大瀧陽介氏(FWD生命)、山本大樹氏(博報堂)、髙橋はな氏(博報堂)
認知獲得が鍵の保険ビジネス今も重視されるテレビの力
認知獲得が鍵の保険ビジネス
今も重視されるテレビの力
──FWD生命の日本市場における立ち位置と、直面していた課題についてお聞かせください。
大瀧:
当社は1996年に富士生命として設立し、2017年にアジア10の地域に展開するFWDグループの一員となりました。私たちはブランドスローガンに「Celebrate living(人生を謳歌しよう)」を掲げ、万が一への不安を煽るのではなく、保険があるからこそ「安心して前向きに楽しめる」という、ポジティブな価値変換を目指したコミュニケーションを行ってきました。ただ、日本国内での当社の認知はまだ十分ではなく、いかに効率的に20代~ 40代のターゲット層に接触できるかが課題になっていました。
山本:
若年層の情報収集行動はデジタルが完全に主流になっていますが、FWD生命さんの認知度拡大の課題を考えると、テレビCMの持つリーチ力は重要ですよね。
大瀧:
私たちも認知拡大にはテレビが有効だと分かってはいるものの、テレビCMへの投資における「透明性」と「投資効率」をどう実行動ログに基づいて証明するかという課題に直面していました。また、効率的なターゲットリーチのためコネクテッドTV(CTV)の活用を検討したのですが、CTV広告とテレビCMを同じ尺度で測り、指名検索やサイト来訪等の実際の行動にどう寄与したかを証明する必要がありました。
──具体的な取り組みと、検証結果についてお聞かせください。
髙橋:
FWD生命さんが抱えられていた課題に対して、私たちは「AaaS with TTD」※の導入をご提案しました。テレビCMとデジタル広告/CTV 広告 の効果を同じ指標で統合分析できるソリューションで、博報堂が持つ独自のテレビ実視聴データと、The Trade Desk(TTD)が保有するデジタル広告への接触ログを広告IDベースで連携させています。
※博報堂が提唱する、広告主の投資効率を最大化するための次世代型広告モデル「AaaS(Advertising as a Service)」のソリューション。国内で初めて、テレビ実視聴データと、The Trade Desk(TTD)が持つデジタル広告接触ログを連携させることで、テレビCMとデジタル広告横断でのKPI分析や、コンバージョンまでの最適な広告接触パターン、広告接触によるナーチャリング効果を可視化・分析できるようにした仕組み。
山本:
FWD生命さんからは「アンケートなどの意識調査ベースではなく、実行動ログに基づいてテレビCMもCTV広告も効果測定を行いたい」というご意向を伺っていました。そこで、テレビCMやCTV広告を見た人が、実際に「指名検索」や「トップページ来訪」をしたかというユーザーの実行動をベースに、横断的な効果分析を行いました。
大瀧:
保険という商材は検討期間が長く、ライフイベントをきっかけに加入意向が高まるため、広告を見てすぐに加入するものではありません。だからこそ、「指名検索」などの中期的な態度変容を中間KPIとして実行動ログで可視化できるこの仕組みは、我々のニーズに完全に合致していました。
髙橋:
今回の検証では、CTV広告の接触者だけで10万人以上という非常に大規模な実行動ログを広告IDベースで捕捉することに成功しました。ボリュームが十分に確保できたため、広告接触回数(FQ)ごとの中間KPI(指名検索・サイト来訪)のリフト値の算出や、テレビCM放映において効果の高いテレビ局、曜日時間帯の可視化まで、次回の最適化に向けた具体的な示唆を得ることができています。
山本:
分析の結果、テレビCMの出稿にCTV広告の出稿を重ねることで、テレビCMのみでは接触しづらいユーザーにも効率的にリーチすることができ、確実な増分が発生していることが証明されました。
大瀧:
特に顕著だったのは、「テレビCMとCTV広告の両方に接触した層」の動きです。この重複接触層が、最もブランド認知や行動喚起(指名検索・サイト来訪)のリフト効果が高いというデータが得られました。このデータは、グループ本社にも共有し、日本市場における広告メディア投資の方向性を提示することにもつながりました。テレビCMをリーチメディアとして活用するだけではなく、CTV広告と連動して指名検索などのオンライン上の実行動を突き動かす、透明性の高い投資として証明できたことは大きな成果です。
――今後の展望をお聞かせください。
大瀧:
保険はいまだに対面での販売チャネルのシェアが高い業界ですが、以前から多くの方が加入を検討する際の入り口はオンライン上での情報収集へと変化していますし、いまやチャット型のAIを使って情報を集める時代です。そこで「選ばれるブランド」になるためには、さらなる認知形成、ブランドイメージの確立が不可欠です。
山本:
AI検索の時代になればなるほど、事前のブランド認知の価値は高まります。今後はさらに「CVリフト分析」や、ユーザーがどのようにコンバージョンに至ったかがわかる「広告接触パス分析」など、「AaaS with TTD」の他機能を用いたより深い分析で、定常的に伴走させていただきたいと考えています。
髙橋:
生活者のデジタルシフトに伴い、動画配信視聴の3 ~ 5割がすでにCTV経由であるというデータもあります。視聴態度の変化に合わせ、広告の効果検証手法もアップデートし続けなければなりません。デバイスを問わず実行動ログベースで計測を続け、ベストな顧客体験をサポートしていきたいです。
大瀧:
「資産防衛」という前向きな文脈で保険の価値を伝えるためにも、信頼を形成し行動を促す、コミュニケーションの最適化は欠かせません。今回構築できたデータ基盤をベースに、今後もAI時代に先駆けた一歩進んだマーケティングに挑戦していきたいと考えています。
※本記事は宣伝会議2026年8月号に掲載されたコンテンツを転載したものです。