2016年9月27日(火)にConsulactionセミナーが開催されました。
このページでは、当日の講演内容を要約した、セミナーレポートをお届けします。

現在、家族世帯の中心は「ミレニアル世代」と呼ばれる新しい感覚を持った人々に移りつつあります。
子育てをしながら共働きをし、「家族の幸せ」を何よりも重視するそのミレニアル家族の行動や意識特性とはどのようなものなのでしょうか。
博報堂買物研究所と博報堂こそだて家族研究所が共同で行った調査結果をもとに、「ミレニアル家族」をとらえる新しいマーケティングの考え方が提案されました。

博報堂買物研究所 ストラテジックプラニング スーパーバイザー 松井博代(写真左)
博報堂こそだて家族研究所 上席研究員 亀田知代子(写真右)

ミレニアル世代が家族世帯の代表に

「ミレニアル世代」とは、2000年代以降に成人を迎えた、もしくは迎える世代のことで、アメリカでは、1981年から1996年頃に生まれた若者をこう呼んでいます。
現在、ミレニアル世代は世界人口の約3割を占めており、世代として「最大勢力」であるとして大きな注目を集めています。

アメリカのミレニアル世代の特徴として挙げられるのは、マイノリティグループが4割以上を占めること、高学歴であること、学生ローンの借金が多いことなどです。他の世代と比べて消費にシビアであることも、この世代の大きな特徴です。

一方、日本のミレニアル世代はどうでしょうか。やはり「消費離れ」の傾向がはっきり見られます。「全国消費実態調査」の結果を見ると、30歳未満の勤労単身世帯の消費性向は、1999年の82.7%に対して、2014年には73.5%と、15年間で10ポイント近く落ちています。博報堂生活総合研究所の「生活定点」調査を見ても、自動車、飲酒などの分野で消費離れが顕著です。

日本のミレニアル世代の特徴としてほかに挙げられるのは、以下のような点です。

①共働きは当たり前で、男女平等意識が強い。
②デジタルとともに成長しているために、効率志向が強い。
③不安定な時代に生きることで、「現状を楽しむ体質」を身につけている。

このミレニアル世代が家族を形成する時代に入っています。
今後は、彼・彼女らのような新しい感覚をもった人々が増加していき、「家族世帯」を牽引することになります。
それによって世帯消費はどう変わっていくのでしょうか。
そして、その変化にメーカーや流通事業者はどう向かい合っていけばよいのでしょうか。

ミレニアル家族の「家族意識」

ここでは、ミレニアル家族を「夫婦が25~34歳(1982年~1991年生まれ)で、子どものいる家族」と定義します。
子どもの数は1.5人から1.7人、子どもの年齢は2.7歳から4.0歳、平均所得は440万円から540万円くらいが、現在の平均的なミレニアル家族の実態と考えられます。

では、より具体的なミレニアル家族の家族意識を、博報堂生活総合研究所「生活定点」調査の結果から見ていきたいと思います。

「貧乏ひまなし」
年齢が若いため、家事に育児に仕事にと忙しい上に、所得もまだあまり高くありません。
ミレニアル家族のうち、経済的ゆとりと時間的な余裕がともに少ないと答えた人はおよそ4割に上っています。

「子どもが小さいうちは家族優先」
子どもが小さいこともあり、「休日はできるだけ家族と一緒に過ごしたいと思う」と考えている人はおよそ8割という結果です。

「共働きが当たり前」
この世代では結婚・出産を経ても働き続ける女性が増えており、近年では、いわゆる「M字カーブ」のへこみも解消しつつあります。

「家族は “同志”」
「友達のような夫婦関係がよいと思う」「友達のような親子関係がよいと思う」と考えている人の割合は減少傾向にあり、仲良しなだけでは家族でないという意識が強まっているようです。

「現実的な家族形成意識」
6割以上の人が「恋愛と結婚は別物だと思う」「子供が先にできてから結婚してもかまわないと思う」のいずれにも「Yes」と回答しています。

「イクメン&カジメン志向の高まり」
「夫も家事や育児を優先すべきだと思う」と考える男性が4割を超えています。

「変化にも家族で柔軟に対応」
「転勤になったら、家族も一緒に行く方がよいと思う」と考える人の割合は時系列で減少傾向にあり、仕事より家族の生活を優先する意識が高まっています。

「頼れるものは活用する合理主義」
「デジタル機器を育児に活用してもかまわないと思う」人が5割超、「親・兄弟姉妹・成人した子供など親族と近くに住みたいと思う」人が4割弱と、他の層よりも高い結果になっています。

「きわめて高い幸福感」
ミレニアル家族の最大の特徴が、高い幸福感です。
「あなたは幸せですか」という問いに対して、「非常に幸せな方だと思う」と答えた人は26.7%で、他年代層と比較して顕著な高さです。
「まあ幸せな方だと思う」と答えた人は61.2%。合計すると、自分を幸せであると感じている人が9割弱にも達しています。

「幸福感」に関して補足をしておくと、同じミレニアル世代でも、既婚で子どもがいる人のうち「非常に幸せな方だと思う」と答えた人は3割近くとなっている一方で、未婚の場合は1割を切っています。
この結果から、やはり「家族」が幸福感のカギを握っていることがわかります。
ミレニアル世代にとって、「家庭は幸せな生活のホームグラウンド」であり、「家族は幸せな生活をともに創りあげる同志」であることが、ここまでに挙げた意識特徴から読み取れると思います。

「身の幸家族」の行動原則とは

私たちは、このようなミレニアル家族を「身の幸(さち)家族」と名づけました。
「家族みんなで、お互いを柔軟に支え合い、無理せず、欲張らず、自分たちなりの幸せをつくり出す家族」といった意味がここには込められています。

80年代から90年代前半の安定成長期を代表する家族像は「背伸び家族」でした。
「よりよい生活」という目標を全員で追いかけていたのがこの時代の家族の特徴です。
その後、バブル崩壊を経て90年代後半から00年代の「失われた15年」と呼ばれる混乱期の家族像を代表していたのが、生活不安の中で現状の幸せを守り抜こうとする「身の丈家族」でした。
2010年代に入り、東日本大震災などを経て、登場し始めたのがミレニアル家族です。
彼らは、お互いに助け合いながら自分たちなりの基準で幸せをつくりだす「身の幸家族」と言えるでしょう。

さて、ではその「身の幸家族」の家事行動の実態はどうなっているのでしょうか。
今年7月に博報堂買物研究所が実施した「ミレニアル家族生活実態調査」の結果を見ると、「身の幸家族」の行動原則として挙げられるのは、「かたよらない」「頑張りすぎない」「あえて楽しむ」などです。
一つずつ詳しく見ていきましょう。

<行動原則 1>

「かたよらない」
「身の幸家族」には、家事の役割を固定化せずに流動的分担とし、責任や時間を家族の間で柔軟に分散する傾向があります。
例えば、「上の子のお風呂と寝かしつけはパパ。それがうまくいったらママとバトンタッチして皿洗い」「時間がある時はパパが保育園に子どもを送る」といった行動が見られます。
ミレニアル世代で「できる時に夫婦のできる方が家事をやればよい」と考える人は57.3%、「男性だから女性だからという性別役割分担に縛られたくない」と考える人は50.7%にも上ります。
また、この世代の夫が担っている日常的な家事は、ゴミ出し、風呂掃除など4.8個となっています。
これは50代前後の既婚男性の倍近い数字です。

<行動原則 2>

「頑張りすぎない」
完璧を求めるのではなく、賢く選択し、自分たちなりの基準で物事に優先順位をつけるのが「身の幸家族」の特徴です。
「台所は使った時についでに掃除する程度」「掃除は土曜のみ。平日は、子供がこぼしたり、汚れているなと気がついたりした時だけ掃除する」「子どもが小さいうちは、ほかのことがおろそかになっても、子どもと一緒にいる時間をつくりたい」といった具体的な行動や意識が見られます。
「生活に困らない程度に家事をすればよい」と考える人は43.8%、「仕事と家庭・育児、自分の趣味等すべてそこそこできればよい」と考える人も38.1%に上ります。
一方、家事と育児と仕事のせめぎあいがあるのも、「身の幸家族」の特徴です。
「もっときちんと家事をしたいし、できていないのはストレスだ」と考える人は29.4%、「家事よりも育児や仕事に時間をかけたい」という人も29.1%います。
また女性の中には、専業主婦であった母親の生き方の「呪縛」を感じている人も少なくないようです。
「家事のやり方は親の影響を受けていると思う」という人は39.4%に上っています。

<行動原則 3>

「あえて楽しむ」
家事を「労働」ではなく、「楽しみ」と捉えるのも、「身の幸家族」ならではです。
例えば、「朝食をワンプレートにステキに盛り付けて母に写真を送っている」、あるいは「子どもが生まれてからはおうちで焼肉。パパがビールを飲みながら肉を焼いてキッチンカウンターに出して食べている」といった工夫によって家事を楽しもうとする人が少なくありません。
「日々の生活を楽しんでいる」と答えた人は43.7%。これは50代前後の26.4%を大きく上回っています。
一方、自分の時間より家族の時間を優先しなければならないケースも少なくないようです。
そのストレスをなくすために、家事や家族時間に「自分の楽しみ」を加えるといった工夫も見られます。

ミレニアル家族の買物行動と意識

次に、ミレニアル家族の買物に関する行動や意識を見ていきましょう。
買物行動の傾向をまとめると、以下のようになります。
その傾向を代表するエピソードや意見も合わせてご紹介します。

<行動傾向 1>

「買物の中心は休日。お出かけの一環として楽しみ、まとめ買い。平日の買物は追加買いのみのスピード勝負」
共働きも多いミレニアル家族の買物中心は、ゆっくりできる休日。ストック系食品やトイレタリーをまとめ買いしている。
「外に出かけるのが好きなので、家事を済ませるのは隙間時間。休日のお出かけの帰りに買物をする」
「買い物に時間を使いたくないので、どこかに行った帰りに店に寄る。買い物を目的にしないと決めている」
一方で、平日の買物は仕事帰り、子供も連れたバタバタの中で、今日の夕食の材料など必要最低限に絞って買物をしている。
「夕方、急いで仕事を片づけて、保育園にお迎え。自転車に子どもを乗せて近所の自転車を置きやすいスーパーに駆け込む。15分くらいでお店で見つけたものをぱぱっと買って、18時過ぎに家へ。子どもがお腹空いたとぐずる中、お肉を焼くだけなど、すぐに作れるもので夕飯。その後、お風呂に入れて寝かしつけ。終わってやっと一息つける」

<行動傾向 2>

「最適なチャネルとチェーンに絞り込む」
子供が生まれると、選択基準が変わるミレニアル家族は68.1%。チャネル・チェーンはいろいろ試した上で、タイミングや特徴に合わせて選んでいる。
「ネットスーパーは4社全部試したが、ほしい時と届くタイミングがうまく合わないので使わなくなった」
「子どもが生まれてから一通り近所のお店を試して、一番安いドラッグストア、野菜がおいしいお店、総菜が楽しいお店などに絞り込んで活用している」

<行動傾向 3>

「子どもが寝てからがECのゴールデンタイム」
平日の21~24時にECを利用するミレニアル家族は44.8%。やっと自分の時間ができる夜にECを利用している。
「ご飯、お風呂、寝かしつけ……。18:30~21:30が忙しくて、密度が濃い、まるで戦争。21:30以降は夫婦それぞれがインターネットなど好きなことをやっている。ほしいものがあれば隣にいるパパに、LINEでURLやスクリーンショット送ったりして購入を頼む」

<行動傾向 4>

「限られた情報から即座に判断する」
ミレニアル家族の買物の参考情報源は「WEB」「テレビ」についで「なし」が20.9%も存在。時間がない中、店頭が情報収集の場ともなっている。
「会社帰りにまずお店に行って、そこで掲示されたチラシをみて、売場に行ったりする」
デュアルスクリーンで情報接触しているミレニアル家族に、意外に効果があるのがテレビ。
「テレビで海外ドラマを流しっぱなしにしながら、スマホでショッピングサイトを見て、ほしいものを物色する」

「フレキシ消費」で家族の幸せを実現する

以上のような傾向から、ミレニアル家族の買物の特徴を私たちは「フレキシ消費」と名づけました。
これまでの「無駄がなくコストパフォーマンスを重視したスマートな買物」から「家族みんなの幸せを考えながら、柔軟(フレキシブル)に対応し、楽しむ買物」へと変化している。それが私たちの調査から見えてきた傾向です。

これを先ほどの家事行動の三原則で、買物ではどのように対応しているのか見てみたいと思います。

<行動原則 1>

「かたよらない」=「みんなでショッパー」
夫の買物参加率が高まっており、「買物係=妻」というかたよりが少なくなっています。
ミレニアル家族の夫の買物同行率は45.3%に上ります。
夫婦の意見を合わせておくことで、買物の失敗も少なくなり、夫が一人で買物をすることもできます。
そのような「フレキシブルな買物」を実行しているのが、ミレニアル家族の特徴です。

<行動原則 2>

「頑張りすぎない」=「あらかじめチョイス」
あらゆる可能性の中から頑張って選択しようとするのではなく、評判やテーマなどの基準で絞り込んだ中から選ぶ、つまり、あらかじめチョイスされた選択肢から購入するものを選ぶ傾向が見られます。
それによって、余計なストレスを抱えずに買物を楽しむことができるわけです

<行動原則 3>

「あえて楽しむ」=「買物テイメント」
ミレニアル家族にとって、休日は家族と過ごしたい日でもありますが、ゆっくり買物をしたい日でもあります。
そこで買物を「楽しみ」として休日のイベントの中に取り込み、家族のイベントとしてしまうというのがミレニアル家族の工夫です。
「買わなければならないもの」があっても、そのための買物を「用事」ではなく「行事」にしてしまうのです。

ミレニアル家族にアプローチするための7つのポイント

以上見てきたようなミレニアル家族の行動・意識特性を、最後に「SHOPPING」のそれぞれのアルファベットの頭文字をとった「7つのポイント」としてご紹介したいと思います。
それぞれのポイントから考えられる商品・店頭づくり、サービス、プロモーション例なども合わせてご提案します。

1 「SH」=「Share(共有)」
誰でも買物を主体的にできるような買物リストの家族間共有サービスなど。

2 「O」=「Omit(省略)」
テーマに沿って商品を「編集」した店舗展開やコーナー作りなど。

3 「P」=「Prepare(準備)」
レシピと準備済みの食材をまとめて提案・提供する商品やサービスなど。

4 「P」=「Pleasure(喜び)」
買物のついでに様々な体験ができる商品、プロモーション、店舗づくりなど。

5 「I」=「Impression(直感)」
家族全員で幸せをじかに感じられる場やサービス。ビジュアル的に分かりやすくした店頭展示やプロモーションなど。

6 「N」=「Network(つながり)」
近隣の人々のニーズをつなげ、ものを融通し合うサービスなど。

7 「G」=「Genderless(誰でも)」
買物に不慣れな男性や子供であっても、誰でも商品内容がわかるパッケージづくりや、情報ツールづくりなど。

今後、フレキシ消費が進んでいくと、ターゲット、チャネル、商品などが多様化していくと考えられます。
ターゲットは、「妻」「夫」「子ども」「家族全員」のように細分化されるでしょう。
チャネルは、その多様なターゲットが商品と出会う「場」としてより重要な役割を担うようになるでしょう。
また、商品構成や売り場設計は、買物の過程を通じて楽しみを見出せるようなものにならなければなりません。
「ミレニアル家族の購買行動をヒントにマーケティング戦略を立てたい」「ミレニアル家族に支持される商品開発をしたい」「ミレニアル家族をターゲットとした売場や売り方を考えたい」──。
そんな課題がある場合は、ぜひ私たちにお気軽にご相談ください。

講師プロフィール

※掲載時プロフィールです。

松井 博代(まつい ひろよ)

博報堂買物研究所 ストラテジックプラニングスーパーバイザー

2008年博報堂入社。
マーケティング担当として新商品開発、ブランディングなどに係る。
現在は博報堂買物研究所にて、人を動かす行動デザインを起点とした商品開発やブランディングを推進。
社内プロジェクト「キャリジョ研」を立ち上げ、20~30代の働く女性(=キャリジョ)についても研究中。

亀田 知代子(かめだ ちよこ)

博報堂こそだて家族研究所 上席研究員

外食、アルコール飲料、トイレタリーなどのマーケティング戦略立案や商品開発を担当した後、研究開発局にて、企業や団体の環境・社会コミュニケーションに関する研究や生活者研究などを行っている。
長女の育児休業から復職した2012年より「こそだて家族研究所」に参画。

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