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ヒット習慣予報 vol.281『裸足感覚』

2023.08.29
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。

ここ数年、暇を見つけてはとある山の神社に参拝に行きます。山の神社には拝殿よりも山奥に奥宮という場所があることが多く、その神社も例外ではありません。ある日、奥宮に向かって約1時間、木の根や岩で覆われた山道を足元に気を付けながら歩いていると突如奇妙な集団に出くわしました。5-6人のその集団は全員裸足だったのです。驚いて聞いてみると、定期的にその山を裸足で登っているのだとか。特にスピリチュアルな類ではなく、裸足だと気持ちいいからやっているとのこと。そしてそれを見ていた僕の友人が感化され次から裸足で登るようになったのです。僕はまだ裸足で登ってはいませんがなんとも気になるエピソードで、調べてみると「裸足」が注目されているという記事が散見されたので今回のテーマ「裸足感覚」を取り上げることにしました。

「裸足感覚」とは、裸足、もしくは何かしら履いているけれど裸足感覚を味わうという習慣です。Googleトレンドで「裸足」というキーワードを見ると今年に入ってからグッと検索数が伸びているのがわかります。具体的に「裸足」に関連するどんな習慣が広がっているのでしょうか。

<「裸足」に関する検索数の推移>

出典:Googleトレンド

まずは、「アーシング」です。
素足や素手など素肌で大地に触れることで、自然を直に感じられるだけでなく、体内に滞留した電気を放電させるといわれている、カリフォルニア発祥の今話題の健康法です。コンクリートではなく、公園の芝生とか海の砂浜とか川辺とか農作業のときの田畑とか、自然そのものと触れること。たしかに想像するだけでも気持ちがよくてストレスも解消されそうですし、言われてみればそういう機会ってかなり少ないですよね。僕は海に行くときくらい。ごくたまに広々とした公園の芝生で裸足になることもありますが、芝生の感覚がとても好きです。Instagramで#アーシングと検索したら、11万件以上も投稿がありました。言葉としても広がっています。

続いて、「ベアフットシューズ」。
冒頭に書いた裸足で登山とか気になる!と思いつつ、さすがに自分はそこまでできないです…という僕のような人も多いでしょう。そういう人の注目を集めているのがベアフットシューズ。ベアフット(Barefoot)とは「裸足・素足」という意味で、靴底が極端に薄いシューズのこと。極限まで薄いペラペラのものもあって興味深いです。少し前からあるのですが、裸足感覚を味わえる上に、足本来の力を引き出してくれるとの触れ込みで、普段使いのみならず、登山、アウトドア、ランニングなどで再注目されているようです。ランニングが趣味の友人によると、「マラソンやジョギングを裸足でやる人が増えてきた。マラソン大会でも普通にいる」とのこと。また、日本には古くから足袋があるので、ベアフットシューズは日本人と相性がいいかもしれないですね。

最後に、「土足禁止オフィス」です。
裸足関連の情報を探っていたら、日米のスタートアップ企業の中であえて「土足禁止オフィス」を採用するところがあるという記事を発見。素足やスリッパなど、いわゆる和室、旅館、お寺など日本ならではの慣習をオフィスに持ち込んだ例です。たしかに仕事をしていると足が蒸れたり、むくんでしまったりと何かと問題ありますね。そして何より靴を履ないことで得も言われぬ解放感が得られるというメリットも。導入のためにはカーペットを張り替えたり靴の管理が必要だったりといろいろとハードルもありますが、業務の生産性を高めるひとつの方法かもしれませんね。

では、なぜ「裸足感覚」は広がりつつあるのでしょうか。
ひとつは情報過多社会におけるリセット欲求です。ネットにSNS、様々なコンテンツなどと、デジタル化によってとにかく情報があふれかえっています。仕事も複雑になって脳のモヤモヤが増えていく中、裸足になり身体感覚を取り戻すことで頭でっかちになった自分をリセットしたいという欲求が高まっているのだと思います。瞑想の感覚に近いのかもしれません。もう一つの理由は、手軽な健康法です。何かと忙しい現代において健康を保つのにも努力が必要ですが、あまり時間を割きたくない。そんな中裸足になるだけならば誰でも簡単にできるので取り組みやすいというメリットがあります。枕を変えるだけ、湯船につかるだけ、エスカレーターではなくあえて階段をのぼるなど、今後もそのようなちょっとした健康法が広がっていくのではないでしょうか。

このように広がりつつある『裸足感覚』ですが、これからも多くの人が実践していくことが予測され、そこには新たなビジネスチャンスが広がっています。

『裸足感覚』のビジネスチャンスの例
■天然の芝生の上で裸足でコーヒーを楽しめる「裸足カフェ」をつくる。
■部屋も廊下も食堂もバーも床が天然素材でできていて、一日中裸足で過ごすことにより心が解放される「裸足ホテル」をつくる。
■もはや靴を履かず裸足感覚を味わえる靴下のまま外出できる「外出できる靴下」を発売。
など

この記事を書いていて猛烈に芝生の上を裸足で歩きたくなってきました。緑豊かな公園で何も考えずただ裸足で歩く。こういうのが幸せな休日なのかもしれませんね。ある程度足の裏の皮が厚くなってきたら、裸足で山登りもチャレンジしようかな。うーん、でもそれ以上に周囲の目が気になってしまい、僕にはできなそうです(笑)気になる方はぜひ。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

中川悠(なかがわ・ゆう)
生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 部長
ヒット習慣メーカーズ リーダー

メーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
戦略CDとして、事業構想クリエイティブに勤しむ。最近、友達の影響で女子のプロバスケットボールリーグを観戦するようになりました。バスケの戦術って奥深くて面白いですね。

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