃が三か国全てでランクインしているその象徴のように思えます。
このあたりをどう捉えるかがIPホルダーにとっても、IPを活用した海外マーケティングを行いたい企業にとっても重要になると思います。
中川:今回のリリースではトップ10までご紹介していますが、実際にはもっと多くの日本アニメIP作品を対象に調査を実施しているので、そのなかには今は埋もれてしまっているけれども、今後ヒットするポテンシャルが高い作品も入っているかもしれません。

水越:今回の調査は作品ごとの市場規模が測れるように設計されていて、放送・配信、グッズ販売、イベントなど、それぞれの領域で国ごとにデータをとっています。さらに、現在の市場規模だけでなく、「これからどの作品を見たいか、どのグッズがほしいか」といった将来に向けたデータをとっているのもポイント。現在から未来への伸び率も算出することができるので、作品がもつ秘めたるポテンシャルについても推計することができます。ご興味を持たれた方はぜひお問い合わせいただければと思います。

世界のコンテンツ産業の中心に立てるはずの日本。権利を守りながら発展をサポートしていきたい
-今後の活動についてどのような展望を描いていますか?
中川:今回行ったような各国の調査は定点調査的に続けていきたいと考えています。海外クライアントが日本のアニメ作品をマーケティング活用する際、我々にご相談いただければ、調査結果などをもとにどんな作品が最適か、データの裏付けをもって提案することができます。また、日本のIPホルダーが海外進出する際にも、どんな作品の方向性がいいか、製作段階からサポートさせていただくことも可能です。
吉住:新作だけでなく既存作品のリブートという意味でも、今回のような調査データが役立てられますよね。あとはやはり、各国のメディアに精通した現地スタッフの存在も大きい。アニメとの協賛キャンペーンなど、最適なメディア選定から実装まで、現地スタッフとともに支援していきたいです。
中川:たとえばインドでは「Mela! Mela! Anime Japan!!(メラ!メラ!アニメジャパン!!)」という日本アニメの大型イベントが行われていますが、そういったイベントを他国で開催したい場合も、FANFAREの現地スタッフがサポートできます。
よく耳にするのは、日本のアニメキャラクターを起用したいと考えてもどこに問い合わせていいかわからないというお悩み。そんなときはFANFAREにご相談いただければ、キャラクター選定から、キャンペーン実装までトータルでサポートさせていただけると思います。
水越:いまや世界のコンテンツ産業は、半導体に並ぶ巨大市場へと成長しています。日本はその中心に立てる国のはず。そのなかで、日本と世界をつなぐ役割を我々FANFAREが担っていきたいですよね。
中川:そうですね。日本のアニメ作品・キャラクターなどが注目される中、しっかりとその権利を守りながら、さらに発展するためのお手伝いができればと考えています。
※肩書は取材当時のものです


中川 富由基
株式会社博報堂 コンテンツデザイン事業ユニット 事業経営企画室 総合企画部
コンテンツプロデューサー
2014年博報堂入社。クリエイティブ/マーケティング/デジタルを統合したコミュニケーションプランニングの知見と、サービス開発やサービスの体験設計の知見をかけ合わせ、マンガIP開発や新規事業創出と成長を推進。

水越 陸太
株式会社博報堂 コンテンツデザイン事業ユニット 事業経営企画室 総合企画部
コンテンツプロデューサー
2017年博報堂入社。保険/通信/食品/日用品等のマーケティング支援業務や、DXソリューション開発に従事。現在は、プロスポーツチーム/芸能事務所等のファンマーケティング支援業務や、自社のコンテンツ事業の戦略立案を推進。

吉住 尚次郎
株式会社博報堂 コンテンツデザイン事業ユニット 事業経営企画室 総合企画部
コンテンツプロデューサー
2017年博報堂入社。ストラテジックプラニング職として、アプリゲーム、クレジットカード会社、お菓子メーカー、消費財メーカー、小売流通企業などのマーケティング領域を担当。 2025年より現職。外資系エンタメ企業とのJV設立・事業開発等を推進。