THE CENTRAL DOT

ヒット習慣予報 vol.287『ウェルビーイング就活』

2023.10.10
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの石井です。

突然ですが、みなさんは普段どんな働き方をしていますか?僕は、基本的にその日の気分で働く場所を決め、先輩に直接相談したい日は会社に出社したり、家にこもって作業したい日はテレワークを行ったり、気分を変えて落ち着いて作業したい日には図書館などに行ったりと、働く環境は日によって様々です。その日の自分に適したベストな環境を選択することで、無理をしないニュートラルな状態で取り組めるので、憂鬱な気持ちになることなく、ポジティブな気持ちを保ちながら生活することができています。世の中的にも「ウェルビーイング」という考えが普及し始め、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態で働く人が増えています。
Googleトレンドで「ウェルビーイング」を検索してみると、近年、検索ボリュームが右肩上がりに徐々に伸びていることがわかります。

出典:Googleトレンド

そんなウェルビーイングという考えは、主に社会人に注目されがちですが、就活生の中でも注目を集めているようです。就活は精神的にきついと感じる人が多く、多少の気持ちの凹みなどは誰でもあると思いますが、精神的に過剰に追いつめられて就活鬱になってしまう人も少なくないとのこと。コロナ禍で学生生活が制限されてきた影響もあり、特に就活鬱の傾向が強まっている中で、できるだけ心身と社会的な健康的な状態でいるために、自分に適した環境で就活を行い、前向きに持続的な将来の選択をしていく学生が増えているようです。

今回、ご紹介する「ウェルビーイング就活」は、就活において、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態でいるために、自分に適したベストな環境を選択し、ありのままの自分に向き合って就活を行うという新しい社会の兆しに着目しました。ここからは、具体的な動向を一つずつ紹介していきたいと思います。

まずは、「サウナ就活」です。最近、若者の間でブームとなっているサウナですが、サウナ施設の休憩処や併設されたコワーキングスペースで就活とサウナでの休暇を両立しながら、気楽に取り組む就活が注目を集めているようです。サウナ施設で整ったのちに、エントリーシートの作成やオンライン説明会などのイベントなどに参加することで、自宅や学校よりもリラックスした状態でありのままの自己分析や思考の整理に取り組むことができます。また、オンラインでの就活だけでなく、サウナ施設で行われるオフライン選考イベントに参加する学生もいるようです。サウナ施設のオープンスペースで開催される企業説明会に参加したり、企業の社員と一緒にサウナに入りOB/OG訪問のように交流をしたりしながら、疑問点の解消や自分のやりたいことを明確にすることができます。サウナの本場フィンランドでは、「サウナのなかでは、嘘をつけない」ということわざがあり、学生も社員もサウナを共通項に素の状態でざっくばらんに交流することができるため、普段の就活イベントよりも気負わない状態で解像度の高い企業研究や自己分析ができるようです。

次は、「離島就活」です。
最近、短期的に離島に移住し、これまでの環境とは全く別の環境に身をおいて行う就活が注目を集めています。従来の就活といえば、企業オフィスを訪問したり、自宅や自宅周辺の施設で作業をしたりなどが普通でしたが、コロナ禍の影響でオンラインでの就活(説明会/インターンシップ/面接など)が増えたことを利用して、普段暮らしている街から離れ、自然豊かな離島に数週間身を置くことで、ワーケーションなどと同じように就活とバケーションを両立して楽しみながら、前向きに就活に取り組める状況を生み出しているようです。ストレスが溜まりやすい就活では、自然豊かで開放的な環境はかなり効果的なようで、比較的リラックスした状態を保つことができることが離島就活の人気の要因となっています。また、島で行われるインターンシップへの参加も人気です。都会ではできない就業体験を通じて、地域の人と交流しながら地域課題に向き合うことで、自分が社会人として、今後世の中にどのように貢献していきたいのかを素直に見つめ直すことができるようです。

最後は、「ナイト就活」です。
最近、就業中の社員と交流するのではなく、就業後の社員とアフター5に交流する就活が注目を浴びています。本来、就活は社員が働いているコアタイムの中で行われるものですが、あえて1日の仕事を終えた社員とアフター5で交流する学生が増えています。就活の場においては、学生は緊張や相手によく思われたいという意志が働き、本音と異なる発言をするなど自分を取り繕ってしまうなど、ありのままの自分を表現することが困難なようです。そこで、終業後の社員とアフター5で交流することで、企業の社員にとっても17時以降はオフの時間帯ということで、社員としてではなく一個人としてフランクに接してくれるため、互いに本音が話せる場となっているようです。最近では、アフター5の就活イベントも多く、一方的に情報を提供する会社説明会やOB/OG訪問とは異なり、学生と社員が同じ目線でざっくばらんに交流できるような作りになっているため、普段以上にリラックスした等身大の自分で参加することのできるようになっています。

いくつか事例を紹介してきましたが、なぜここまで「ウェルビーイング就活」が盛り上がっているのでしょうか。
理由として、Z世代の特徴の一つである「等身大の自分でいたい」という想いが根強く、これまで内定を獲得するために背伸びした自分を見せる傾向が強かった就活においても、あえて自分を飾ることなく、ありのままの自分を評価してもらうことが将来の自分のためになるという本質を捉え、自分らしくいれる方法を模索し始めたのではないでしょうか。
また、コロナ禍を境目に世の中的にリモートワークやワーケーションなど、社会人の働く環境が多様化したこともあり、学生も将来の働き方を意識しながら就活を行うため、就職活動という場で先んじてオンラインを利用しながら就活とバケーションを両立するなど、ポジティブなマインドを持続的に保ちながら、より自分に適した効率的な手段を就活を実践し始めたのではないでしょうか。

最後に、「ウェルビーイング就活」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「ウェルビーイング就活」のビジネスチャンスの例
■水族館で行う就活イベントやコワーキングスペースの運営
■就活生向けウェルビーイング雑誌の制作
■就活生向けワーホリプラットフォームの開発
など

「就活はご縁」とよく言いますが、当時の僕はそんなはずはないと思っていましたが、いざ入社してみると本当にご縁だったんだと感じました。就活はご縁だと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

石井拓弥(いしい・たくみ)
九州博報堂 / 博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2021年九州博報堂に入社し、統合プラニング職に従事。
2023年から博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に所属。
アウトドア派。旅行が趣味で、1番好きな国はハワイ。老後はハワイに住みたいと思っている。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事