Vol.1「リニアTVとストリーミング」

初回は「リニアTVとストリーミング」をピックアップ。

米国では、ここ1,2年の間に急速に放送事業者各社はリニアTVだけではリーチできなくなっている一定の層を獲得するための重要なチャネルとして、ストリーミングサービスを展開し始めました。日本でも展開されているサービスもあります。米国ニールセンのデータでは、テレビでのコンテンツ視聴時間の内ストリーミング経由の視聴が少しずつ増えてきています。この1,2年でストリーミング視聴の割合がリニアTVを超えると予想しているネットワークもあり、ストリーミングでのマネタイズを強力に推進しています。

CATVにお金を支払ってテレビを視聴することがこれまで長らく主流だった米国においては、ストリーミング経由でもコンテンツにお金を払うことに日本ほど抵抗感がないこともあり、これまで有料のSVOD(Subscription Video On Demand)は受け入れられてきました。しかし、各社がストリーミングに参入しサービスが多様化、競争が激しくなる中、各社は広告付きモデルのAVOD(Advertising Video On Demand)もプランに加えるようになってきました。米国のネットワーク各社が展開するストリーミングサービスは、多くが「無料・広告あり」、「有料・広告少なめ」、「有料・広告なし」の複数レイヤーのプランを設定しています(サービスにより異なる)。広告有プランにも2パターンあるのはユニークな点と言えると思います。広告の有無だけでなく、自社制作コンテンツには広告を入れない、といったコンテンツの区別がはっきりしているサービスもあります。個人が契約できるサービスの数にも限りがあることもあり、AVOD契約を選択する視聴者は増えてきています。

AVODの広告をセールスする各社は、デジタルならではの新しい広告フォーマットを模索していますが、セールスに関して現状は従来型のリニアセールス手法であるアップフロント(毎年春~夏にかけて、新番組がスタートする秋からの年間セールスを行うテレビ業界の商習慣)で、予約型、手売りの売買がほとんどとなっている様です。とは言え、リニアでは十分とは言えなかったファーストパーティデータを取得しデータマネジメント企業と提携、また、広告主を始めマーケティング業界が待ち望んでいる、デバイスや伝送手段を横断したコンテンツのメジャメント模索の検討も進んでいます。

ポイント

それぞれが思惑を持ってストリーミングサービスを開始したり、既存の独立サービスを買収しサービスを多角化したり、いわゆるデジタルPFとは一線を画すプレミアム動画メディアとしての立ち位置を確立し、ファーストパーティデータを活用したビジネスを確立しようとしているのが米国の放送事業者の現状です。ストリーミングサービスが多様化する中、CATVで行われてきた様な複数チャンネルをセットで契約するバンドリングサービスがこの先求められるようになってくるかもしれません。

博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局

TV AaaS Lab 編集総括

田代 奈美(TASHIRO NAMI)

TOPへ戻る