CTV(コネクテッドTV:インターネットに結線されたテレビデバイス)リニアTV放送とストリーミング視聴の両方が行われるようになってきた中、テレビ画面で視聴されるコンテンツはテレビ由来のものだけではなくなっています。これまでPCやスマートフォンで視聴されてきたUGC( User Generated Contents )を含むあらゆる動画コンテンツがテレビ画面で視聴される時、リニアTV視聴とストリーミング視聴の指標はどうあるべきでしょうか。リニアTV視聴は視聴率/GRP、ストリーミング視聴はデジタル由来のインプレッション、ではなく全てのスクリーンの全ての視聴者がカウントされ、プラットフォーム、デバイス、フォーマット間でメディアを評価する指標が必要になってきています。
今回は前後編に分けて、米国のCTVストリーミング視聴の指標の現状を取り上げます。
まずここまでのテレビコンテンツの指標の在り方をおさらいしておきます。長らくテレビはリニア視聴(リアルタイム視聴)が主で、視聴率/GRP、リーチやフリークエンシーで評価され、また売買されてきました。そして録画機の普及とともに、2007年より録画視聴のCM視聴をカウントする様になりました。
ここまでの流れは、いずれもテレビで放送されたコンテンツをテレビ画面で視聴することを前提とした変化で、ステークホルダーも今ほど多くはなかったと思います。昨今のCTVの普及、そしてコンテンツのストリーミング視聴の浸透により、生活者にとって放送と通信の区別がつきにくいまま、テレビ画面でテレビ放送を含むあらゆる動画コンテンツが視聴される状況が作り出され、また逆にテレビコンテンツがテレビ画面以外でも視聴されるようになりました。そしてステークホルダーもコンテンツホルダー、プラットフォーマー、アドテク企業、テレビ受像機メーカー等と多くなっています。
ストリーミング視聴の増加に伴い、広告モデルを導入するストリーミングサービスも増え、CTV広告の在庫増加とともに需要は拡大していますが、混在するようになったテレビ由来のストリーミングコンテンツとそれ以外の動画コンテンツを、プラットフォームや視聴デバイスに関わらずどのように評価していくのか、クロスプラットフォームメジャメントをどうしていくのか、という議論が2011年頃から行われています。
テレビ画面やテレビコンテンツのデジタルシフトが顕著になってきた中、Nielsenは2021年に、現在のカレンシーであるCMの録画視聴を含んだC3からテレビとデジタルを統合した新たな指標に2024年秋に完全移行することを発表しました。そしてまたネットワーク各社も、このタイミングでこれまでほぼ一択だったNielsenから、Nielsen以外の新たな指標、カレンシーの可能性に向けての検討を進めています。来年春のアップフロントまでには方向性が定まってくると思われますが、リニアTVとストリーミング視聴の割合が少しずつストリーミング寄りになる中、ネットワークを中心に、テレビ由来の動画コンテンツ視聴の在り方、新しいカレンシーの策定、そしてデジタルの中でのコンテンツ優位性の証明に関しての検討が最終段階に入ってきています。また、業界団体が中心となりセルサイドとバイサイドがともに標準化に向けた検討を進める動きもあります。
ステークホルダーの思惑が一致せず業界内の統一見解がないともいえる状況ですが、後編では、テレビとデジタルを統合して評価する指標の検討の状況を取り上げていきます。

