AIは組織の「伴走者」。博報堂のAI思想がJTのIT部門にもたらした「共創」によるブランド構築の真価

博報堂DYグループは、AIを単なる業務効率化の手段ではなく、人間の創造性を拡張するパートナーと定義する「Human-Centered AI(人間中心のAI)」という哲学を掲げている。この思想を具体的な組織課題の解決へと実装した事例が、日本たばこ産業(JT)のITグループにおけるブランディングプロジェクトだ。激化するIT人材の採用競争を背景に、JTのIT部門は「自らが目指す価値」を再定義し、社内外へ発信する必要性に迫られていた。博報堂は、トップクリエイターの思考プロセスを再現するAIツール「STRATEGY BLOOM CONCEPT」を投入。専門知見を持たないIT部門がAIと対話しながら、自律的にブランドストーリーを構築するプロセスを支援した。最終的に50名のエンジニアを巻き込み、組織の共通指針と具体的なアクションプランを策定するに至った「共創」の舞台裏について、両社の担当者に話を聞いた。
※本内容は「MarkeZine」に2026年3月18日に掲載されたものです。
https://markezine.jp/article/detail/50491
「非専門領域」の壁をどう超えるか。JTのIT部門が博報堂との“共創”を選んだ理由
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは今回、JTのIT部門がブランディングに取り組むことになった背景をお聞かせください。
加藤(JT):正直に申し上げると、当初は私たちも「ブランディングの経験者がいないIT部門で、本当にテクノロジーに関するブランディングができるのか?」という戸惑いがありました。しかし同時に、当社のIT担当役員が掲げた「JT=テクノロジー実践活用の先進企業」というテクノロジー戦略をいかに組織へ浸透・活性化させ、その価値をどう伝えていくか、という課題に取り組む必要性も強く感じていました。
当社はIT人材の採用を積極的に行っているのですが、現在IT人材の獲得競争は激化しています。世間的に「JT=テクノロジー実践活用の先進企業」というイメージが薄いなか、採用を強化するためには、まずは自分たちが何を目指し、どんな価値を提供しているのかを定義して社内外に発信し、我々のことを認知してもらう必要があったのです。

MZ:そこで「ブランドストーリー」を確立する取り組みを始められたのですね。
加藤(JT):はい。昨年から社内ブランディング活動を展開したり、当社の執行役員自らラジオやアカデミアのなかでIT部門の方向性について発信を開始しておりました。発信への着手や施策化はスムーズにスタートできており、個々の活動は良かったのですが、PRやIR、広報などの経験もないので、「果たして今まで、ブランドに関して一貫性を持って活動できていたのだろうか」と立ち戻って考えることになったのです。
そこで出てきたアイデアが、全員で方向性を共有し、統一したブランドストーリーを作るということでした。こうした経緯で、博報堂さんに相談し、共同でステートメントの作成に取り組むこととなったのです。
MZ:博報堂に一任するのではなく、共同作業を選んだのは、どのような思いがあったからでしょうか。
長縄(JT):すべてを外部に委託して、“一見整ったブランドストーリー”を作ってもらうことは簡単かもしれません。しかし、それが組織の実情とかけ離れ、現場で働く社員の納得感が得られないものになっては本末転倒です。
自分たちの手でコンセプトを練り上げ、言葉に落とし込む。そのプロセスを通じて社員同士が意見を交わし、認識を一つにすることこそが、プロジェクトの真の価値だと考えたのです。

※肩書は取材当時のものです