ヒット習慣予報 vol.405『ごきげんチューニング』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの金井です。

前回執筆が新年一発目、そして今回は新年度一発目ということで、勝手に大役を任されたような気分になっています。
さて、話は変わりますが、最近の私はゲームにハマっています。幼少期にゲーム機を買ってもらえなかった反動なのか、夜な夜なオンラインでソフトを大人買いしているのですが、ついにはゲーミング用の少し高価なヘッドホンまで購入してしまいました。改めて実感したのは、「音が変わるだけでここまで変わるのか」ということです。そこで、今回のヒット習慣では、私たちの耳に届く音をテーマに最近巷で垣間見える変化の兆しを紐解いていきます。

1つ目は「ミキシング再生」です。
様々な音楽ストリーミングサービスにミキシング再生機能が搭載されるようになってから、音楽体験は劇的に変化しました。私もその変化を体感した1人で、これまでは曲と曲の間に一瞬の思考時間が生まれ、「この曲、そんなに今の気分ではないな」という一時的な感情の起伏から、曲のスキップボタンを押すという挙動が発生していました。その結果、作業中断を余儀なくされ無意識にストレスがかかっていたのですが、この”間”がシームレスになったことで、感情が一定になる心地よさと集中を妨げない音環境を手に入れることができました。SNSでも、好きな曲を永遠とシャッフルし続けて心が安らいだという声も見受けられ、好みに併せた音環境を自ら作っている様子がうかがえます。AIレコメンド機能を活用すれば、選曲をする必要もありません。今の音楽体験は音や歌詞を「聴く」シーンと、感情を「整える」シーンに応じて、使い分けできるようになり、生活者はこのようなアップデートされた世界へと無意識に入り始めています。

出典:Google Trends(「ミキシング」検索量)

2つ目は「earplugs積極活用」です。
昨今のearplugs=耳栓は、ライブやコンサートなどでも身に付けられるファッションアイテムとしても進化しています。「音楽を聞きに行くところになぜ?」と不思議に思う方もいるかもしれませんが、心地の良い音量は人それぞれ。ノイズキャンセルだと全ての音を電子的に遮断してしまうため、外音の音質を変えずに音量だけを落とすことができるearplugsは日本だけでなく海外でも広まっています。SNSでも“耳を守る行為”がポジティブに共有されており、音との付き合い方は「楽しむ」だけでなく「整える・守る」ものへと広がっているようです。

出典:Google Trends(「earplugs」検索量)

3つ目は「ラジカセ&レコードプレーヤー再来」。
スマホからいつでも音楽を流せる時代に、あえて手間をかけて音楽に向き合うスタイルも増えています。カセットテープやレコードが流行っている背景には、単純な音楽の好みだけではなく、テープの挿入音や、レコード盤に針を落とすといったアナログな再生プロセスのやみつき感があるのではないでしょうか。特にカセットテープは、持ち運びがしやすくなるフレームやケースも流通しておりカスタマイズ性が高い一面もあります。「有線イヤホン」が主流だった時代に、イヤホンジャックを保護するストラップをつけている人も多かったことは記憶に新しいですが、このような再生プロセスを楽しむためのカスタマイズ性にも付加価値があるとも考えられます。

私は、このような変化が起きている要因は2つあると考えました。

1つ目は「ウェルビーイング意識の高まり」です。 
近年、メンタルヘルスやコンディション管理への関心が高まり、「常に良い状態を保つ」ことが重要視されるようになっています。その中で音は、気分や集中、リラックスに直接作用する手段として再評価されています。これまであげた3事例ともに、音楽を楽しむだけではなく“耳を守る行為”や"心を整える行為”にもつながっていました。

そして2つ目は「感情マネジメント・コントロール欲求」です。
感情的になることは、ある種のストレスがかかります。怒ったり、泣いたり、ポジティブな意味で笑い泣きでさえ、エネルギーは使われるものです。音環境を自分好みにすることは、ストレスがかかる感情の起伏を失くしエネルギー消費を抑えることにもつながります。情報社会の中で、いかに日々のストレスにつながることを減らし、省エネに暮らすことが寂しいですが潜在的な意識に芽生えているのではないでしょうか。

最後にビジネスチャンスとして、下記のようなことを考えてみました。

◎「ごきげんチューニング」のビジネスチャンスの例
■ 体温や脈拍など生体データと連動して音環境を最適化するコンディショニングオーディオ
■ 駅・空港・オフィスなどに「完全無音ゾーン」を設置するサイレンスインフラ事業
■ 声のトーンや心地よい静けさなど “耳の感覚”から相性を見つけるマッチングサービス

いま、みなさんの耳にはどんな音が届いているでしょうか。このように「音で自分の状態を設計する」習慣によって、私たちの暮らしはまだまだ変わっていきそうです。

▼「ヒット習慣予報」とは? 
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。 
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

金井真歩(かない・まほ)
ビジネスデザイン局 / ヒット習慣メーカーズ メンバー

2023年博報堂入社。好きな食べ物は餃子。 ですが最近は、ナポリタン作りに勤しんでいます。

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