【レポート】京都大学経営管理大学院で博報堂DYグループ社員が登壇。日本の伝統文化「道」と「SBNR」から紐解く、これからのグローバルリーダーシップとビジネス創出

2026年1月6・20日、京都大学経営管理大学院(ビジネススクール)にて、博報堂DYグループの社員による寄附講義が開催されました。本講義では、博報堂の戦略ブティックPaasons Advisory部長の江藤圭太郎と、博報堂DYグループのSIGNINGの代表取締役共同CEOの牧貴洋が登壇しました。 現代の複雑な経営課題に対して、昨今世界的に注目を集める新たな潮流「SBNR(Spiritual But Not Religious)」の視点がどのような示唆を与えるのか。熱気を帯びた講義とワークショップの模様をレポートします。

日本の「道」の文化から、現代の企業経営のヒントを探る

京都大学経営管理大学院は、先端的なマネジメント研究と高度に専門的な実務との架け橋となる教育体系を開発し、幅広い分野で指導的役割を果たす個性ある人材を育成することをミッションとしています。今回行われた講義のタイトルは「日本の伝統文化とグローバルリーダーシップ」です。
日本には、茶道、香道、華道など、「道」として連綿として受け継がれ発展してきた文化領域があります。そこでは、「道」それぞれの思想や、それを体現する技法やしつらえの確立、そして後継者の育成が行われてきました。これは、現代企業におけるミッション・ビジョン・パーパス、そして戦略、組織、人材といった一連の考え方と相似形で捉えることができます。今回の講義では、そうした日本の「道」の文化から学び、経営学の視点によって企業経営やリーダーシップに対する学びを得ることを目的としています。

世界で広がる「SBNR」の潮流と、日本が持つ見えない価値

講義初日は博報堂のフィロソフィーである「生活者発想」に関する解説をしたうえで、「SBNR」をテーマに新しいマーケットの兆しについて話しました。SBNRとは「Spiritual But Not Religious(宗教的ではないがスピリチュアル)」の略称です。特定の宗教への信仰を持っているわけではないものの、精神的な豊かさを求める人々を指し、欧米を中心にその数は増加しています。講義では、このSBNRを「Soul(こころ):自分自身を見つめなおす」「Body(からだ):身体感覚を研ぎ澄ます」「Nature(しぜん):自然にふれる」「Relationship(つながり):他者・先祖・歴史とのつながりを感じる」という4つの価値観の頭文字として再解釈し、解説をしました。

先に触れたような日本の伝統文化にはこのSBNRの価値観が深く根付いています。禅に見られる「内省の哲学」、弓道などの武道における「身体知」、八百万の神々や山岳信仰にみられる「自然への畏怖」、そしてお祭りなどに代表される祭祀儀礼を通じた「つながり」です。これらを特定の「宗教」としてではなく、日常の中の「精神文化(リチュアル)」へと転換させることで、社員の働きがいや顧客のブランドロイヤリティを高め、企業競争力を生み出す新時代の日本型経営メソッドになり得ることを、講義では提言しました。

SBNRの視点で社会課題の解決に挑む、白熱のワークショップ

講義2日目は、学生たちによるグループワークが実施されました。課題のテーマは「SBNRという考え方(ターゲット・ライフスタイル・価値観)を参考に、社会課題に対応した新たなビジネスアイデアを考える」という実践的なものです。

学生たちは6つのグループに分かれ 、地方の人口減少やオーバーツーリズムなどの「観光」をめぐる課題、後継者不足など「伝統文化」をめぐる課題、孤独や孤立の増大など「ソロ社会」をめぐる課題について向き合って議論しました。

グループワークには博報堂PaasonsやSINGINGのメンバーも参加し、活発なディスカッションが行われました。その後の発表では、物質的な豊かさだけではない、「心の豊かさ」を起点とした創造的で人間味あふれるビジネスアイデアが次々と提案されました。

結びに

先行きが不透明な時代において、日本の伝統文化が培ってきた「目に見えない価値」をビジネスに実装する力は、これからのグローバルリーダーにとって強力な羅針盤となります。博報堂DYグループは、今後も独自の「生活者発想」と未来の兆しを捉えるクリエイティビティを活かし、次世代のリーダー育成と社会課題解決に向けた産学連携の取り組みを推進してまいります。

※肩書は取材当時のものです

江藤 圭太郎 博報堂 Paasons Advisory チームリーダー エグゼクティブマーケティングプラニングディレクター

2005年博報堂入社。国内外の企業の戦略業務に従事。現在は主に世界的なIT企業の業務に携わり包括的に戦略をリード。2018年博報堂社内に戦略ブティック「Paasons Advisory」を立ち上げる。著書に「ポケッツ!(弘文堂)」「マーケティング基礎読本(日経BP社)」。「週刊エコノミスト(毎日新聞社)」特集記事寄稿 など。アジア初開催の「Advertsing Week Asia 2016」に登壇。「ad:tech Tokyo 2019」登壇。

牧 貴洋 株式会社SIGNING 代表取締役 共同CEO/Strategist

山形県鶴岡市生まれ。2007年博報堂入社。様々なクライアント企業の事業・ブランド戦略開発、マーケティング・コミュニケーション立案に携わる。2020年「未来の兆しを実装する」クリエイティブカンパニーSIGNINGを設立。様々な企業のビジョン・コンセプト開発、事業戦略や体験開発に携わるほか、都市開発、地域創生・産学共創プロジェクトなども手掛ける。山形大学連携研究員。鶴岡ガストロノミックイノベーション計画ブランド戦略アドバイザー。ACC TOKYO CREATIVE AWARDS / BRAND OF THE YEAR 2021 / 広告電通賞など。近著『SBNRエコノミー 心の豊かさの探求から生まれる新たなマーケット』。

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