2016年12月7日(水)にConsulactionセミナーが開催されました。
このページでは、当日の講演内容を要約した、セミナーレポートをお届けします。

小売流通業は今、厳しい競争にさらされています。
「どこにでもある」品揃えや売場づくりから脱却するために、小売流通事業者は何をすればいいのか。
小売流通業のバイイングパワーが強まる中で、メーカーはどう棚を確保していけばいいのか──。
このセミナーでは、小売流通業の生き残り戦略を提言するレポート「リテール・フォーキャスト2016」の内容と、メーカーの棚確保戦略を提案するチーム「チームセルイン」の活動を紹介しながら、リテールマーケティングの最新状況が語られました。


博報堂 ショッパー・リテールマーケティング局リテールマーケティング部 山本 哲夫(写真左)
博報堂プロダクツ 店頭プロモーション事業本部 店頭プランニング部 プランニングプロデューサー 堤 明子(写真右)

講演1  4つの視点から読み解く最新リテールマーケティング

1 流通を取り巻く環境変化

■ 進む「オーバーストア化」と「小商圏化」

日本の小売業の市場規模はやや停滞局面にあり、消費マインドは節約志向にあります。周知のとおり、日本の人口はすでに減少局面に入っていますが、小売店舗の数は増え続けています。
いわば「オーバーストア」状態になっているということです。
業態別に見ると、総合スーパーやホームセンターなど、大商圏で広域集客を行ってきた店舗が苦戦していて、コンビニエンスストアやドラッグストアなど、小商圏型の店舗が伸びています。
これは、欧米にも共通して見られる現象です。

オーバーストアが進む環境下で、店舗は「小商圏型」となり、いよいよタフな戦いを迫られている──。
それが現在の小売業を取り巻く状況と言えます。

■ 「業態を超えた競争」を勝ち抜くために

BtoCの通販分野では、品目別に見ていくと、食品、飲料・アルコール等が急成長していることがわかります。
これはリアル流通の主戦場となる領域の品目です。これらの品目でEC化がさらに進めば、リアル流通の脅威がさらに拡大します。

また、小売業は取扱品目を拡大することで成長してきており、例えば、スーパーとドラッグストア、コンビニと外食、リアル流通とECなど、「業態を超えた競争」が加速しているのが実情です。
そのような「業態を超えた競争」を勝ち抜くためには、どのような取り組みを進めていけばいいのでしょうか。
ここでは、4つのポイントを挙げておきたいと思います。

①高付加価値化への対応
高付加価値なPBやオリジナル商品の売り上げが、この数年で顕著に拡大しています。
人口減少時代において、高付加価値化による売上向上は大きな課題であると考えられます。

②地域顧客への細やかな対応
商圏の顧客を徹底的に分析し、地域の声を反映した店づくりを行うことで、画一的な店舗から脱却することができます。
コンビニのような画一性の高い業態であっても、本部主導の全国一律の店づくりから離れ、店長やパート、アルバイトが自由に意見を出して店舗のプロデュースをするといった取組みも出てきています。

③「商品軸」から「ライフスタイル軸」への対応
「商品軸」で品物を整然と並べた棚は、「売り場」というよりも、商品の「置き場」です。
逆に、生活者の嗜好やライフスタイルを軸にした、カテゴリーにとらわれない売場づくりによって、生活者をより引きつけられる「買い場」づくりが必要となるでしょう。

④顧客に寄りそうサービス強化
物販にサービスを組み合わせることによって、「生活者に寄り添う店舗」が実現します。
介護相談、御用聞き、商品試食、買物アドバイス、健康管理、コンシェルジェサービスなど、様々なサービスがありうるでしょう。

従来の広域顧客を想定した最大公約数的な品揃えや売場づくりから、リアル店舗ならではの「買物の価値づくり」をすることが今後は重要になります。
また、小売流通業だけではなく、消費財メーカーにも変化が求められます。
人口が継続的に減少し、国内市場が縮小していく中で、メーカーはいかに棚を確保するかを考えなければなりません。
既に、営業部門と販促・マーケティング部門の組織融合などがいくつかのメーカー企業において進展しつつあります。

2 流通企業の課題意識

■ 顧客視点をいかに売場に生かすか

私たちは、2016年9月から10月にかけて、全国の小売流通業の本部、現場のマネージャークラス以上の299名にインターネットによる意識調査を実施しました。
その結果から、流通企業のマネージャークラスが社会変化の影響を強く実感していること、自社の業態が厳しい競争環境にあると考えていることなどが見えてきました。
競争環境の激化の中にあって、とりわけ重視されているのは、以下のようなことです。

まず、品揃えでは、「安全・安心な商品」「売れ筋、定番商品」に力を入れるなど、「守り」を重視する保守的な傾向があります。

一方、売場づくりにおいては顧客視点を重視する傾向も見られます。
「シーズンや旬の変化に富んだ売場」「顧客視点で買いやすい売場」「スタッフの接客サービスを強化した売場」などです。

販促活動に関しては、「ポイント、クーポン」「チラシ」「POP」など、保守的な従来型の方法を重視する傾向があります。

品揃え、売場づくり、販促プロモーションのいずれにおいても、お客様視点の観点において、「現状満足層」と「危機意識層」に二分されていることもわかりました。

■ データをいかに活用していくか

一方、「顧客理解の重要性を理解しつつも、具体的な取り組みまではできていない」という答えが半数に上ることもわかりました。
小売流通業のデータ利活用はまだまだ途上段階で、マーケティングにおけるデータ利活用度が低いことも今回の調査で明らかになっています。
今後強化したい顧客理解の手法をみると、来店顧客へのヒアリング、店内行動の観察、顧客動線・買物行動調査などですが、定量的なデータによる顧客理解に止まらず、イノベーションのヒントを見つけることができる質的な顧客理解手法が今後必要となる意識がうかがえます。

お客様に提供できている買物体験の中で、とくに多かったのは、「安全・安心な買物」「便利な買物」「お得な買物」などでした。
一方、今後強化すべき買物体験としては、「買物以外の楽しさ」「ストレスのない買物」「生活が豊かになる買物」などが挙げられています。

買物体験の質を向上させることが必要であり、そのためには顧客理解が欠かせない──。そのような意識は、多くの流通事業者に共通しているようです。

3 これからのリテールマーケティングの打ち手のヒント

さて、では今後どのような「打ち手」を具体的に実行していけばいいのでしょうか。4つのモデルケースを見ていくことにしましょう。

【ケース1】
「なぜ、お客さまはその行動をとったのか」
──新たな打ち手は顧客の行動の深い理解から始まる

米国のスーパーマーケットチェーンにおいて、「ストア内でのポジティブな体験は買物の感覚に影響を与えるか」「顧客の気分が向上した時、どんなインパクトが現れるのか」といったことを明らかにするために、入店の際に顧客に花を渡す実験を行われました。

花を渡したグループと、渡さないグループを複数のニューロリサーチの手法を用いて多面的に比較したところ、花を渡すなどの顧客の気分を盛り上げることは買物行動促進につながるということが明らかになりました。

こうした、一見単純な取組みも、勘と経験のみに頼るのでは進めることが難しいため、「顧客の行動心理を理解するリテールアクション」が必要となるといえるでしょう。

【ケース2】
「そのお客さまは、どんな状況にあるのか」
──最適なオファーは顧客の「状況」の理解から始まる

米国のドラッグストアチェーンでは、「購買」だけではなく、「健康活動」に対してもポイントがつく新しい形のポイントプログラムを実行しています。ジョギングや血圧測定といった健康的な活動をするとポイントがもらえる仕組みで、これによって店舗側は、血圧、体重などの「状況」に応じたオファーを行うことが可能になります。
顧客の属性や過去の購買履歴は静的なものですが、それぞれの顧客の状況は動的に変化しています。「お客様の今の状況を理解したリテールアクション」が必要になるというわけです。

【ケース3】
「そのお客さまは、ほかでどんな買物をしているか」
──自社での購買行動を理解するだけでは十分ではない

あるリサーチ&コンサルティング会社では、リアル店舗購買、EC購買、レストラン利用、Uber利用など、顧客のあらゆる購買行動を把握できるレシート購買・EC購買データパネルを持っています。
このデータを通じて、顧客の購買行動の全貌を把握する中から、提案のチャンスを見極めることができるようになるのです。
これは「買物の全貌を理解するリテールアクション」と呼べるでしょう。

【ケース4】
「そのアクションは、売り手、作り手、生活者の三者にとってメリットがあるか」
──小売のイノベーションは、売り手と作り手がともに顧客を理解することから始まる。

ある英国のスーパーチェーンとグローバルCPGメーカーとの間で、2008年にポーランドで共同の売場改革プロジェクトが立ち上げられました。これは、あるスーパーの店舗の売上が伸びているにもかかわらず、そのCPGメーカーの商品の売上が低迷していることを受けたものです。
このプロジェクトによって、インスタントコーヒー、加工食品など複数の商品カテゴリーで売上を伸ばすことに成功しました。
これは「作り手と売り手の強力なパートナーシップに基づくリテールアクション」といえます。

人間は極めて複雑な生き物であり、一部のデータだけを切り取って生活者を理解することは困難です。
幸いにして、テクノロジーの進化によって、多様なデータを集め、様々な角度から生活者を理解することが可能になっています。
いわば「360°顧客理解」を深めることによって、「買物の楽しさ」を創造することができる。
そう私たちは考えています。

4 博報堂のリテールマーケティング

私たちが目指しているのは、作り手、売り手、買い手の3社が「ウィンウィンウィン」になるような「三方よしの三位一体マーケットデザイン」です。
メーカーが持つ開発力、リテールが持つ販売データ、そして博報堂が持つ生活者データなどを組み合わせて「360°顧客理解」を実現し、新たな商品、新たな売り方を開発する。
それが私たちのリテールマーケティングの方法論です。それを実現するソリューションを博報堂では多数取り揃えています。
新しい時代のリテールマーケティングをともにつくっていきましょう。

講演2  メーカーからの流通提案事例とソリューション

■ メーカーの「棚取り課題」に対応するチーム

PBの台頭などによって、メーカーは小売店で十分な棚を確保することが難しくなっています。
棚スペースを獲得するための「セルイン競争」の激化を受けて、メーカーの「棚取り課題」に対応するチームとして、2016年7月に発足したのが「チームセルイン」です。
生活者を深く理解したうえで「流通メリット」を切り口にした施策を提案する。
それがこのチームの方針です。その「流通メリット」は、例えば以下のようなものです。

●集客向上・・・・・・・・・・・・客数を上げ、売上を上げる。
●客単価アップ、買上率アップ・・・購買を後押しし、購入点数を増やす。
●売場演出強化・・・・・・・・・・視認率を上げ、立ち寄り率を上げる。
●顧客の囲い込み・・・・・・・・・再来店を促進し、優良顧客を獲得する。
●売場メンテナンス・・・・・・・・スタッフの工数を削減する。

セルイン提案は、自社課題の解決だけでなく、このような「流通メリット」を明確にした施策であることが必要です。
そして、この「流通メリット」を、メーカーが流通サイドに対する「セールストーク」として用いることによって、より多くの棚を確保できるようになると私たちは考えます。

■ セルインの成功事例

チームセルインは、社内外の約100のセルイン事例を収集、類型化し、セルイン成功のポイントやエッセンスを抽出しました。それを「5つの流通メリット+営業支援」を切り口にした19の施策として分類し、ナレッジ化しています。
それをもとにした2つのケースを紹介したいと思います。

【事例1】体験型イベントが当たる! クローズドキャンペーン

飲料は、競合商品との店頭での差別化が難しく、棚の取り合いも激しいカテゴリーです。
その課題を解決するために、通常の全流通一律のナショナルキャンペーンではなく、各地方のスーパーと個別に商談する流通タイアップキャンペーンを実施しました。
当選者を店舗や周辺施設での「商品体験食育イベント」に招待するというそのキャンペーンによって、店舗側から「お客さまとの関係性強化につながる」として高評価を受け、棚の大幅な増加が実現しました。
また、店舗の売上増にも貢献することができました。
キャンペーン景品を店頭イベントとしたことで、商品のブランディングだけでなく、店舗と顧客との絆づくりに寄与したことが評価されたケースです。

【事例2】ターゲット別訴求ツールで売場強化

家電量販店で「顧客満足度No.1」を謳って販売していた業務用製品がありました。
しかし、店舗スタッフのヒアリングの結果、ターゲット業種は多岐にわたり、用途がそれぞれに異なるため、「No.1訴求」だけでは利用イメージの想起が難しいことがわかりました。
また、店頭ヘルパーにとっても、ターゲットごとに説明内容を変えなければならず、売り手側にも売りづらい店頭であるということがわかりました。
そこで、顧客の声をもとに利用イメージを想起させる業種別ツールを開発。
さらに、限られたスペースで業種別アプローチを実現するためにタブレット組み込みツールを導入しました。
それによって、現場の顧客ニーズを正確に捉えた売場づくりが実現し、店頭ヘルパーにとっても説明がしやすい売場になったことで、セルイン交渉がスムーズにいくようになりました。
顧客のインサイトを把握し、ニーズに応えるツールを開発して売り場を強化しただけでなく、売り手側の負担軽減や売りやすさの向上にも貢献したケースです。

データによる提案サポートとソリューション提供

チームセルインでは、以下に紹介する2つのメニューでセルイン施策提案を支援しています。

1 データによる提案サポート

●セルイン事例&手法バンク
博報堂プロダクツ内のセルイン事例を、流通メリットや手法などで検索するシステムを提供しています。
セルイン提案のヒントを得るためにお使いいただけます。

●店頭データベースとの連動
現在開発中の店頭データベースを使うことで、アプローチしたい流通の情報が抽出可能になります。
バイヤー特性、店舗操作性、個店情報といった項目を押さえることで、独自の提案が可能になります。

2 ソリューション

チームセルインが展開するソリューションには、課題別に以下のようなものがあります。

●棚の確保
指数で売場の「いま」を発信する「LIVEサイネージ」
フェースを確保する3連マルチサイネージ「メンドリ」
スリーブデザインが自由自在な紙製サイネージ「メンドリSlim」
POSレジ連動でターゲティングする「流通レシートクーポン」

●催事・クロスMD売場獲得
オリジナル食育レシピを提供する情報発信型マネキン「フーズキャスター」

●営業支援・個店対策
売れるデータで売場を獲得する「インストア・フィールドネゴシエイター」
フィールドMDで成果をつくる「フィールドPDCAサービス」

●商談支援・その他
折込チラシプランニング&効果検証ソリューション「POSMAP」
“魅せる商談資料”作成サービス「商-Show-データ」
52週MDテーマ開発「URT52」
おすすめ流通キャンペーン開発「催キャン」
流通タイアップCPカレンダー作成「知りタイアップ」

●流通タイアップ
店舗とのタイアップツール <Katta!>

メーカーが目指すセルインを実現するには、全国一斉のナショナルキャンペーンや本部との一括商談だけではなく、流通個別、さらには店舗個別の対応が必要になります。
チームセルインは、そのようなセルイン施策を今後も力強くサポートしてまいります。

講師プロフィール

※掲載時プロフィールです。

山本 哲夫(やまもと てつお)

博報堂ショッパー・リテールマーケティング局リテールマーケティング部

1995年博報堂入社。一貫して企業のマーケティング業務に従事。コンビニ、飲料・食品、電機メーカー、自動車、住宅・不動産、保険・金融機関など、幅広い業種の企業におけるトータル・マーケティング活動に関与。

堤 明子(つつみ あきこ)

博報堂プロダクツ店頭プロモーション事業本部 店頭プランニング部
プランニングプロデューサー

2007年~、博報堂プロダクツでプロモーションプランナーとして販促プロモーション企画全般を手掛ける。
2012~13年、大手総合食品卸に出向。中間流通の現場で、小売業本部に対する売場提案や52週MD販促企画に携わる。
2014年より店頭プロモーション事業本部配属。流通知見を活かした店頭プロモーション提案を数多く手がける。
その後、プランニングプロデューサーとしてメーカーのフィールド業務にも携わり、メーカー視点の売場販促計画や、店頭商談資料の作成、現場ディレクション、POSなどによる効果検証など、さまざまな店頭業務を手掛ける。
2016年7月より、メーカーの流通に対するセルイン課題に応える社内プロジェクト「チームセルイン」参加。


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