ヒット習慣予報 vol.407『朝クリ』
ヒット習慣メーカーズの中川です。
みなさん早起きしていますか?私は最近、長らく染みついていた夜型から朝型に生活スタイルを切り替えたのですが、そのせいか、すこぶる体調が良いです。早起きしてすぐ会社に行くのではなく、朝の時間を有効活用して、軽く運動をして、お風呂に入って、ちょっとした個人的な創作活動をしていたりします。何をしているかは秘密ですが(笑)。朝の創作活動は、なんだかとても達成感を得られて、自己肯定感まで上がってしまうという副次的な成果ももたらしてくれました。もともと自己肯定感が低すぎたからかもしれませんが。ひょっとして、こういう人って増えているのではないか? と思い、調べてみると多くの事例が見つかりました。これまでの「朝活」は、勉強やジョギングといった「自己研鑽」が主流でしたが、今回見つけたのは一日の始まりに「あえて、自分のためだけの小さな作品を作る」というもの。そんな朝のクリエーション習慣、略して「朝クリ」というテーマでお送りしようと思います。
一つ目の事例は、「モーニングページ」です。
モーニングページとは朝思いついたことを、手書きでノートに自由に書き連ねる習慣。単なる日記の記録ではなく、「自分の内面を吐き出す」という創造的プロセス。良いことも悪いことも、文章を整える必要もなく、自動筆記のごとく書き出していきます。SNSを見ると、実に多くの人が実践していることが見て取れました。「頭がスッキリする」「自己肯定感が高まる」「アイデアがひらめく」「一日を穏やかにすごせる」などのポジティブな声が散見され、生産性と創造性を高める習慣として広がりつつあります。

次に、「マイクロ・クリエイティブ」の拡がりです。
朝の限られた15分~30分を「自分専用のアトリエ」に変える、「マイクロ・クリエイティブ」の拡がりです。これは、本格的な創作活動というよりも、タブレットでのスケッチ、生成AIを駆使した短い楽曲制作、あるいは1ユニットだけの刺繍など、「短時間で必ず完成(もしくは一区切り)させる」ことをルールにした創作習慣を指します。SNSでは「#30分チャレンジ」といったハッシュタグと共に、様々なイラストや文章が投稿されています。中には、参加者が集まって黙々と創作する「もくもく会」なるものを実施するケースもあるようです。

最後は、「生成朝食」です。
朝食づくりを「家事」から「クリエイティブな実験」へと昇華させる動きです。これまでの朝食は、手早く済ませる「補給」や食べたいものを買う「消費」が中心でした。しかし今、冷蔵庫の余り物や栄養バランス、時短の希望に合わせて、オリジナルの朝食レシピを生成AIに考えてもらって作る人々が増えています。Googleで「朝食」の検索数の推移をみると、2020年に凹んだ後、急激に伸びていることがわかります。試しに生成AIに「マンネリな朝食を解消する15分でできる超簡単レシピは?」と訊ねてみると、「レンジでふわふわ卵焼き」「マグカップオムライス」「パンカルボナーラ風」など、一度やってみたくなるユニークなものばかりでした。
▼「朝食」検索量推移(2004年以降・日本)

出展:Googleトレンド
では、なぜ「朝クリ」は広がりつつあるのでしょうか。
一つ目は、「消費疲れへの反動」です。朝起きると、ついスマホをいじってしまいがちですが、情報過多になってしまい、朝から疲れを感じることも少なくありません。そんな受動的な朝から創造的な朝にシフトさせることで、前向きな気分や自己肯定感が得られるのでしょう。二つ目は、「余白を楽しむ」です。効率化が重視される昨今の働き方においては、朝から晩まで隙間なくスケジュールが続いていきます。そんな中、わずかな時間でも、余白を作り、自分らしさを解放させたい欲求が高まっているのではないでしょうか。
このように広がりつつある「朝クリ」ですが、そこには新たなビジネスチャンスが広がっています。
【「朝クリ」のビジネスチャンス例】
■ 筆圧や書く速度から「ストレス度」を測定し、AIが「本日のおすすめアクション」を教えてくれる「モーニングページ専用ペン」の開発。
■ 朝のマイクロ・クリエイティブを発信し、一日経つと自動で消える「朝限定の“消える”創作SNS」の運営。
■ 好みの食材や冷蔵庫の中身を入力しておくと自動的にユニークな時短朝食を提案してくれる「生成朝食アプリ」の開発。
など
前回のコラムは「ナイトフルネス」で、今回は「朝クリ」と、大きく言えばどちらも余白時間について語っており、、、どれだけ自分を解放する時間を欲しているんだと、少し驚いている自分がいます(笑)ちょっとずつでいいから、コツコツそういう時間を積み重ねてことが大事なのかもしれませんね。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

中川悠(なかがわ・ゆう)
クリエイティブ局 チームリーダー / ヒット習慣メーカーズ リーダー / エグゼクティブクリエイティブディレクター
メーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
ECDとして、広告のみならず商品、サービス、事業にいたるまで幅広い領域に携わっている。今年は、自然の音を収録して楽曲づくりをするフィールドレコーディングをやってみたいと思っているのですが、なかなか進みません。