2026.05.18
カイコクAI動画CMコンテスト 芋洗坂係長賞受賞作品メイキング
AaaS Tech Labの山中です。
株式会社BLAM様[1]が主催する「カイコクAI動画CMコンテスト」にて私が応募した「編みぐるみ坂係長の人材マッチング」芋洗坂係長賞をいただきました。
本記事はそのメイキングとAIによる動画制作に関する2026年時点での分析となります。
本コンテストの課題は、提供された芋洗坂係長さんの音声にAI動画を合わせ、副業マッチングサービス「カイコク」の魅力を伝える15秒のCMを制作することでした。
既存のAI動画の分析と表現手法の選定
コンテストに臨むにあたり、まずは過去のAI映像コンペの入賞作品をリサーチし、表現の傾向を分析しました。特に、AI動画における表現スタイル別の制作難易度について、私なりの見解は以下の通りです。
  • 実写風
    • 人物の会話シーンなどで、いわゆる「不気味の谷」のような不自然さ(悪い意味でのAIらしさ)が出やすく、難易度が高い。
  • アニメ調
    • 実写に比べれば違和感は抑えられるものの、AIに任せきりにすると個性が埋没しやすく、魅力的な絵作りには相応のセンスと工夫が求められる。
  • その他(編みぐるみ、人形劇など)
    • 独特の世界観を比較的容易に構築できる。また、素材の特性上、多少動きが不自然であっても「演出」として許容されやすい。
もちろん、これらは現時点での私個人の見解であり、AI生成技術の慣れによってこれらの課題は解消されていくはずです。
今回は、自身のAI生成経験も踏まえ、AIによる画像生成において比較的再現性が高く、温かみのある表現が可能な「編みぐるみ」をモチーフに据えた作品を制作することに決定しました。
実際のメイキング:AI動画制作における技術的難所
実際の作業では、まず最も重要な「編みぐるみバージョンの芋洗坂係長」の制作に取りかかりました。 使用したモデルは「Nano banana pro」です。編みぐるみという制約の中で、いかに芋洗坂係長らしさを詰め込めるかが鍵となります。生成された画像をさらに参照画像として入力し、プロンプトでサスペンダーの有無やネクタイの長さなど、キャラクターを構成する要素を微調整していきました。この画像をベースに、その後さまざまなシーンを展開していくことになります。
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制作にあたっては、あらかじめ全体のストーリーボードを固定せず、その都度展開を考えていく方針を採りました。制作を進めながらAIの表現の幅を探り、柔軟に内容を修正できるようにするためです。
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例えば最初のこのカフェのシーンについては「編みぐるみの係長を登場させる」こと以外は未定でした。そこで、まずは自分の中のイメージを固めるため、居酒屋やカフェといった場所の設定、カメラアングルの変更など、さまざまなパターンを検証していきました。
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このように、最初からすべてを設計するのではなく、少しずつイメージを具体化しながら次の展開を決めていく手法をとったおかげで、自身の制作スキルを向上させながら、完成まで漕ぎ着けることができました。
制作の過程で見えてきた、現在のAI動画における主要な課題は以下の3点です。
1. 異なるショット間のスムーズな結合
2. キャラクターの造形・一貫性の維持
3. 激しいアクションや複雑な動きの制御
以下、それぞれの難点について、実際の動画キャプチャと共に具体的に解説していきます。
最初のシーン:「私、マーケター!」~ 「でも大丈夫、カイコクなら」
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このシーンでは、一連の流れがあたかも1カット(ワンカット)に見えるような演出に挑戦しました。しかし、実際にはKlingを用いて3回の動画生成を行っています。
あえて1度の生成で完結させず、1カットを細かく区切って生成したのは、動画の細かな制御や、各テイクの取捨選択を容易にするためです。
本シーンは、具体的に以下の3つの要素で構成されています。
・ 「私、マーケター!」の芋洗坂係長の自信満々なシーン
・ 「じゃないんだよね」の芋洗坂係長の落ち込んでいるシーン
・ 「でも大丈夫、カイコクなら」の前から小さい芋洗坂係長がでてきてびっくりするシーン
これらの別々で生成された動画をつなぎ合わせたときにあたかも1カットかのように見せるために以下の手順を踏む必要があります。
1. 最初の動画を生成
2. 1で生成された動画の最終フレームを画像として取得
3. 2の画像を次の結合するためのシーンのファーストフレームとして設定し動画を生成
この方法で動画を繋げていけば、フレーム単位で見れば繋がっている動画になります。
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直面した課題:生成ごとでカメラワークや物体の動きのスピード感が違い
しかし、この方法でも問題が浮き彫りになりました。それは、生成ごとのカメラワークや物体の移動スピードに差が生じ、視覚的な違和感が生まれるという点です。
・成功例(「私、マーケター!」>「じゃないんだよね」)
「私、マーケター!」のシーンでは芋洗坂係長の自信満々さを表現するためカメラワークとしてズームアップを採用し、その後の「じゃないんだよね」は逆に自信のなさを出すための緩急として固定カメラにしました。そのため、後者にはカメラワークがなく、スピード感の差による違和感が生じませんでした。
・課題が残った例(「じゃないんだよね」>「でも大丈夫」)
「でも大丈夫、カイコクなら」のシーンでは芋洗坂係長の表情が落ち込みからびっくりに変化します。しかしその「じゃないんだよね」のシーンに比べて「でも大丈夫、カイコクなら」のシーンの表情の変化が明らかにスロモーションに感じ、違和感を生じさせています。
今回は、このシーンがわずか数秒という短尺であったことから、許容範囲内と判断してそのまま採用しましたが、AI動画において「シーンを跨いだ時間軸の整合性」を保つことの難しさを再認識する結果となりました。
また「マーケター!」>「じゃないんだよね」のシーンについてはそのまま「マーケター!」のラストフレームを「じゃないんだよね」のファーストフレームにそのまま利用していませんでした。
というのも「マーケター!」から「じゃないんだよね」のシーンの移り変わりでは、
1. 芋洗坂係長の表情が落ち込む
2. パソコンの画面がエラーになる
という変化が必要です。
動画生成においてこの変化をさせるよりも、あらかじめファーストフレームとして変化させた画像を入力する方が、クレジットや生成時間などの問題で有利です。
よって、このシーンでは
1. 「マーケター!」のシーンのラストフレームを取得
2. 1のシーンをNano Banana Proで表情とパソコン画面を変化。プロンプトで「その他の、編みぐるみの造形、位置、背景は1ピクセル単位一切動かさない」と指定
3. 2で生成された画像をファーストフレームにして動画を生成
この手法により、わずかに背景の色味などにズレが生じたものの、許容範囲内と判断し、本編に採用しました。
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次のシーン:「TikTok 広告 …」~ 「1日でプロが見つかる」
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ここのシーンで直面した問題は画像生成における一貫性です。
カイコクのサービスのテーマである、多種多様な人材をアピールするため、芋洗坂係長を様々な色のスーツを着せて登場させることにしました。
よって、スーツの色を変えた芋洗坂係長の編みぐるみをひたすら生成しなければならないのですが、Nano banana proで画像参照+プロンプト(スーツの色を~色にして、その他造形は完全に維持)としても等身やネクタイの長さなどを参照画像の通りにならなく工数をかけることになりました。
これの対策としてはひたすら何が間違っているかをプロンプトに付け加え生成を繰り返す以外ありませんでした。
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最終シーン「マーケティングの副業マッチングサービスカイコク」
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最終シーンでは芋洗坂係長に、ダンスを踊らせることにしました。芋洗坂係長といえば激しいダンスを芸風とします。こちらこの「激しい」ダンスについてはプロンプトで「激しい」と指定しても、完全な激しいダンスは実現できませんでした。またさらに「マーケティングの副業マッチングサービスカイコク」というセリフを言わせるためリップシンクをさせる必要がありました。Runwayでは、自分でダンスを踊った動画を入力としてVideo to videoで対象に踊らせ、かつリップシンクもさせるという機能がありました。しかし当時、私が利用してたKlingではこの機能がありませんでした。Klingのリップシンクではリップシンクの参照となる音声を指定しつつ、動作の指定をプロンプトでのみ行えていました。
ファーストフレームをダンスが始まりそうな画像をあらかじめ用意しておき、動画生成を何度か繰り返し、なんとかタップダンス風のダンス動画を生成することに成功しました。
またダンスの没シーンは以下のような感じでした。
最後に
今回の制作を通じて痛感したのは、「AIに何ができるか」ではなく「AIが苦手なことをいかに把握し、それを避ける(あるいは逆手に取る)構成を設計できるか」というディレクションの重要性です。
今回のコンテストは、動画制作の技術向上の場で多くのことを学び、純粋に「作業が楽しかった」と言える経験でした。このような貴重な機会を提供し、素晴らしいコンテストを主催してくださった株式会社BLAMの皆様、ならびに審査員の皆様に、この場を借りて深く御礼申し上げます。
私たちAaaS Tech Labでは、データサイエンスや最先端AI技術を用いたソリューション開発はもちろんのこと、メディアコンテンツ開発への応用も日々模索しています。興味をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひお気軽にcontactからお問い合わせください。