前回に続き、今回もストリーミングに関するトピックスです。
放送局由来のサービスであるが故、販売手法は従来型を踏襲していることが多く、現状は年間広告枠の大部分がアップフロントでの売買で行われてはいる様ですが、テレビとデジタルのハイブリッドと捉えられるストリーミングサービスにおいては、テレビのプレミアムコンテンツがデジタルメディアともなることで、アッパーファネルとしてだけでなく、デジタルチャネル同様の、従来のデモグラだけでないデータを装備した上でのターゲティングが重要になっています。
放送事業者各社はファーストパーティデータ基盤を整備した上で、データクリーンルームの導入や広告主のファーストパーティデータとの連携やエージェンシーが保有するデータ基盤との連携を可能にするなど、データ環境を充実させています。
また、各社がストリーミングに力を入れる様になり、テレビの捉えられ方がリニア+ストリーミング=テレビとなってきている中、ビジネス面でも同様の図式を成り立たせていくためには、デバイスを横断して視聴されるコンテンツのデータをどのように計測、統合し、納得できる形の指標があるのか、またあり得るのか議論されてきています。
現状、多くのテレビの売買ではニールセンの視聴データがカレンシーとなっていますが、2024年にはこれまでのリニア+タイムシフト視聴のデータに、ストリーミングを加えた形の新しい統合指標をスタートさせる予定となっています。ところが、デジタルメディアとの競争も激化する中2024年まで待てないという声や、コロナ禍にニールセンの視聴データ取得にミスがあったことが発覚したこともあり、昨年来、ニールセンのパネルデータだけでなく、結線されたテレビのリアルデータや視聴質などの新たなカレンシーの可能性を模索する動きも出ており、業界全体のスタンダードとなっていなくても、今年のアップフロントで実際にニールセン以外のデータをカレンシーとして利用した放送事業者もある様です。
ポイント
何をこれからのテレビの指標としていくのか、そして売買のカレンシーはどうなっていくのでしょうか。放送事業者と広告主のコンセンサスがあれば売買は出来ますが、横比較での評価は難しくなることも想定されます。広告主ニーズにも応えながら、テレビとしての価値をどう測っていくのか、動向には注目していく必要があるでしょう。

