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【博報堂生活総合研究所】みらい博2023「消齢化社会」を3年ぶりリアル開催
―生活総研ウェブサイト内に特設サイトオープン

2023.03.02
#リサーチ#生活総研#生活者研究
博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)は、恒例の研究発表イベントとしてみらい博2023「消齢化社会」を1月26日(木)に東京・渋谷ヒカリエにて、また2月6日(月)に大阪・グランキューブ大阪にて開催いたしました。
今回は、みらい博としては3年ぶりとなるリアル会場での開催となり、企業のマーケティング担当者や経営層、メディア関係者など、両日合わせて約600名が参加しました。
本レポートでは、講演の概略をご紹介いたします。

※「消齢化社会」についての詳しい内容は、こちらの博報堂生活総合研究所の「みらい博」特設サイトからもご覧いただけます。
https://seikatsusoken.jp/miraihaku2023/

毎回、様々なテーマで10〜15年先の日本の未来像を描き出す「みらい博」。
今回のテーマは、生活総研が独自に発見した、生活者の長期的な変化潮流「消齢化」です。

はじめに

講演の冒頭では、石寺所長よりご挨拶と、今回のテーマ「消齢化」について導入となる話がありました。

□「消齢化社会」とは、年齢による生活者の価値観や嗜好などの違いが小さくなる社会
□これまでビジネスを展開する上で大きな拠りどころとしていた生活者のデモグラフィック特性の常識が大きく揺らぐ
□今回の講演は、「消齢化」をめぐる思考と探索の“旅”という仕立て
□自分の感覚値と大きく異なった時の“驚き”や“疑問”こそ、人間理解を深めるきっかけ。ぜひ一緒に「消齢化」についての探求を

Part.1 消齢化の発見

そもそも「消齢化」とはどんな潮流か?何がきっかけでその潮流を発見したのか?これらについて、研究初期段階の“問い”と“探索”を追体験する形式で、近藤上席研究員より説明いたしました。

□「消齢化」発見のきっかけは、「生活定点」の長期時系列データ(1992-2022年)
□複数の項目で「年代による違いが小さくなっているもの」と「大きくなっているもの」2つの特徴的なグラフの動きがあった
□どちらが数としては多いのか?⇒「違いが小さくなっている」項目の方が多かった
□どんな分野で起きているのか?⇒年代による違いの縮小は、衣食住はじめ生活の様々な分野で起きていた
□「生活定点」だけの傾向なのか?⇒NHK放送文化研究所の長期時系列データ「日本人の意識」調査(1973-2018年)でも「違いが小さくなっている」項目の方が多かった
□「年齢による違いが小さくなっている」ことは、生活者の大きな変化潮流である。この潮流を「消齢化」と命名

Part.2 消齢化の背景

Part.1の最後で提示された問い「消齢化はなぜ起こっているのか?」を受け継ぐ形で、消齢化の背景をめぐる生活総研の探求の模様と導き出した結論について、三矢上席研究員より説明いたしました。

□背景探索の手がかりは、「生活定点」グラフの“動き”
□年代による違いが縮小しているグラフの変化パターンに着目した

変化パターン①上昇収束型(各年代が増加しながら近づいていく)
項目例:「焼肉が好き」「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだ」「調理済み食品をよく使う方だ」
⇒共通点は、気力・体力・知識に関すること
そこからみえてくる消齢化の背景①能力の変化 =「できる」が増えた
・気力や体力が“若い”高齢者が増加した
・誰でもアクセスできる“生活インフラ”が充実した
変化パターン②下降収束型(各年代が減少しながら近づいていく)
項目例:「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思う」「習慣やしきたりに従うのは当然だと思う」
⇒共通点は、常識・慣習・価値観に関すること
そこからみえてくる消齢化の背景②価値観の変化=「すべき」が減った
・旧来型の価値観を持った世代が退出
・残った世代は変化の乏しい「失われた30年」時代を長く共有
変化パターン③中央収束型(各年代が真ん中に集まる形で近づいていく)
項目例:「ものやサービスの購入についてこだわる方だ」「流行やトレンド情報に関心がある」「お酒を飲む」
⇒共通点は、嗜好・興味・関心に関すること
そこからみえてくる消齢化の背景③嗜好/関心の変化 =「したい」が重なった
・「年相応」や「適齢期」に縛られず、生き方の選択肢が広がった
・同じ年齢層でも嗜好/関心が多様になり、違う年齢層との重なりが大きくなった

Part.3 消齢化の未来

Part.2の最後で示された「消齢化はこの先も続くのか?」という問いを受けて、佐香上席研究員と加藤研究員が登壇。ふたりの対話も交えながら、上記の問いや、消齢化がさらに進んだ先の未来の展望について説明いたしました。

□消齢化は、今後も進むのか?
・コウホート分析を用いて、生活定点データの未来(2032年)の数値を推計したところ、年代での違いはさらに小さくなるという結果に
・技術の面では自動運転やAIなどの技術進化が進み、年齢に関係なく「できる」ことがさらに増える
・社会の面では世代交代がさらに進んで高度成長期を知る世代が徐々に退出。同じ価値観を共有する世代だけの社会になる
⇒これらが相まって、消齢化は、今後も進んでいくと考えられる。
□消齢化がさらに進んだ未来はどうなる?
⇒個人の生き方、人との関わり方、社会構造、市場など幅広い領域に変化をもたらすと予測。
①個人の生き方は、「固定」から「可変」
・「年相応」な生き方から脱却する生活者が増えていく
・実年齢ではなく、能力や内面などの「実質年齢」を基準に人生設計する時代になる
②人との関わり方は、「対立」から「対話」へ
・全年代の価値観が近づき「わかりあえる」が皆の共通認識になる
・全年代の“真ん中”にいる「ミドル層」がコミュニティの要として活躍する
③社会構造は、「小さな群れ」から「大きな塊」へ
・人口減少も相まって社会を性年代で区分する有効性が薄らぐ(「脱デモグラ」の加速)
・高齢化の進度がもたらす地域間ギャップの緩和につながる
④市場は、「ヨコ串」から「タテ串」へ
・複数年代を一気通貫するマーケティング戦略の有効性が増していく
・「小さな違い」よりも「大きな同じ」に着目した商品訴求にチャンスが広がる

おわりに

最後に、再び石寺所長が登壇し、ここまでの発表を受けての総括と、「消齢化」を受けて、今後企業に求められる考え方などについて提言を行いました。

□「少子高齢社会」である日本。量的には「高齢化」だが、質的には「消齢化」
□各年代の生活者が「近づく」というより、年齢が「消えていく」社会と捉えてみる
□「年齢」で人を排除している市場はないか?
□デモグラの説明力が弱まるならば、有効性を増すのは「社会統計的な属性(Sociographics)」や「心理的な属性(Psychographics)」
□「とりあえず年代別にみると……」からの脱却を。マーケティングの“初動”が変わる
□「ターゲットの年代の特徴は……」の盲点に留意を。そのインサイトは他の年代にも共通しているかも?
□「違い」作りから、「同じ」探しへ。生活者データを“再集計”してみませんか?

なお、今回の講演はリアルタイム・アンケートにより参加者に「消齢化」に対する意見をうかがうなど、インタラクティブなやりとりも交えて行われました。

講演終了後、来場者からは、

・長期にわたる定点調査に基づいた考察で、説得力がありとても参考になった
・普段なんとなく感じていたことが、“消齢化”と言語化されていると感じた
・スモールマスでヒット商品が生まれない時代だと認識していたが、“大きな同じ”にヒット商品の可能性を見出しました
・久しぶりのリアル開催は、聞く方も緊張感があってよかったです

などの声をお寄せいただきました。

博報堂生活総合研究所は今後も「消齢化」のさらなる探求をはじめ、生活者のきめ細やかな調査研究を通じて、よりよい未来を提言する活動を続けてまいります。どうぞご期待ください。

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